映画: 敬愛なるベートーヴェン(2006年イギリス/ハンガリー)
「Deaf and the Maiden(難聴者と乙女)」 「コピーイング・ベートーヴェン(邦題:敬愛なるベートーヴェン)」を観てきました。日本でも公開が始まったようですが、こちらでは結局全米ロードショーには至らず、ニューヨークのミニシアターで細々と上映が続いています。そろそろ打ち切りになりそう。 結論としては、よっぽどのベトヲタか、全くのクラシック初心者の両極端の客層からは評価されそうな作品という印象です。 もちろん「それなりのベートーベン好き」でも楽しめます。僕は、バックに流れる音楽の「イントロ当てクイズ」を楽しみながら鑑賞しました(笑)。選曲は凝ってると思う。 ネタをばらすわけにはまいりませんが、予想とは異なり、「第九」で盛り上がる感動の場面は映画のラストではありません。第九は映画の中盤で既に登場し、後半は弦楽四重奏にまつわる内容。そのへんも通好みの構成でしょうか。 ベートーベンの作品を写譜、清書することになった若い女性(作曲家の卵)の話。 原題は Copying Beethoven。彼女は、譜面を書き写す(コピー)ことには秀でていても、作曲家としては半人前であり、結局はベートーベンの真似(コピー)をしてるだけ、という台詞がありました。 厳しい世界です。我々は、二世紀前の芸術家たちが残してくださった多くの作品のおかげで精神的に満たされる日々を過ごせるわけですから、幸せな時代に生まれたと言えます。(今さらですが。) 余計だと思う場面もありましたし、ベートーベンの奇行ぶりをどこまで描くかは好き嫌いが分かれると思いますが、ベートーベンが溺愛した甥のカールに関わるエピソードは興味深く観ました。 あと、この映画になんと大公さんが登場してました(写真左の赤い服)。つい一昨日、ピアノ三重奏曲「大公」を弾いたばかりでしたので、特に印象に残りました。イメージとしてはローマ教皇。周りのみんながペコペコと媚びる場面もあり、当時の芸術家たちはこぞって大公からの高い評価を得ようとしたようです。 細かいことを突っ込もうとすればいくらでも突っ込める映画です。でも、見事にベト氏に変身した主演のエド・ハリスとか、当時のウィーンを再現したスタッフの労苦を考慮し、それに年の瀬も押し詰っていることだし、素直に娯楽作品として楽しませてもらいました。追記: 「敬愛」という言葉は形容動詞としては使えないはず。「親愛なる」は文法的に可だと思うけど、敬愛は「する」もの。「私の敬愛するベートーベン」