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テーマ:本日のお勧め(385840)
カテゴリ:教授の読書日記
ジェフリー・ディーヴァーの「リンカーン・ライム」サスペンス、『The Burning Wire』を読了しましたので、心覚えを書き付けておきましょう。(以下、ネタバレ注意!) とある日、ニューヨークで、いつものようにバスに乗ろうとした乗客が、体中に穴が開いたような状態で死んでしまう、という「事件」が起きます。バス停付近にあった「アルゴンキン電力会社」の変電所に仕掛けられたワイヤーから高電圧の電気が発射され、アーク(=電弧)となってバス停のポストを直撃、溶けた鉄が礫となって件の乗客を襲ったのでした。 やがて犯行声明がアルゴンキン電力会社に届き、ニューヨークのどこそこの界隈の電気を切らないと次の犠牲者が出る、的な脅迫がなされる。で、そのあたりを探っていくと、どうやら火力発電や原子力発電など、旧式の電力生産に固執するアルゴンキン電力会社を批判するエコ・テロリストたちか、または何らかの形で同社に恨みを持つものの犯行ではないかということが判明してくる。 で、依頼を受けた肢体不自由の名探偵、リンカーン・ライムが捜査に協力するのですが、その結果、背後に潜むらしいエコ・テロリスト集団のことはさておき、直接の犯行を行なっているのはアルゴンキン電力会社に勤めていたレイモンド・ゴルトなる人物だ、ということが分かる。彼は自分が癌にかかったのは高圧電線に近いところで作業をさせられてきたためだと思い込み、会社を恨んで復讐していたんですな。 で、犯人は特定できたものの、神出鬼没のゴルトの次の攻撃を阻止することは難航します。何と言っても、彼が使う武器は電気。高圧電気を自在に操り、様々なものに電気を通じさせてしまうので、金属などはもちろんのこと、通電するものであれば、どんなものでも彼の武器になってしまう。 そしてそんな彼の無差別のテロ攻撃により、某ホテルが通電され、そのために金属製のドアノブに触れた客が感電死したり、また別なマンションではエレベーターが通電され、乗っていた住民が感電死するなど、犯行はエスカレートするばかり。 そして、ライム得意の科学捜査により、ゴルトの居所を突き止めたと思いきや、これも実はゴルトの罠で、逮捕に向かったライムのパートナー、アメリア・サックスと、ライムのお気に入り、若手捜査官のロン・プラスキーを危うく感電死させそうになるという・・・。 ところが、その後の捜査により、ライムは全ての事件の構図が、実は逆転しているのではないか、ということに気付きます。つまり、この一連の事件は、アルゴンキン電力会社に対して恨みを抱いたゴルトが、エコ・テロリストたちのサポートを受けてアルゴンキン社に対して攻撃を仕掛けているのではなく、逆に、アルゴンキン社の女性社長であるアンディ・ジェッセンと、その兄である退役軍人のランドール・ジェッセンが仕組んだ逆攻撃だったのではないかと。 実は、ゴルトによる無差別殺人の標的になったと見られていた被害者たちには、1つ共通点があった。彼らの多くは、アルゴンキン社が採用しているような従来型の発電方法ではなく、太陽光発電や風力発電など、クリーンなエネルギーの開発に携わる人たちだったんですな。で、アルゴンキン社は、そうした未来的なエネルギーの開発者たちを亡き者にし、アルゴンキン社の業績を安泰なものにしようとしていたのであって、ゴルトという人物が実行犯と見られていた事件も、実はすべてゴルトに扮したランドール・ジェッセンが行っていたと。 被害者と思われていた電力会社が、実は加害者だったというどんでん返し。となると、アンディとランドール兄妹の次の標的となるのは、近々ニューヨークで開催される予定の、クリーン・エネルギーのための技術市に全米から集まってくる技術者たちに違いない。ひょっとすると、既に会場の建物には配線が仕組まれて、スイッチ一つで会場内の人々全員を電撃で焼き殺すことが可能になっているのかも! さて、この危機をリンカーン・ライムは、そしてアメリア・サックスらは、防ぐことはできるのか?! というような話。面白そうでしょ? でも、ご安心下さい。上に紹介してきたのは、この小説の内容のすべてではないんです。実はこの話、この先さらに大きなどんでん返しがあるんです。ジェットコースター・サスペンスを書かせたら右に出るものがないジェフリー・ディーヴァーのことですから、そう簡単に読者に先を読ませてはくれません。 というわけで『The Burning Wire』、ディーヴァー作品の中のベストとは言えませんが、リンカーン・ライムもののファンであれば、楽しく読めることは必定。教授のおすすめ!と言っておきましょう。英語も易しいので、分厚いペーパーバックでも比較的楽に読み進められますよ! これこれ! ↓
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Last updated
April 5, 2012 11:10:03 PM
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