テーマ:ミステリはお好き?(1430)
カテゴリ:アート&ブックス
「最近はまっている作家」の2回目。しばらく間が空きましたが、佐々木譲(ささき・じょう)について記します。佐々木譲は警察小説と歴史ミステリー小説、冒険小説などを得意としてるが、うらんかんろがもっぱら読むのは警察小説と歴史ミステリーです。
ということで、最近読んだ佐々木譲の作品について、ひとことコメントとともに、独断での評価を★の数(★5つで満点)で紹介いたします(必ずしも最近の作品じゃないのも含まれていますが、ご容赦を…)。…)。※本の表紙画像は基本的にAmazon上のものを引用しています。Amazon.Japanに感謝します。 「笑う警官」 ★4つ半 ※2004年の作品。映画化されたのでご存じの方も多いと思う。舞台は北海道警。札幌市内で女性巡査の遺体が発見される。容疑者は同じ道警に勤務する津久井巡査部長だったが、かつて一緒に事件を捜査した佐伯警部補は、津久井の潔白を証明するために立ち上がる。最後までテンポがよくて飽きさせない傑作ミステリー。 「警察庁から来た男」 ★5つ ※「笑う警官」に続く道警シリーズの第二弾。北海道警に警察庁の特別監察が入った。その狙いは何か? 一方、札幌のホテルの部屋荒らしを捜査していた大通署の佐伯刑事は、被害者がすすきの路上で謎の死を遂げた男性の父親であることを知り、男性の死因にも疑問を持ち始める。構成がよく出来た作品で、僕は1作目より好きだ。 「警官の紋章」 ★4つ ※道警シリーズの第三弾。洞爺湖サミットのための特別警備結団式を一週間後に控えていた北海道警で、勤務中の警官が拳銃を持ったまま失踪する。津久井刑事は、その警官の追跡を命じられる。一方、佐伯刑事は覚醒剤密輸入に絡む過去のおとり捜査に疑惑を抱き、一人で捜査を続ける。そしてもう1人の主人公、小島百合は結団式に出席する大臣の担当SPを命じられ、警備結団式典の会場へ向かう。前の2作に比べると、若干の荒唐無稽感はぬぐえない設定だが、読み出したら止まらない展開はさすが。 「制服捜査」 ★4つ半 ※主人公は道警不祥事を受けた大異動により、志茂別駐在所に単身赴任してきた警官・川久保篤。管轄する十勝平野は静かで、のどかな農村。しかし、表向き平和に見える町には荒廃も見え隠れする。いくつかの事件に関わる中で、13年前の夏に起こった少女失踪事件の真相が浮かび上がってくる--。新たな切り口で、警察小説の魅力を切り開いた連作集。 「ユニット」 ★5つ ※2005年発表の作品。17歳の少年に妻子を凌辱され殺された真鍋。一方、警察官である夫のDV(家庭内暴力)から逃れようと、我が子と共に家を飛び出した祐子。やがて、2人はたまたま同じ職場で出会う。そしてある日、真鍋は少年の出所を知り、復讐を決意する。その頃、祐子の周辺には夫の執拗な追跡の手が迫っていた。少年犯罪と復讐権、さらに家族のあり方などを問う傑作長編。手に汗握る展開で飽きさせない。 「夜にその名を呼べば」 ★5つ ※1986年10月、ベルリン。欧亜交易の現地駐在員、神崎は何者かに襲撃された。現場には、会うはずだった相手の射殺体が…。日本では親会社による共産圏への不正輸出が発覚、会社の上層部は神埼に殺人の濡れ衣を着せ、抹殺しようと図ったのだ。神崎はベルリンの壁を越えて東ドイツ側へと亡命、そのまま消息を絶った。それから5年、事件の関係者に謎の手紙が届けられ、神崎を追う公安警察もその情報をつかんだ。そして、全員が雨の小樽港へと招き寄せられ、復讐劇が始まった。意表を突く最後の結末が見事。してやられたと唸った(2008年発表の作品)。 「夜を急ぐ者よ」 ★3つ ※1986年発表の初期の作品。非合法組織に追われる原口泰三は、嵐が接近する沖縄・那覇港に降り立ち、追手から逃れるために市内のホテルに投宿する。偶然にも、そのホテルの経営責任者・東恩納順子は、かつて泰三と愛し合う仲だった。別れた後交わることのなかった二人の人生が、緊迫した事態のなかで再び交錯する。 ハードボイルド・サスペンスの名手・佐々木譲の出世作とも言われるが、点数が低いのはエンディングの安易さが理由。佐々木譲もまだ若かったということか(途中までは良かったのになぁ…)。 「仮借なき明日」 ★3つ半 ※大手農機メーカーに勤務する原田亮平は、フィリピンへの出張を命じられる。同国サンビセンテの現地工場で不良品発生が多発、実情を確かめよと命じられた。原田を待っていたのは、総責任者に支配された工場と、現地のやくざとの癒着し、汚職警官の専横を許すような壊滅的な状況だった。原田は、悪人たちを追いつめるために策を練る。ハードボイルド・サスペンス長編の佳作。 「ベルリン飛行指令」 ★5つ ※第二次世界大戦秘話シリーズ3部作の第1作。1940年秋、同盟国ドイツが入手した日本の最新鋭戦闘機の性能データは、まさに驚愕に価した。ほどなく日本軍の優秀なパイロット2人に極秘指令が下る。「ゼロ戦を操縦し、ドイツまで届けよ」。日米関係が風雲急を告げる中、ゼロ戦の飛行阻止を狙う英国の情報網をかいくぐって、2機は果たして目的地のベルリンまでたどり着けるのか。文句なしの傑作歴史ミステリー(1988年発表の作品)。 「エトロフ発緊急電」 ★5つ ※第二次大戦秘話シリーズ第2弾。1941年の晩秋。北海道北方にある小島、択捉(エトロフ)島の湾内に、日本海軍の艦隊が数多く極秘裡に集結していた。湾を見通せる島の丘からは、日系人のケニー・サイトウが双眼鏡で艦隊を凝視していた。スペイン戦争で義勇兵として戦った後、「殺し屋」となった経歴も持つサイトウは、今は米国のスパイとして働き、日本艦隊の動静を米国へ暗号で知らせていた。 やがてサイトウの動きは日本の官憲の知るところとなり、身に危険が迫る。真珠湾攻撃前夜の北海の小島で繰り広げられる激烈な諜報戦。果たして、ルーズベルト米大統領は、日本海軍機動部隊による奇襲計画の情報を事前に入手できていたのか!? 手に汗握る歴史冒険ミステリーの傑作(日本推理作家協会賞と山本周五郎賞の受賞作)。 「ストックホルムの密使」 ★4つ半 ※第二次大戦秘話シリーズの第3作(完結作)。大戦末期。イタリアは降伏し、独ベルリンも陥落。孤立無援となった日本では、米軍による本土空襲が激化し、戦局は絶望の一途をたどる。 日本政府がソ連仲介の終戦工作を模索するなか、スウェーデンに駐在する海軍武官・大和田市郎は、瀕死の日本にとどめを刺す連合国側の極秘情報(原子爆弾の開発成功)を入手した。大和田は「原爆が実戦で使用される前に終戦に導かなければならない」と、その情報を早急に日本政府や軍上層部に伝えようと、ストックホルムから日本へ向けて2人の密使を送る--。 前作の2作は佐々木氏の創作部分も多いが、この秘話はほぼ史実に沿っている。それ故、迫真性たっぷりの歴史ミステリーに仕上がっている。これを読めば、一般国民の犠牲など頭にない愚かな国の指導者のせいで2発の原爆が落とされ、泥沼の敗戦を迎えざるを得なかったことがよくわかる。 「くろふね」 ★2つ半 ※1853年(嘉永6年)6月、ペリー提督率いる4隻の艦隊が浦賀に来航、幕府に開国を迫った。浦賀奉行の代役としてペリーらとの交渉にあたったのは与力の中島三郎助。日本人として初めて黒船に乗り込んだ三郎助は、西洋人とその新しい技術に触れ、日本を外国に負けない近代国家に導こうと決心するが--。 歴史大作だが、全体に盛り上がりに欠け、若干ありきたりな結末も残念。ただし、当時の開国交渉の実態や裏側が、当時の資料に基づいて詳しく描かれており、小説ではなく、歴史書として読めばそれなりに面白いと思う。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012/09/29 12:07:49 AM
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