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カテゴリ:サンチャゴ巡礼2004
■第3日 ラバナル~ポンフェラーダ 32km 9月29日
一夜明けると体調は元に戻っていた。 ラバナルの宿は朝食つきなのがうれしい。 早く起きた順にパンとカフェコンレチェの簡単な朝食をすませる。 「グラシアス」 遠慮がちにお礼をいうと、ホスピタレーロのおばさんがいう。 「サンキューは日本語でなんというの?」 「ありがとう、です」 「アリガト!」 こうして毎日毎日、やってくる巡礼者の世話をしているに違いない。 ホスピタレーロの献身ぶりには頭が下がる。 7時出発。 まだ真っ暗な時間帯だ。 この時期、朝日が上るのは8時20分ごろ。 とくに朝は道を見つけにくい。 そのためだれかが出発するのを待って、すぐそのあとを追うようにしている。 道はフォンセバドンの峠に向かってゆるゆると上る。 途中で日本人のような顔をした若者に追い抜かれた。 峠で休んでいた彼に「こんにちは!」と声をかける。 村上くんといった。 今回、初めて出会う日本人巡礼者だ。 彼とはこのあとあちこちで顔を合わせる。 サンチャゴ到着も同じ日になった。 峠を越えると道は下り坂。 下りのほうが楽かというと必ずしもそうではない。 きつい下りはひざに負担がかかり、上りよりむしろ苦労することがある アンブローズという村に着いた。 何時かな?と腕時計を探す。 Tシャツになったとき外した腕時計が見当たらない。 あれ? どこ? 忘れた? 落とした? 探し始めて1分もたたないうちに後ろからアジア人の若者が追いついた。 「この時計、あなたのですか?」 彼が差し出したのは、まさにいまわたしが探している腕時計ではないか! きっと前の村のバルで休んだとき置き忘れたのだろう。 それを彼が持ってきてくれたのだ。 「サンキュー!」 「ノープロブレム」 顔つきは日本人とまったく変わらないが、彼は英語を話していた。 オーストラリア人だという。 彼ともその後よく顔を合わせた。 最後はサンチャゴの大聖堂前で出くわした。 2人で「おお!」を顔を見合わせ、「着いたね!」と手を握り合った。 名前は聞いていない。 だが会うたびに会釈をかわした彼の表情はまぶたに焼きついている。 名前も国籍も知らない、だけど会えば笑顔であいさつをかわす。 巡礼中にそんな知り合いがたくさんできた。 彼らとこの世で出会うことは二度とないだろう。 そう思うと少し切なくなる。 15時過ぎ、ポンフェラーダに到着。 大きな町で、巡礼宿も大きく近代的だった。 ここで村上くんと再会、同じ部屋になる。 夕食は2人で食べに行った。 ひとりで歩いていてもさびしさはあまり感じない。 しかし食事だけは何人かでしたほうが楽しい。 同じ日本人であっても、日本にいたら村上くんと知り合う縁はなかっただろう。 年齢・職業・出身地に関係なく人と知り合えるのは旅ならではの楽しみだ。 しかもサンチャゴをめざすという目的は共通している。 日本を出て初めてぐっすり眠れた夜だった。 ▲ポンフェラーダの城壁跡。 『星の巡礼』でパウロが参加したあやしげな儀式は この城壁内で開かれたことになっています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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