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釈迦楽

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April 14, 2012
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カテゴリ:教授はつらいよ

 院生に文学作品の翻訳の宿題を出しておいたのですが、答え合わせの都合上、自分でも翻訳してみないとまずいので、今日はその予習をやっておりました。

 ところがね、やっぱり岡目八目とはよく言ったもので、人の翻訳を云々することは簡単でも、自分でやってみるとまあ、難しい、難しい。

 宿題に出したのは、ジョン・スタインベックの有名な短編「菊」の冒頭に近い部分で、大昔に読んで割と面白かったという印象があったので適当に選んだだけなんですけど、翻訳するつもりで読むと難しいわ。

 例えば、主人公の女性、イライザ・アレンの容姿を説明した一文を訳すのだって一苦労よ。


 She was thirty-five. Her face was lean and strong and her eyes were as clear as water.


 というのですが、「彼女の顔は lean で strong だった」って、どう訳せばいいの? 「lean」は「(顔などが)細い」という意味ですが、だからと言って「彼女は細面で・・・」なんて訳すと、なんだかなよなよっとした竹久夢二の版画に出てくるような女性を想像させてしまって、次の「strong」と合わないですよね? じゃあ、「彼女の顔は引き締まって、逞しい感じだった」とするか? そう訳すとなんだかアスリートの顔のようですなあ・・・。それとも、ひょっとして「strong」には精神的に強い(きつい)という意味があるのかしら? ならば「彼女の顔立ちはきりっとして、気の強さを窺わせた」とするか・・・。いやいや、この小説全体を読むと、イライザがそれほど精神的に強い女性のようでもないしなあ・・・。

 ってな具合で、簡単な一行を訳すのでも考え出したらきりがない。

 でまた、風景描写がまた難しいのよ。例えば、


 On the foothill ranches across the Salinas River, the yellow stubble fields seemed to be bathed in pale cold sunshine, but there was no sunshine in the valley now in December. The thick willow scrub along the river flamed with sharp and positive yellow leaves.


 まあ、川の向こう岸に見える山麓の牧場が、陽を浴びている(be bathed)というのですが、日本語で「陽差しを浴びる」なんて訳すと、暖かそうな風景に見えますでしょ? だけど「in pale cold sunshine」なんだから、どちらかというとうすら寒い情景のようでもある。陽は射していて、一応明るいのだけど、寒そうだ、という情景をどう訳せばいいのか・・・。

 それから一番最後の方で土手の柳の葉が「sharp で positive」だ、と書いてあるのですが、柳の葉だから「sharp」は分かるとして「positive」って何? 葉っぱがポジティヴって・・・。

 で、究極に困ったのが、次の一文。


 It was a time of quiet and of waiting.


 前半は「静寂の時」とするとして、「a time of waiting」は? 

 意味は何となく分かるが、日本語として訳しようがない。

 とまあ、そんな具合で、悩む、悩む。翻訳は、キツイわ~。


 だけど、なんかね、楽しかったです。あーでもない、こーでもないと日本語をこねくり回すの。それから、いわゆる文学作品・名作と呼ばれるものを、一字一句にこだわって読むことなんて久しぶりだったので、何だか一生懸命小説を読んでいた学生時代に戻ったような感じがして、それもまた楽しかった。

 ひょっとすると、こういう細かい仕事、何をすべきかは明確に分かっているけど、それをベストな形で実行するにはどうすればいいかが分からないので、それを一生懸命考える、という方向性の仕事って、自分には合っているかも。

 ということで、うーん、うーんと唸り、悩みながらも、結構楽しい時間を過ごしていた今日のワタクシなのでありました、とさ。





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Last updated  April 14, 2012 11:58:08 PM
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