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カテゴリ:思わず納得!
うちの大学の外国語科の紀要の編集が完了したので、今日は印刷屋さんと打ち合わせ。家の近くのカフェ。「イーストパラダイス」にて、私が丹精込めて作成した版下原稿を渡して参りました。その際、印刷屋さんに「ショコラ」(=ホット・ココア)をおごってもらっちゃった! 経費、経費。
で、経費のココアを飲みながら、旧知の営業担当のMさんと四方山話をしていたのですが、そこで面白い話を聞きまして。 Mさんがお勤めの会社は、基本、印刷屋さんなんですが、色々な大学の先生方と関係があって、そこから仕事を請け負っている。大学というところは、色々な種類の印刷物を作りますので、印刷屋さんとしては、いいお得意さんなんですな。実際、Mさんはお昼前に私と会って紀要の印刷・製本を請け負った後、別な大学の先生と会い、その人から科研費関連の報告書の印刷の仕事を請け負うと言っていましたからね。 ところが、そのMさんの会社、最近、「ISBN」を発行できる権利を取得した、というのです。つまり「印刷屋」さんから「出版社」になったわけ。 一般の人はご存じかどうか、「本」と呼ばれるものには、すべて「ISBN」というのが付いています。本の裏側を見ると、ISBNのナンバーが書いてあるでしょ? それです。で、これが付いているものは、国会図書館に納入義務のある「本」ということになる。逆に、これが付いてなかったら、それは「本」ではなく、ただの「印刷物」です。 で、Mさんの会社は、このISBNを付けることのできる権利を得た、ということですな。だから、これからMさんの会社は、印刷物を作るだけでなく、本も出版できることになったわけ。 とはいえ、ISBNを発行する権利を取得したと言っても、Mさんの会社が出す本が、日本全国の書店に置かれるわけではありません。それをやるには、「取次」と呼ばれる会社と契約を結ばないとダメなんです。だけど、大手取次が出来立てホヤホヤの出版社と契約を結ぶはずがない。だから、Mさんの会社の出す「本」は、せいぜい、近所の本屋さんに頼み込んで置いてもらうとか、付き合いのある大学の生協に置いてもらうとか、そのくらいのことしかできないんです。 じゃあ、なんでMさんの会社はISBNを付ける権利を取得したのか? そこですよ。そこ。そこが面白いところなの。 つまりね、大学のセンセイ方の中には、業績を稼ぐために「本」を出したい人が沢山いるわけ。ところが、そういうセンセイ方の全員が全員、大手の出版社から本が出せるほどの実力はないと。 じゃあ、どうするか? そういう時に、Mさんの会社みたいなところに頼んで、自分の本を出してもらうわけ。出すったって、もちろん自費でね。しかも自腹を切るわけだから、100冊くらいしか刷らない。どうせ売れないし。 だけど、その「本」は、ちゃんとISBNのついたれっきとした「本」であるわけだから、業績としては「単著を出した」ということになる。立派な業績ということになるわけですな。 というわけで、Mさんの会社が印刷屋から出版社になったわけは、そういうセンセイ方からの依頼を引き受けるため、だったんです。それによって、Mさんの会社も、センセイ方も、互恵的に利益があると。印刷屋さんの経営戦略と、センセイ方の思惑が、そこで出会うわけですわ。 はっ、はーん。なるほどね~! じゃあ、私も、Mさんの会社を使って「本」を出し、業績を稼ぐことができるわけだ。Mさんとは旧知の仲だし、出版マニアの私としては、自分で版下まで作るくらい朝飯前だし。 午前中、一杯のココアをおごってもらいながら、いい社会勉強ができました。 ま、差し当たりは2週間後に完成するという紀要を楽しみにするとして、今後、何かあったらMさんのところで「本」を出しちゃおうかな~なんて、悪巧みをしている私なのでした、とさ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 5, 2014 10:54:25 PM
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