岩波ホール総支配人の高野悦子氏が亡くなられたという(9日)。享年83。
映画ファンにとっては、いや日本における外国映画上映史にとっても、かけがえのない方だった。高野氏なくしては、インドのサタジット・レイ監督の『大地の詩』も、ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の『大理石の男』も、それにヴィスコンティ監督の『ルートヴィッヒ 神々の黄昏』もギリシャのテオ・アンゲロプロス監督の『旅芸人の記録』も、おそらく日本では上映されることはなかったであろう。私はこれらの作品を、えんえんとつづく長い行列に辛抱強く並んで観たのを思い出す。
岩波ホールで上演されたギリシャ悲劇、鈴木忠志演出、白石加代子・観世寿夫主演『トロイアの女』(1974)は、観世寿夫氏が主宰の「冥の会」の舞台だが、現代能楽界の鬼才といわれた観世寿夫氏の、能楽以外ではこれが最後の舞台ではなかっただろうか。観世氏はこの演技により芸術祭優秀賞を受賞。亡くなったのは1978年。私の耳に、いまだにその朗々とした声とエロキューションが聴こえてくる。・・・この『トロイアの女』の上演も高野悦子氏プロデュースの岩波ホールの大きな成果であろう。
ためいきをつくような思いで、高野悦子氏の御逝去を悼みます。
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Last updated
Feb 15, 2013 12:10:57 AM
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