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釈迦楽

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March 9, 2011
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カテゴリ:今日もいい日だ

 今年度後期の大学院の授業では、授業を取りに来た院生たちに「あなた方が『これが最善』と思う英語の教則本を、それぞれ作ってみなさい」という宿題を課し、その原稿を半年かけて執筆していく、というのをやっていたことは、前にもこのブログに書きましたっけね?

 で、今日、ついにその教則本が完成しました、と言って、院生たちがその本を私のところに持ってきたんです。

 もちろん、本と言っても、プロの製本屋さんに頼んだわけではなし、手作りっぽいものなんですが、しかし、どれもそれなりに凝った作りになっていて、挿絵なども友人の美術科の学生に頼むなどして、それぞれ楽しい教則本になっておりました。

 で、その教則本の完成度も私には嬉しかったのですが、それ以上に嬉しかったのは、院生たちが言っていた、授業に対する感想です。

 どうやら院生たちは、最初のうち、初学者向けの教則本なんか作って何の意味があるのか、授業の趣旨がよく分からなかったらしいのですな。彼女たちとしては、むしろ自分自身の英語力をつけるような授業が受けたかったらしい。

 しかし、原稿を書き上げ、推敲し、挿絵をつけ、そして製本するという一連の本作りの過程を辿っていくうちに、だんだん面白くなってきたと。また面白くなってくるのと同時に、教則本を作ることの難しさも分かってきた。

 というのも、本を作るとなると、無責任なことができませんからね。レポートなどと違って、本というのは「不特定多数の人様にお見せするもの」ですから、誤字・脱字一つあれば、本の内容についての信用まで失うし、ましてやそこに書かれている英文や、その英文に対する解説が間違っていたら、教則本として致命的。ですから細心の注意を払って一文、一文チェックしなければなりません。当然、自分の持っている英語についての知識のあやふやなところも、その段階で徹底的に洗い出されます。

 おそらく彼女たちは、教則本を作る過程で、生まれて初めて「責任を負いながら文章を書く」ということを体験したんじゃないでしょうか。そして、一冊の本を作り上げたという達成感も、生まれて初めて体験したことでありましょう。

 ま、「英語教育研究の究極のゴールは、結局、優れた教則本を書くこと以外にあるわけがない」という私の信念、そして私が課した課題の意味を、最後の最後になって彼女たちは完全に理解し、この授業をものすごく楽しんでくれたと。


 というわけで、そんな彼女たちの汗と涙の結晶たる本を手にして、私は非常に満足しております。私自身、「この授業、ちょっと失敗だったかな」と思う瞬間もあったのですが、今は、やっぱりやって良かった、という感じですね。





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Last updated  March 9, 2011 11:44:52 PM
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