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釈迦楽

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March 9, 2010
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カテゴリ:教授の読書日記

 今日はあんまり寒いので、ベッドにもぐり込んで本ばかり読んでいました。

 まず読んだのは『マイルス・デイビス自叙伝』(文春文庫)。ジャズ界の帝王と呼ばれた名トランペッターの半生記ですな。本人が書いたのではなく、聞き書きのようですが。まあ、自分で書くより聞き書きの方がうまく行くケースというのは多々あって、マルコムXの自伝なんかも、あれは確かアーサー・ヘイリーが聞き書きしたのだったと思いますが、あれもとてもよかった。

 で、このマイルスの自叙伝も、ものすごく面白い。とにかくマイルスの若き日のニューヨークあたりのジャズ・シーン自体が凄いですからね。もちろんデューク・エリントンとかのビッグバンドによるスイング系のジャズもまだまだ存続しつつ、そろそろディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーらによる新しいビバップ系のジャズも生まれつつあった、その激動の時代に、若き日のマイルスが飛び込んできて、同世代の若いジャズメンたちと切磋琢磨する話ですから、面白くないわけがない。ファッツ・ナバロ、クリフォード・ブラウン、マックス・ローチ、セロニアス・モンク、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーン、ジェリー・マリガン、ジャッキー・マクリーン、デクスター・ゴードンなどなど、今ではそれぞれ一家をなした様々なプレーヤーたちがバンバン登場しますしね。

 で、そういう同世代のジャズメンたちとの交流が色々描かれているのですけど、やはり実力者同士のことですから、時にケンカもするけれど、たいていは互いに尊敬しあった、すごくいい関係であることが多いんですね。むしろ世間の噂で、○○とマイルスは仲が悪い、なんてことが言われていても、実はそんなのはデマでしかなかったりする。

 例えばジャズの歴史をちょっとでもかじったことのある人なら誰でも知っている『バグズ・グルーヴ』録音時のマイルスとセロニアス・モンクの諍い(いわゆる「ケンカ・セッション」)についても、この本はその真相を明らかにしています。

 世上言われているところでは、マイルスがモンクに対し、「オレがソロをとっている時には、バックでピアノを弾くな」と言い、それにカッとしたモンクとの間に緊張感が走った、と。評論家の中にはこの噂を信じ、「二人の間の緊張感が、逆に素晴らしい演奏を引き出した」なんて書いている人までいます。

 しかし、マイルス自身の説明では二人の間に何かがあったわけではない、というのですな。その辺の一節をご紹介しますと・・・


 「オレはただ、モンクが作った<ベムシャ・スイング>以外では、オレのソロのバックでピアノを弾くな、休んでろ、と言っただけだ。理由は、ホーン・プレーヤーのバッキングについて、モンクがあまり理解していなかったからだ。モンクと一緒にやって良いサウンドが作れたのは、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、チャーリー・ラウズだけだ。みんなサックス・プレイヤーだ。オレの意見だが、モンクはたいていのホーン・プレイヤー、特にトランペットとの演奏は得意じゃなかった。(略)あのレコーディングでは、オレが唯一のホーンだったし、彼の和声進行のポイントがしっくりこなかったから、オレが吹いている間は休んでいてくれと言ったんだ。オレは、リズム・セクションにピアノ抜きでストロールさせてみたかったし、音楽にある種の空間も残しておきたかった。(略)あのレコードでのモンクは、オレが期待したとおりに自然で、とても良く聞こえる。オレがこう演奏してほしいと言ったものが、彼がやろうとしていたことでもあったわけだ。オレが吹き終わって少し経ってから演奏に入ってきてくれと言った通りに、モンクはやっただけだ。なんの口論もなかったし、なぜオレとモンクがケンカしたという話になったのか、まったくわからない。(略)自尊心も高く、オレを好きなこともわかっていたし、オレだって彼を愛していた。彼はケンカっ早い人間でもなかった。たとえ一週間、彼の足を踏みつづけたとしても、殴り合いになることはなかっただろう。雄牛みたいに強かったが、モンクは優しく、静かで美しい人間だった。」(308-310ページ)


 長々と引用しましたが、これを読むと、「噂」というのがいかにつまらないものか、というのがよくわかります。それにしても、すばらしい回想文でしょ? こんな感じのがずっと続くのですから、読んでいて本当に気持ちがいい。

 で、モンクとのことばかりでなく、例えばバードことチャーリー・パーカーが、ミュージシャンとしていかに素晴らしかったか、その反面、人間としてはいかに人格破綻していたか、なんてことが、愛情を込めて語られていたりします。そのチャーリー・パーカーに憧れ、目標とし、そして乗り越えていったか、なんて辺りはほとんど小説の世界ですね。

 大体マイルス・デイビスというと、イメージ的には高飛車な、おっかないおっさん、という感じですけど、この回想録を読む限り、とんでもない。とても筋の通った、素直で優しく、しかもユーモアのある人ですね。そして音楽に対する情熱と研究熱心さ、これも読んでいてひたすら頭が下がる、というところがあります。読めば、マイルスのことが好きにならざるを得ないでしょう。

 ま、この本は、ある程度ジャズの知識がないと読めない本ではありましが、逆にここから入ってジャズのことを知りたいと思う人もいるかも知れません。とにかく、大した本であることは確かです。教授の熱烈おすすめ! と言っておきましょう。


 さて、『マイルス・デイビス自叙伝』の上巻を読み終えた後、今度は柴田元幸さんの『つまみぐい文学食堂』(角川文庫)を読み始めました。柴田さんというのは、アメリカ文学研究者にして翻訳家としても有名な方。ご存知の方も多いことでしょう。

 で、この本は、アメリカ文学を中心とする英米の小説を縦横に引き合いに出しながら、柴田さんが食べ物にまつわる小話をする、という趣向のエッセイなんですが・・・。

 うーん・・・。どうなんだ、これは?

 まあね、面白くなくはないんです。そりゃ、柴田さんの書くものだから、つまらないものであるはずがない。だけどめちゃくちゃ面白いかというと、それほどでもない・・・かな・・・。

 この本、柴田さんが雑誌か何かで2年間にわたって書かれた連載を本にしたものなのですが、ワタクシ思うに、食べ物にまつわる話をアメリカ文学にからめてしなくてはならない、しかもそれを24回やらなきゃならないってところに無理があるのではないかと。もちろん1回、2回ならとびきり面白い話ができると思います。3回、4回くらいならまだ大丈夫かもしれない。しかし24回となるとね、これはさしもの柴田さんでも苦しくなってくるのではないか。

 食べ物をめぐるエッセイでは、有名なところでは吉田健一さん、あるいは池波正太郎さん。近いところでは林望さんなんかもよくお書きになりますが、吉田さん、池波さんとなるとこれはもう人も知る食通でしょ。また林さんは自分でも本を出すくらい、料理がお得意と来ている。こういう方々と比べると、柴田さんはご自身では食べ物とか料理とかいうものにそこまで入れ込んでないんじゃないかと、まあ、そう思うわけ。

 で、そこへ持ってきて、「英米の小説とからめる」という制約がかかって来るわけでしょ。となると、話がどうしても「味覚」という体感的な部分からではなく、あくまで知的な側面の話になっちゃうわけ。

 となると・・・やっぱね、頭脳の中から発する食べ物の話ってのは、限界がありますよ。まさに「絵に描いた餅」みたいなことですから。で、絵に描いた餅の話を連続して24個も読まされると、こちらとしても飽きてくる。こういうのは、毎月一回、雑誌の連載として読むならいいですけど、単行本となると、今月一話読んで本を伏せ、来月また一話読んで本を伏せ・・・というわけにもいきませんしね。

 ということで、この本、そんなに大部な本ではないのですが、どうも読むスピードが上がってこない・・・。ついつい、『マイルス・デイビス自叙伝』の下巻の方を先に読もうかなあ、なんて気になってきたりして。下巻では、冒頭あたりで、ビル・エバンスとの出会いが書いてあるんだよなあ・・・。こちらは、まさに「小説より奇なり」な話がバンバン出てくるわけでして。

 それにしても、最近のワタクシ、アメリカ文学の研究者なんだか、ジャズの研究者なんだか、よく分らなくなってきたなあ・・・。大丈夫なのか、ワタクシ?


これこれ!
 ↓

マイルス・デイビス自叙伝(1)


マイルス・デイビス自叙伝(2)





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Last updated  March 9, 2010 09:42:26 PM
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