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テーマ:暮らしを楽しむ(388213)
カテゴリ:今日もいい日だ
週末に東京で学会があることもあり、東京の実家に戻っていますが、今日は町田にある「国際版画美術館」で開催されている「版画の青春:生命を描く、大正期『月映』TSUKUHAE の時代」展を見てきました。 『月映』(つくはえ)というのは、大正時代に恩地孝四郎、田中恭吉、藤森静男という当時の若手版画家3人が協力して発行していた版画と詩の雑誌です。彼らは「貧しさ」や「病による死」といった迫り来る恐怖を、耽美的・象徴的・ロマン的な表現法の中に昇華しようとしたアーティストたちであり、創作版画という概念を定着させるのに非常に大きな役割を果たしたと言っていいと思いますが、今回の展覧会ではこの三人の『月映』時代の作品を中心に、同時代の画家たちの版画作品も含めて展示してあります。版画好きの私には、たまらない展覧会です。 で、実際に見てきた感想ですけど、なかなか良かったですよ。田中恭吉の『冬虫夏草』であるとか、藤森静男の『影』のように既に何回か見た作品もありましたけど、いいものは何度見てもいいですからね。 で、あらためて三人の版画を見ると、恩地孝四郎の作品というのは、他の二人と比べるとちょっと異質ですね。より抽象性が高いといいますか。ま、私の好みから言いますと、田中・藤森の方が少し上かな・・・。しかし、この三人についてはどの作品もとても良かったし、量的にも展示室二つ分ですから、見応えもありました。 ちなみに今回の展示では、彼らの同時代人として香山小鳥、山本鼎、織田一麿、岸田劉生、長谷川潔、平福百穂、南薫造などの諸作品があり、私の目を楽しませてくれました。またイギリス人の版画家で、日本の芸術・文化、特に白樺派の人たちに大きな影響を与えたと言われるバーナード・リーチの作品も何点かありましたが、これもなかなか良かった。一方、橋口五葉だとか伊東深水といったあたりの浮世絵的な画風の作品となりますと、私の趣味からはかなり外れていました。 ま、その辺は好みの問題ということになるわけでしょうが、私思いますに、少なくとも「木版画」に限って言えば、単色のもの、あるいはせいぜい2色刷り程度のものに味わいがあるような気がしますね。もともと版画ってのは精密さよりも象徴性の方に重きを置くので、あまり多色刷りだとかえって象徴性を薄めてしまうんですよね。伊東深水なんかの浮世絵風の版画がなーんとなく下卑た感じがするのは、その多色刷りのけばけばしさのゆえかも知れません。 で、一通り「版画の青春」展を見終えた後、常設展の方も見たのですが、今回はこの常設展の方も気合が入っていましたねえ。二部屋が常設展に当てられていたのですけど、片方はほとんど長谷川潔と駒井哲郎の二人展でしたから。長谷川潔の初期の作品なんて、なかなか良かったですよ。それからもう片方の部屋は、外国のアーティストの作品が並べられていて、たとえばデューラーの作品なんかもありましたけれど、ざっと流して見ていながらも、ピタリと私の足が止まってしまうのは、ムンクの作品、ピカソの作品、エゴン・シーレの作品、デイヴィッド・ホックニーの作品の前でしたね。これは単に彼らの作品がすごいからなのか、それとも古いヨーロッパの精密な銅版画を味わうための素養が私に欠けているからなのか、よく分かりませんが、多分後者なんでしょう。仕方のないことでしょうが、近代以前というのは私にはあまりピンとこないんですな。 ま、それはともかく、町田市立国際版画美術館における「版画の青春」展、私は十分に満喫して参りました。この展覧会は9月24日(日)まででおしまいなのですが、東京近辺にお住まいの方で、版画好きの方にはぜひおすすめいたします。入場料も一般400円、大学生200円と格安ですぞ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 13, 2006 06:43:21 PM
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