収容所の音楽家
今年は戦後75年だそうで、テレビでも戦争特集ー日本だけでなくヨーロッパの方も特集していた。ヨーロッパと言えばホロコーストに行きつくと思います。前から気になっていた本をステイホーム中に読破。昔、五木寛之さんの「大河の一滴」でも推されていたのを思い出しました。作者は実際アウシュビッツの収容所から生還した二人のユダヤ人です。よく映画で見た記憶があるのですが、押し込まれた電車から降ろされて、身ぐるみ剥がされて、女子供老人などはそのままガス室行き、成人男子でも振り分けが行われました。このとき、医者、エンジニア、職人さんなど、特殊技術を持つ人は強制労働をある程度免れたそうです。それはわかるような気がしますが、何と楽器演奏者というか音楽家もそうだったのだ。彼らは音楽隊を組織し、強制労働へ向かう時、または終わって帰るときに演奏し、時にはドイツ将校の誕生日などの宴でも演奏したそうだ。この本でも書いてあったが、ドイツ人は恐ろしく音楽が好きでのめり込むように音楽に耽溺していたそうです。何の罪のないユダヤ人にとても人間的とは言えない仕打ちを施していた目と鼻の先で音楽が常に流れていたそうだ。今回のコロナ禍で、残念なことに音楽家は不要不急の対象とされたようですが、この本を読んでいると、本当に断崖絶壁に追い込まれた時の救いとして音楽は存在するのですよね。ホロコーストを描いた「夜と霧」、映画「戦場のピアニスト」「シンドラーのリスト」等、名作は多くありますが、この本は非常にリアルな日常が描かれている気がします。収容所で生き抜くには1.えらい人におべっかを使うこと。2.仲間を密告する。3、強制労働は適度に手を抜く事。他、収容所に送り込まれた人々の衣類、嗜好品、時計、宝石などで闇市のようなものが形成され、それで細々と私腹を肥やす必要性も書かれていました。あーあ、これが現実なのでしょうね。今、世界は色々な意味で緊張を強いられている気がします。やはり第2次世界大戦のような過ちを避けるための市民としてできることは何かーなんてことも考えてしまいましたね。