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カテゴリ:教授の読書日記
矢川澄子さんの『おにいちゃん 回想の澁澤龍彦』を読了しましたので、心覚えを。
矢川さんは、澁澤の最初の奥さんだった人。で、それだけ身近にいた人だから、そういう人の書いた澁澤龍彦伝はきっと面白いに違いないと思って読んでみたのですけれども・・・ うーーーん。どうかな。期待したほどではなかったかな。 まず興醒めだったのは、回想の中で自分のこと(?)を「I」というイニシャル(あるいは一人称のI?)で語ることで、その他、時折出てくる人名もイニシャルだったりして、とりあえず面倒臭い。これは気取りなのか、「私」と名乗ることが怖いのか。 そのこともそうなんですけど、なんかね、メルヘンチックなのよ、書き方が。それでいて書いている内容は、澁澤に何度も中絶させられた、というような生々しいことだったりして。だったら「こいつ、ひでえ奴だったんですよ」ってな感じでズバッと言えばいいのに。離婚した後、澁澤から二つにぶった切った2ショット写真を送りつけられたとか、そんなことも書いてあるわけだし。 結局、矢川さんという人は離婚してもやっぱり澁澤が好きで、彼との思いでが大事で、それを宝物のようにしていたんでしょうな。だから、それを人に見せて自慢したいけれど、素のまま見せるのはちょっと嫌で、それで宝石箱に入れたまま、遠目にしか見せてくれないようなところがある。だから、何度も中絶させられたり、離婚後にまで嫌なことをされたりしたことまでも、飛び切りの美しい箱で飾るように提示したんでしょうな。 だから、それを読まされる方としては、どういう気分でそれを受けとりゃーいいのか、さっぱり分らないわけよ。そこが、すごく読後感を気持悪いものにしている。 矢川さんだって、大した文人なのだから、もっとギリギリと澁澤の人間性(悪魔性)に迫るなり、いっそ開き直ってそれでもなお余りある彼の魅力を語るなりすればいいのに。彼との生活の一瞬一瞬を慈しむように、目の中にお星さまキラキラで「こんなひどいことされました」って、うっとり語られる中途半端な感じは、ちょっとたまらないな。 というわけで、今回は教授のおすすめ! はなーしーよ。でも、興味のある方は別に引きとめませんけど。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 4, 2015 11:20:31 PM
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