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テーマ:暮らしを楽しむ(385314)
カテゴリ:今日もいい日だ
今日、東京は京王線「高幡不動」駅前にある洋菓子の名店、パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウに勤めている、あるお菓子職人さんからお便りをもらいました。
実は、その職人さんというのは私の教え子なんです。と言っても、ゼミ生とか、そういうのでもないんですが・・・。 私と彼女(Nさん)は、ちょっと面白い形で出会ったんです。今からもう7、8年ほど前のことですが、当時大学3年生だったNさんはお菓子職人の道を目指して大学を中途退学しようとしていたんですね。それで大学をやめることについて、担任の先生と相談をしていた。 で、そこへたまたま通りかかった私は、Nさんの話を傍で聞いていて、せっかく大学3年まで通ったのに、ここでやめてしまうのは惜しい、と思ったんです。で、担任の先生そっちのけで彼女とかなり激しい話し合いをし、口を酸っぱくして後1年我慢しなさい、大学の学位をとってからお菓子職人の道に進んでも決して遅くないんだから、というふうに説得したわけ。 ところがNさんもNさんで頑固なところがあって、なかなか自説を曲げないんです。曰く、中卒や高卒でお菓子の道に入って、立派な職人になった人も沢山いる。大学の学位なんかより、一刻も早く自分がやりたいことをやりたい、と。なぜ、それを邪魔するのか、と。まあ、そう言うわけです。一方、私は私で、お菓子の修行にはいつでも入れるけど、大学を卒業するのは今しか出来ない。やりかけたことを途中で投げ出すのは良くないし、大学に在籍していたってお菓子に係わることは出来るではないか。例えば西欧におけるお菓子の歴史、なんてことを卒論のテーマにして、そういう知的なバックグラウンドを持った職人になればいいではないか・・、と、そう説得したわけ。 私とNさんの激しい押し問答は1時間以上も続いたでしょうか。でも、Nさんの決意は固く、私にはとうとう説得できませんでした。かくしてNさんは大学を中途退学してお菓子の修行に入ったんですね。 さて、それから1年と少し経って、Nさんと同期の学生たちが卒業式を迎える日が来ました。そしてその日、当時長野県で修行をしていたNさんはわざわざ名古屋まで出てきて、友人たちの晴れの日のお祝いに駆けつけれくれたんです。そして、私のところにもやってきて、「あの時、先生が言ってくれたことは、後になってよく分かった。今日、友人たちの晴れ姿を見ていて、本当に羨ましい。もし先生の言った通り、後1年我慢していれば、今、私もこの場できれいな着物を着て、皆と一緒に卒業のお祝いを出来たのにと思うと、とても残念です」と、そう言ったんですね。そこには、皆より先に社会へ出て厳しい修行をし、その分、頑さも気負いもとれて、素直に自分を見つめることが出来るようになったNさんがいました。私はその時、Nさんは素晴らしいな、と思ったんです。ですから、「いや、あなたは今、立派に自分の道を歩んでいるのだから、後悔することはない。自分の選んだ道を信じて頑張りなさい」と心からのエールを送ったのでした。 その後、Nさんは長野での修行を終え、先程言った東京・高幡不動にある名店で修行することになったのですが、この高幡不動というのは、私の実家からさほど遠くなく、しかもこのお不動さんは私の守り本尊なんです。そこで、前に実家に帰った時、ふらりとパティスリー・ドゥ・シェフ・フジウに立ち寄ったら、いました、いました! Nさんが頑張って働いているではないですか! 彼女も何の前触れもなく突然私が店に現れたので、相当驚いたようですが、とても喜んでくれ、私も彼女が作ったお菓子をいくつか買いましたが、とてもおいしかった。 そして今日、彼女から受け取った手紙には、今度9月の22日から27日まで、名古屋駅前のJR高島屋のパティスリー展に、彼女の勤めているお店が出店するということが記してありました。で、久々に名古屋を訪れるので、良かったらぜひ見に来て下さいとのこと。これはもう、ぜひとも行ってあげなければなりますまい! 大学をやめる、やめるなで、それこそ互いに口角泡を飛ばして話し合いをしたNさんと、今もこうして「おかしな」縁でつながっていることを思うと、あの時、私なりに精一杯、彼女を大学に引き止めようとして良かったな、と思います。こちらが真剣に、誠意をもって向かい合ったからこそ、それが彼女に通じたんでしょうからね。あの時、「あ、そう、やめるの。じゃ、さよなら」と言っていたら、多分、それで縁は切れたはず。人間たるもの、時には真剣にならなければならないことがありますな。私なぞ、時々それをせずに失敗することも多いのですが。 とにかく、元気にお菓子職人の道を歩んでいるNさんから嬉しいお便りをもらって、いい気分のワタクシなのでした。今日も、いい日だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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