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テーマ:暮らしを楽しむ(387956)
カテゴリ:今日もいい日だ
今日は今年度最後の教授会でした。 さて、我が大学では、年度最後の教授会において、定年退職される教授の皆さんの紹介と、その教授連からの挨拶があります。で、この「最後の挨拶」というのがまた、その人の個性がよく表れるものでして・・・。 例えばこれを最後とばかり延々と下らない自慢話をされる方もいれば、大学への恨みつらみを述べ立てる方もいる。名残惜しそうにしている人もいれば、辞めて清々した、という感じの人もいる。 10年くらい前までは、「この大学に赴任して早々、伊勢湾台風があって大変でした・・・」なんて昔話をされる方がいらっしゃいましたが、最近ではそういう方もいなくなりましたね。 ところで、私がこの大学に赴任して以来、お一人だけ、ものすごく感銘深い「引退スピーチ」をされた方がいらっしゃいました。それは、やはりもう10年くらい前のことになるのですが、変わり者で知られた、ある美術の先生のスピーチだったのですが。 この先生、外見から言うと長身・痩躯、針金色の銀髪を肩まで垂らしていて、いかにも芸術家っぽい感じなんです。が、それよりも何よりも、この先生のトレードマークは「真っ白な上下のスーツ」。噂によると、先生はこの白いスーツを何着も持っていらして、それを取っかえ引っかえお召しになっているということでしたけど、ダンディーな先生だけあって、これがまたよく似合ってたんです。 で、その先生が定年退官される時のスピーチがまた、短かったけれど非常に面白かった。先生はその時、次のような趣旨のことをおっしゃったんです。 私はこの大学に勤め始めた時、このキャンパスのどこかに「幸福の木」があるという気がして、それで30年以上に亙ってずっと探し続けてきた。あれかな、と思うこともあったが、どうも違うような気がする。これかな、と思う時もあったが、どうもそうではないらしい。と、そんなこんなで探しあぐね、もう半ばあきらめかけた時、ついにこれが「幸福の木」だ、というのを見つけた。それは見かけはごく平凡な木で、皆さんも多分、日頃目にされていることと思う。しかし、皆さんはまだそれが「幸福の木」であることに気づいていないようだ。何なら教えてあげてもいいが、それでは木の価値が無くなってしまう。だから、皆さんもそれぞれ、ご自分の力でお探しなさい。でも、神かけて言うが、それは確かにこのキャンパス内にある・・・。 ・・・と、たったこれだけ。 しかし、この話をぼそぼそっとされた時のその先生の顔つき、声など、今だに鮮明に覚えているほど、私にはインパクトがありました。定年退職される先生方のスピーチが、年々低俗で面白味のないものになっていく傾向がある中で、あの白いスーツの老アーティストの去り際の一言は、私の中では、今だにベストスピーチとして、強く印象に残っています。私なんぞあれ以来、「ひょっとしてこれか? これが例の木か?」なんて探し続けているくらいですから。・・・実は一本、怪しい奴があるんですよ。どれかは教えてあげませんけどね。 私が定年になるのはまだ20年近く先のことですが、いずれその時が来たら、私にもあんなインパクトのあるスピーチができるでしょうか・・・。毎年この季節になると、ついそんなことを考えてしまう私なのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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