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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2005/04/30
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 日記のタイトルに「酒とピアノと…」と銘打ちながら、方言や「サイバラ」の話ばかり書いていると、そのうちお叱りを受けそうそうなので、久しぶりにお酒の話に戻ろう。

 ボウモア(BOWMORE)と言えば、スコッチモルト・ウイスキーのなかでも、ベスト5に入るであろう人気銘柄。僕も、大好きなモルトの一つ(写真左上=オフィシャルのボウモアでも僕が一番好きなのは、シェリー樽熟成の「Darkest」。)。その蒸留所は、スコットランド本土ではなく、西方に浮かぶアイラ(アイレイともいう=Islay)島にある。Bowmore

 アイラ島には現在、7カ所の蒸留所(ボウモア、ラガヴーリン、アードベッグ、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディック)から、モルト・ウイスキーが出荷されているが、その特徴は、俗に「スモーキー」とか「ピート香」とか「潮の香り」などと形容されている。

 1779年創業のボウモアは、アイラ・モルトのなかでは、アイラの特徴を最もよく体現し、そして最もバランスのいいモルトだという定評がある。だから、アイラへ入門編としては一番お勧めのモルトかも(同じアイラでも、ラフロイグから始めると、その消毒薬のような強烈な香りが故に、その後、モルト全体を嫌いなってしまうこともあるから)。

 そのバランスの良さとともに、ボウモアにはもう一つ、「柑橘系(とくにオレンジ)やパッション・フルーツのような独特の香り」という素晴らしい特徴がある。ボウモアからは、なぜそんな香りが生まれるのか。

 「海岸のすぐそばの、海水面よりも低い場所(倉庫)で保管しているから」という説も聞いたことがあるが、海水面より低いという環境と柑橘系の香りの因果関係について、説得力のある説明はまだ聞いたことはない。

 「アイラ大使」の称号を持つ、あるバーテンダーにも尋ねてみたが、「う~ん、まだ謎の部分が多いんですよね」と言う。高級品を生むモルトの樽ほど海水面より低い場所に置かれている(「1番倉庫」という呼び名で有名)らしいが、実際、すべての樽が同じ場所(条件)で熟成される訳でもない(写真右は、69年蒸留のボウモア32年熟成もの=ダンカン・テーラー社の「ピアレス・コレクション」から)。Bowmore bottled in 60s

 もっとも、いつの時代のボウモアでも同じ香りがするのかと言えば、そうではない。70年以前に生産されたものに、著しくその特徴が出ていて、モルト好きには垂涎の的。しかしもともと、モルト・ウイスキーがそう注目されていない時代でもあり、当時の生産能力の限界から出荷本数も少なく、今では手に入れるのはとても難しい。

 ボウモアはその後、モルト・ウイスキーへの需要が増えたおかげで、70~80年代にかけて生産設備の拡大と近代化(オートメーション化)を押し進めた。この結果、従来の手作り的な作業も機械化される部分が多くなった。

 そして当時、蒸留所内に設置された省エネ設備のコンデンサー(冷却装置)に由来する化粧品くさい、「パフューム香」が「70年代後半~80年代のボウモアの特徴」という不名誉なレッテルが張られてしまった。そして、従来のボウモア・ファンは離れてしまい、ボウモア自体の評価も大きく下がってしまう。

 「パフューム香」の原因について、後に、ボウモア蒸留所のオーナーとなる日本のS社のブレンダーが、「ウイスキー・ボイス」という雑誌(04年2月の第17号)で次のような解説をしている(写真左下は、オフィシャル12年の旧ボトル。昔懐かしいボウモアの味と香りが凝縮されている)。Bowmore 12yrs Old Bottle

 「チンチンに熱した鍋にウイスキーを垂らすとどうなるか。ジュっと音を立てて蒸発します。その時かすかにパフュームライクな香りがします。それと同じで、熱効率を上げるための省エネを優先するあまり、コンデンサーの一部が乾いた状態になっていました。その表面に気化した液体の蒸気が触れて、一種の焼け焦げのような状態になって、パフューム香が生まれたのです」。

 S社はボウモアに1988年から資本参加を始めた。そして現状に危機感を抱き、省エネ装置を取り払い、従来の冷却工程に戻すよう、現地のスタッフを根気よく説得した。自家精麦にこだわり、発酵時間や樽の材質などにも目を光らせ続けた。

 そして再び旧来の方法で、丁寧につくられ始めたボウモアからは、パフューム香が消え、再び柑橘系の素晴らしい香りがよみがえり始めているという。数年前から登場したオフィシャルの8年物などは、コストパフォーマンスを考えると素晴らしいボウモアに仕上がっていると思う。

 その後、S社は94年、ボウモアを買収して100%のオーナーになった。同社の営業マンは「12年物のモルトでも、03年以降から出荷されているオフィシャルのものは、相当に改善されてきています。将来は、確実にもっといいものになっていきますよ」と自信たっぷりにコメントをしているので、期待していいのかもしれない。

 僕はできれば、昔の味や香りがよみがえった17年物か、25年物くらいのボウモアを飲んでみたいが、そうなると、常識的に考えて、少なくとも2010年以降の話か。もうしばらくは、8年物や12年物で辛抱することにしよう。





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Last updated  2005/04/30 08:27:46 PM
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うらんかんろ

うらんかんろ

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