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釈迦楽

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February 16, 2014
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カテゴリ:教授の読書日記
 いやあ、ジャンプ・ラージヒル、葛西選手銀メダル、良かったですなあ! 苦労人だからね。いい人だしね。ああいう人が結果によって報われるってのは、いいもんですよ。飛距離から言ったら、1位の人より遠くまで飛んでいるわけだし。っていうか、私の初期のゼミ生に葛西選手にちょっと似ている奴がいるもので、葛西選手のことを他人とは思えないのよ。
 
 
 さて、それはさておき。

 昨夜寝しなに野地秩嘉さんの書いた『キャンティ物語』を読みかけたら、これが面白くて、今日はそれを読みきっちゃったという。本当は、自分の仕事をしなくてはいけないのだけれども。

 これ、イタリアンの名店にして、文化人・芸能人の社交場であった「キャンティ」というお店を作った川添浩史氏の一種の伝記ですな。一種の、というのは、この本、必ずしも川添氏のことだけ書いてあるわけではなく、むしろキャンティという時代の象徴のような空間を軸にした、「あの」時代の伝記でもあるから。つまり、時代を駆け抜けた群像を描いているんですな。

 で、まず何に驚くかというと、その昔の華族の実力のすごさね。川添浩史さんというのは、伯爵にして貴族院議員の後藤猛太郎の庶子、ということは明治維新の英傑の一人である後藤象二郎の孫に当たるわけで、庶子とはいえ名家の生まれ。庶民とは桁違いの贅沢な暮らしをしているわけ。

 それで映画のことでも勉強しようとフランスに留学するのですが、当時、フランスへ行くには船で2ヶ月くらい掛かる。で、最初、同船したフランス人家族の子供に話しかけ、しばらくしてから高校生くらいの奴に話かけ、最終的には親に話しかけるうちにフランス語をマスターし、フランスに着く頃には、言葉に不自由しなくなるってんですから面白い。

 で、向こうについて学校に登録するわけですが、本気で勉強する気もないので、すぐに飽きて学校を2日くらいで退学し、あとはそのままパリで高等遊民として遊んで暮らすことになる。当時、外国に行くのも大変なことで、稀に行く人がいたとしても、それは国費留学生とか、国の期待を背負って必死で勉強しに行く連中ばかり。だから、向こうでお金を湯水のように使って遊んで暮らす、なんてことは、華族出の川添さんだから出来ることなわけですよ。

 だけど、こうしてただ遊んでいることで、当時、パリにいた沢山の芸術家や文化人と知り合うこととなるんですな。例えば、写真家のロバート・キャパなんて、川添さんがパトロンみたいに世話を見てやったというのですから、これまたすごい。で、後にそうした人的資産が生きて来るのですから人生ってのは面白いものです。

 で、そんな風に5,6年もフランスで遊んでいるうちに戦争になって日本に戻ることになるのですが、戦後は高松宮様のお屋敷を改造した迎賓館の支配人として、国賓の接待などの仕事を始め、また歌舞伎の海外公演などのプロデュースといった仕事まで手を広げるようになる。当時、プロデューサーという仕事に対する認識が日本にない時代に、そういう仕事をし始めたわけですから、苦労も多いわけですけれども、それは川添さんにしかできない仕事でもあった。

 で、そういう公けの仕事をする一方、2番目の奥様になった川添梶子さんと「キャンティ」というお店を開くことにもなる。その辺の経緯はすっ飛ばしますが、とにかくこのキャンティが、宮様から不良少年少女に至るまで幅広い人的ネットワークを持つ川添さんならではの顔の広さと、梶子さんの日本人離れした魅力ゆえに、文化人・芸能人、そしてそれらの卵の拠点となっていくと。

 とまあ、そういう話になっていくわけですけれども、キャンティのウェイターさんや、この店に入り浸った人たちへのインタビューをもとに再現されるこの店の在り様というのが何とも面白くてね。この日本にもすごい時代、すごい場所があったんだな、その熱気の中で、色々なものが創造されていったんだなというのがよく分る。これは面白いですよ。

 で、この本を読んだら、私も生まれてくる時代が20年遅かったんだ、ということがよく分りました。1960年代に大学生だったら、もっと面白い時代を生きられたんじゃないかなと。だって、この時代の大学生なんてすごいよ。学生の分際で店を出すとか、起業して社長になるとか、そんなのがざらにあったようですからね。

 それから、もう一つこの本を読んでいて感銘を受けたのは、晩年の川添梶子さんが群馬県の安中の駅前にある亜鉛の精錬所が好きで、時折車を飛ばしてここまできて、山を蔽う巨大な工場を見に来た、という記述があったこと。実は私の母方の祖父母が安中に暮らしていたものですから、私も子供の頃、夏休みなどに安中に行っていたので、この亜鉛工場のことはよく知っており、しかも工場フェチである私もまた、この工場のことが大好きだったんですわ。

 ま、そんなこともありまして、この本、相当面白かったです。これね、私よりも若い世代の人にも読んでもらいたいなあ。それで、こういう時代の熱さを感じ、それを自分たちでも作り出したいと思ってもらいたいです。


これこれ!
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 ところで、この本にもしばしば登場する作詞家の安井かずみですが、私は彼女にまつわる『安井かずみがいた時代』という本も買ってあるんだなあ。『キャンティ物語』で勢いがついたので、こちらの本も一気に読んじゃおうかしら。





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Last updated  February 16, 2014 07:14:22 PM
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ケンケン@ Re:想像ふくらむ、理想のアメリカ短編小説集(06/26) 先生と同業の末席にいるものですが、 その…
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