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カテゴリ:教授の読書日記
先日、「ジャズ茶房青猫」に行った時、店に備えつけの書棚に『ジャズ喫茶に花束を』という本があったので抜き出して読み始めたら、これが結構面白かったので、結局自分で買って読んでしまいました。 これ、ジャズの本としたら相当面白い本です。 直接的なジャズ評論ではなく、現在日本の各所でジャズ喫茶を経営されているマスターたちに直接インタビューし、ジャズ喫茶の現在を探ろうとした本なんですけど、さすがにこの時代、まだ頑張ってジャズ喫茶なんて開いているだけあって、それぞれのマスターに一家言があるわけ。喫茶店を開きながらジャズ評論やっている人もいますしね。 取材されている喫茶店は四谷「いーぐる」、藤沢「響庵」、吉祥寺「メグ」、梅田「ムルソー」、京都「YAMATOYA」、渋谷「メアリー・ジェーン」、新宿「サムライ」、一関「ベイシー」、高田馬場「イントロ」の9店。どれも有名な店ばかり。先日ご紹介した寺島靖国さんは「メグ」のマスターですしね。 で、どのマスターの話も面白いのですが、特に「ベイシー」の菅原正二さんの話は面白かったなあ。 例えばレコードがCDに変わったことで、聴き手の側に変化があったか? という質問についてこんなこと言っています: 「関係あるだろうねえ、便利になると有難味が薄れる、それは当然だよ。いつもシーソーゲームみたいにバランスがとれているわけ。レコードの頃はこれが永久かと思ってたじゃないですか、俺たちは。永遠に続くと錯覚していたわけ。だからなんの不安もなかったですよ。このままレコードの音さえ良く鳴らしていればいいんだと信じて疑わなかった。ところが、最近はキョロキョロしなきゃいけないんですよ。CDの次はSACDで、今度は何が来るんだ、みたいに。CDが出たとき、俺はあれ、すぐ替わるなと思った。見るからに一時っていう感じでしょ。そうなるとSACDだって、いくら頑張ってももっと簡単なものに取って替わられるかもしれないよね」 (中略) 「レコードなんか単なるギザギザを針で引っかくだけ、というものすごく原始的な理論で、こんな音が出るわけでしょ。魔法ですよ。理屈以上に現実がうまくいっているの。発明した人もこんなにうまくいくとは思ってなかったと思う。レコードほどいいものはなかったし、今後もないと思うね。」(206-207ページ) ・・・とまあ、こんな調子。特に後半部が面白いでしょ? で、こんな具合で「レコードの音」というものを徹底的に追究する菅原さんは、そのレコードを最良の状態で鳴らすために、オーディオセットの繊細な違いにも敏感になるわけ。彼に言わせれば、同じメーカーの同じ型番のアンプやプレーヤーでもすべて音が異なると言います。 「面白いのはねえ、同じ型番の同じものの個体差ですよ。マッキントッシュ買った人は一生その一台を大事に使うけども、五台買ってみなさいって。二台買っただけでも確実に違いますよ。同じ物を複数買わなきゃ駄目なんですよ。複数買ったときに初めて気づく。世の中に同じものは二つないっていう単純な理屈に。俺はレコードの針を百本も並べて「これが一番いい」なんて訓練しているから、それを知っているわけ」(208ページ) おお、そんなもんですかねえ! やっぱり実体験で自分なりの真実に到達している人の話ってのは、面白いですなあ! ま、この本の中に登場する9人のジャズ喫茶の親父さんたちは、それぞれ皆、実体験を通して何らかの真理に辿り着いた人たちばかりですので、その話は興味津々。それを引き出す村井康司さんの腕もなかなかのもんです。 ということで、この本、ジャズに興味のある人なら決して買って後悔しない本です。教授のおすすめ! です。 これこれ! ↓ ![]() ジャズ喫茶に花束を お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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