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釈迦楽

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June 8, 2013
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カテゴリ:教授の読書日記
 何となく仕事が手につかない感じがして、以前研究費で買っておいた『図書館が街を創る。「武雄市図書館」という挑戦』(ネコ・パブリッシング/1,429円)という本を何気なくパラパラ読み始めたのですが、これが案外面白い本だったんです。

 まだ途中までしか読んでないので、そういうものとして聞いていただきたいのですが、これ、佐賀県の武雄市にある市立図書館の改革の足跡を多層的に解説した本でありまして。

 図書館改革が動き出すきっかけは、武雄市長である樋渡啓祐(ひわたり・けいすけ)さんの素朴な疑問、というか不満だったというのですな。つまり、図書館大好きな樋渡さんが、仕事が終わってから図書館に行こうと思っても、当時この図書館は午後6時に閉館になってしまったので、必然的に利用できなかったと。

 で、樋渡さんに図書館が利用できないということは、すなわち大多数のサラリーマンにとって、市立図書館は閉ざされた場所であることを意味する。それは市民に対するサービスの在り方としてどうなんだと。実際、当時の図書館利用者は、市民のうちの20%に過ぎなかったそうですが、市民の8割にとって図書館は無縁の施設になっていたそうで、そのことに樋渡市長は大きな不満を抱くわけ。

 で、こんなのは図書館のあり方としておかしい。もっと開館時間を長くしなければいけないのではないか。そう考えた樋渡市長は、図書館に働きかけて、そういう方向に改革しようとするのだけれども、そこはそれ、行政のやることですから、抵抗がすごい。従来からのやり方を変えることに対しては、ものすごく強い反対があったと。

 しかし、樋渡市長はそうした抵抗をものともせず、図書館の市民サービスの在り方のあるべき姿を求めて改革に突き進むわけ。開館時間を長くすることはもちろん、閉架書庫を少なくし、開架書庫を多くして、市民が自由に好きな本を探せるようにし、さらに図書館内にカフェも作る。そして図書館の経営自体を民間企業であるTSUTAYAに業務委託するという大英断を下すんです。

 そして、そういうことの積み重ねにより、今や日本中から注目される市立図書館を作り上げてしまったと。ま、この本は、そんな具合に、改革派市長のリーダーシップと行政手腕によって、退屈な図書館が劇的に変わっていく、その過程を描いているのでございます。


 でね、この本の中に書いてあることなのですが、日本の行政の問題点として、「官」(=政府)と「公」(=市民)が同じものと考えられてしまったことの悲劇が指摘されていて、そこは非常に説得力があるわけ。

 「官」のやり方を推し進めていけば、そりゃ、箱モノとしての退屈な図書館が出来上がるわけですけど、それは「公」の利益を追究したものになってない。なってないのに、それを疑問視し、批判し、変えようという発想が日本にはない。そこが問題だ、ということなんですな。

 だから樋渡市長は、公立の図書館である以上、市民の立場から見た上での利便性を追究するべきなので、自分はそれをやるよと。まあ、樋渡さんとしてはごく自然な成り行きなのでしょうが、しかし日本の行政の頑固さを考えると、おそらく大変なご苦労があったはず。だけど、その苦労を突破したところに、新しい地平が拓けるというところがある。

 そういう意味で、たかが一個の市立図書館の改革とはいえ、それは行政の在るべき姿を考える上で、非常に示唆に富む改革だと思うんですな。

 
 でまた考えさせられるのは、そうした市長の改革が、当初、市民から100%支持されたわけではない、ということ。改革をすれば明らかに自分たちの利益になるのに、何かを変えること自体に反対する勢力というのは、市民の中には必ずある。必ずあるどころか、そっちの方が常に大きな勢力であると。

 だから、そういう勢力の大反対を押し切ってでも改革を進めるだけのガッツがないと、世の中、何も変わらないんですな。また、こういうとちょっと矛盾するようですが、そういう強引なことが出来るのもまた行政の強みなのであって、行政の欠陥は行政で直していく他ない。

 その辺の機微を、この本はうまいこと指摘しております。

 まあね、私自身、公の意識の強い大学に所属しておりますので、その制度上の欠陥というのはよく分かる。だけど、リーダーが強い意志をもってその欠陥を正そうとすれば正せないこともない、ということを知れば、それはやはり希望にもなります。本書を読んで、「官」ではなく、「公」のことを考えながら、国立大学のあり方も考えていかなくちゃいけないよなあと、改めて強く思いました。

 そういうことを考えさせてくれた上で、一つの成功例を見せてくれたという意味で、この本、なかなかいいです。教授のおすすめ! と言っておきましょう。


これこれ!
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Last updated  June 8, 2013 07:57:58 PM
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