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テーマ:今日のこと★☆(106266)
カテゴリ:思わず納得!
アメリカでここ20年ほど、注目されている都市形態に「ゲイテッド・コミュニティー」というのがあります。大都市の郊外に突如現れる巨大住宅地で、周囲が塀で囲まれており、住民だけが門番付きの入り口から入れるようになっているんですな。門番付きの門(=ゲイト)があるので、このような名前で総称されているのですが、実際、ロスアンゼルスの郊外などを小一時間ほどクルマで走ると、砂漠のただ中にこの種の住宅地が忽然と現れるのでびっくりすることがあります。 で、今年のゼミ生の中に、この「ゲイテッド・コミュニティー」をテーマに卒論を書くという学生がいるんです。というわけで、私も折を見ては資料捜しの手伝いをしているのですが、まだ比較的新しい現象なので、資料を捜すのにも一苦労。 しかし、それでもこれまで調べたところによると、なかなか面白い現象ではあるようなんですな。 例えば、なぜ塀で囲まれた、門番付きの住宅地が各所に現れているのか、ということなんですが、そりゃ誰だって「防犯対策がしっかりしているからだろ」と思うじゃないですか。 ところが、さにあらず。 犯罪率から言うと、ゲイテッド・コミュニティーの中だから安全、というわけでもないんですって。むしろ、場所によっては塀の内側の方がよほど犯罪率が高かったりするので、ディベロッパーとしても、安全を売り物にしてこの種の住宅地を造成・販売しているわけではないのだそうです。 じゃ、何が売り物かというと、「ハイソな均質性」なんですな。 例えば経済的な面から言えば、これらのゲイテッド・コミュニティーは大都市から大分離れた砂漠の真ん中にあったりする。つまり、交通面から言うと不便なところにある。つまり、通勤や買い物の足として複数のクルマを所有している家庭のみが購入できる住宅ということになるんですな。それはつまり、ある程度富裕な家庭が塀の内側に揃っているということになる。ここが魅力なわけ。貧富の差が激しくなってきたアメリカにおいて、この塀の内側では「貧しい人」を見かけなくて済む、ってところがいいんですって。 つまり、「厳しい現実」を見たくない人々の夢の住宅街なわけですよ。実際、ゲイテッド・コミュニティの最良のモデルは「ディズニー・ランド」なんだそうです。 しかし、そうした「均質性」を求める現代アメリカ富裕層のメンタリティは、突然生じたわけではない。アメリカにはもともと「均質的なコミュニティ」を求める伝統がある、というんですな。例えば、ひと頃日本でも話題になった「アーミッシュ」のコミュニティーとか。あるいは「オナイダ・コミュニティー」とか。あるいは悪名高き「人民寺院」とか。あるいは、ヒッピーにとってのサンフランシスコとか。その他、こういった各種の「共同体」はアメリカの歴史の中にはごまんとある。 そうなってくると、ゲイテッド・コミュニティーもそうしたアメリカ人のDNAのどこかに隠れている「共同体志向」を反映しているのだ、ということも言えそうです。また、そう考えると、個人の自由より共同体の利益を若干優先させる思想、いわゆる「コミュニタリアニズム」の思想がアメリカで顕著に現れるようになった時期と、ゲイテッド・コミュニティー人気が上昇し始める時期が大体重なる、ということも説明がつくのかもしれない。 ま、そんなような視点から、この新しい住宅地形態を分析していったら、ひょっとしたら面白い卒論になるのかなー、なんて思っているんですけど、どんなもんですかね? というような話を、今日のゼミの時間、当該の学生と話していたのですが、まだまだものになるかどうかはハッキリしないものの、なかなか面白い話題ではありました。卒論指導をしていると、指導しているワタクシの方がよほど勉強になりますわ。 とはいえ、卒論指導は夏以降が本番。他のゼミ生たちもようやくそれぞれ本格的に調査を開始したようですので、お楽しみと苦労はこれからです。私も頑張らなくては!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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