|
カテゴリ:今日もいい日だ
今日のこと、というより、昨夜のことなんですが、偶然、NHKの衛星放送で「お母さんに会いたい」というドキュメンタリーの再放送をやっているのを見つけ、思わず見てしまいました。 この番組、もともとは2004年の11月に放送されたものなのですが、反響が大きかったらしく、これまでに何度か再放送されているんです。で、私も以前、再放送になっていたのを途中から見て非常に感動したもので、昨夜、番組の最初から見るチャンスに恵まれたのをいいことに、もう一度通して見てしまったというわけ。 このドキュメンタリー、フィリピンに住む少年ノラルディンと、その妹のマリマルの話なんです。ノラルディンが10歳くらい、マリマルが8歳くらいでしょうか。 で、彼らの一家は子沢山なんですが、とても貧しく、しかも父親が肺病で働けないため、兄弟中で一番上のノラルディンとマリマルを親戚の家に預け、ノラルディンが観光客に手提げ袋を売る、その売り上げを送金してもらって、ようやく暮らしているんです。つまり一家の生計が、ほんの10歳くらいの幼い少年の双肩にかかっているわけ。 しかもノラルディンとマリマルは、ただで親戚の家に預けられているわけではないんです。親戚も貧しいので、置いてもらうためには下宿代を支払い、さらに家の仕事を手伝うことが条件なんですな。ですから、ノラルディン少年は、まず朝一番に水汲みなどをして一働きした後、市場へ行って観光客に袋を売り、その売り上げから自分と妹の分の下宿代を払い、月々1000ペソほど実家に送金し、しかも妹のマリマルが小学校へ通うための学費も稼いでいるんです。10歳の少年がですよ。そんなふうですから、自分は学校へ通うのは断念せざるを得なかった・・・。もちろん兄だけでなく、8歳のマリマルだって、掃除から洗濯から食事を作るのまで全部やるんです。 だけど、この幼い兄妹の艱難辛苦はそれだけじゃないんですね。彼らはイスラム教徒なんですけど、親戚の家の周辺はキリスト教徒が多い。ですから市場で袋を売っていても、キリスト教徒から苛められるんです。悪口を言われたり、ものを投げられたり、殴られたり、稼いだお金を巻き上げられたり。小学校に通っているマリマルだって、毎日同級生から「テロリスト」呼ばわりされて苛められるんです。ノラルディンは、キリスト教徒たちから妹が苛められる度に、妹を守りに行かなくてはならない。 そんな生活が何年も続くのですが、ある時、実家の母親が病気で入院したと聞き、ノラルディン・マリマルの兄妹は、今まで以上に頑張って袋を売ってお金を貯め、母親に会いに行こうとするわけ。ノラルディンだけでなく、マリマルまで袋を売って1ヶ月以上かけて、ようやく実家に帰るだけのお金を貯めるんです。何年かぶりにお母さんに会えるとなって、実家へ向かう船に乗る二人の笑顔たるや・・・。ほんとに喜びに輝くような笑顔なんです。 そして何年かぶり母親に会えた時の、二人の様子! マリマルはもちろん、しっかりもののノラルディンさえも10歳の少年に戻って、涙にくれて・・・。もう涙なしには直視できない。 ところが、ノラルディンとマリマルが幸福になれたのも束の間のこと。母親の入院にかかった費用が、この一家に重くのしかかるんですな。身体の弱い父親も、稼ぎの少ない叔父も、誰も助けられない。このままでは警察に突き出されることになってしまいそうなんです。 で、家族会議が開かれ、結局ノラルディンとマリマルをもう一度親戚の家に返し、今まで通り、送金してもらうしかない、と決まるんですな・・・。母親に会ってすっかり子供になってしまったノラルディンもマリマルも、もちろん泣いて嫌がるわけですが、それでも兄のノラルディンは子供心に「自分が行くしかない」と思ったのでしょう。かくして何年かぶりで母親に再会してからわずか8日の後、二人は再び親戚のところに旅立つんです。泣き叫ぶ妹をなだめながら、自分の涙は隠して「泣くな。行くぞ」と引っ張っていくノラルディンの健気さ! その数日後、また市場でノラルディンが袋を売っているシーンでドキュメンタリーは終わります。 前回、途中から見た時ですら涙なしには見られませんでしたけど、今回、はじめから見て、もうボロボロですわ。こんないたいけな小さな子供が、貧しさゆえに母親から引き離され、宗教上のことで苛められたりしながら、どうしてこんな苦難の道を歩かなければならないのか・・・。しかも、そんな苦難の中にいて、どうしてあんなに明るく、純粋で、健気な精神を保っていられるのか・・・。ノラルディンってのは、あれは間違いなく天使だな。もう拝みたいようなもんです。 このドキュメンタリー、もしもう一度NHKで再放送するようなことがあれば、ぜひ皆さんもご覧になってください。いつもなら、ここで「教授のおすすめ!です」と言うところですが、テーマがテーマだけに、そんなおふざけを言う気にもなりません。これは、豊かになって、色々なことを忘れてしまった日本人が、自分たちの現在を見直し、世界のことを知るために、ぜひ見ておかなければならない映像です。 しかし、一つだけ良かったなーと思うのは、最初の放送があってから、視聴者からこの兄妹を何とかしてやりたいという申し出が殺到したらしく、寄付金が集まって、今では二人はちゃんと母親のもとに帰り、二人とも学校に通えるようになったらしいんです。それだけは、ほんと良かった。もちろん、ノラルディンたちと同じような境遇の子供たちは他にも沢山いるわけで、この二人がそうなったからといって、問題は一つも解決していないのではありますが・・・。 ところで、感動的なドキュメンタリーを見て我が釈迦楽家一同、涙涙になっていたまさにその時、つけっぱなしになっていたテレビから、東京・多摩センター駅(昨日我らが行ってたところじゃん!)において、我が子を二人も殺した母親が逮捕された、というニュースが! タイミング悪過ぎ・・・。 この世界のどこかでは、「お母さんに会いたい」という、最低限の望みすらなかなかかなえられない小さな子供たちがいて、子供ながらに奮闘しているというのに、モラルの狂った我が国では母親が子供を殺しますか・・・。 まったく、情けないことでございます・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[今日もいい日だ] カテゴリの最新記事
|
|