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釈迦楽

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April 19, 2016
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カテゴリ:教授の読書日記
 「昭和の男」シリーズ、今日は大学での勉強ライフについて。


 今、書き物の大半を・・・いや、大半どころか、99%位をパソコンで行なっている私ですので、「書く」ということはすなわち「キーボードを打つ」ことと同意であるわけですが、1980年代前半の学生時代、パソコンだのワープロなんて影も形もなかったので、当然、授業を受ける時には「ノートに鉛筆書き」をしていた・・・んでしょうなあ。

 そういや、大学生になって家庭教師をやるようになった時、当時中学3年生くらいだった教え子が、「ポケコン」に凝っておりまして。

 そう、パソコンという名称が普及する前、「マイコン」とか「ポケコン」という言葉があったのよ。シャープとかカシオが、横長の電卓みたいな小型のコンピュータを発売していて、簡単なプログラミングが出来るようになっていた。それから、プログラムを紙に打ち出す機能まであったりして。

 教え子がそれをいじっているのを見て、こういうものが将来、自分の生活に関わってくることがあるかもしれない、なんて、想像もできませんでしたが。


 ま、とにかく、私の学生時代には、そういうものは何もなかったので、授業を受ける時には、ちゃんとノートを広げ、鉛筆・・・というか、シャープペンで書きこんでいた。その意味では、それこそ先人たちの受講スタイルとまったく異なるところがなかった、と言っていいでしょう。

 で、一連の授業を受けた後、レポートの課題を言い渡されることもある。そういう時は、鉛筆で下書きして、それをレポート用紙に清書したものでございます。文章の推敲だって、鉛筆で書いたり消したりですから、超原始的。そして清書する時は、さすがに鉛筆というわけにはいかないので、なんらかのインクを使ってペン書きするわけですけれども、そんな時私が愛用したのは、水性ボールペン。たしか100円くらいで売っている「サクラ ボールサイン」というのではなかったかと。

 でもね、これも今時の「三菱 ジェットストリーム」なんかと比べると、書き心地があまり良くなくて、時々インクがかすれたりして、イマイチな感じでした。でも、他に選択肢がなかったのよ。


 大体、図書館で本を探すのだって、今みたいにパソコンをつかった検索なんかできないわけだから。

 私たちの頃は、図書館の入口付近にかなり大きなスペースがあって、そこに木製のカードボックスがズラッと並べてあって、その紙製のカードを一枚一枚めくって目指す本を探したんだから。本のタイトルで探すボックスと、筆者の名前で探すボックスの2種類があって。うーん、今からわずか30年前までそんな原始的な状況だったんだからなあ。時代の変化ってのはスゴイものでございます。

 でも、今思い出してみると、カード検索していた時の、あの手ずれしたカードの匂いまで懐かしくなってきます。

 
 カードといえば、私の学生時代までは、「カード」という言葉に異様なまでの魔力がありましてね。

 つまりね、当時は「カード」こそが、情報収集と情報整理のキーワードだったんですわ。

 川喜田二郎っていうえらい文化人類学者がいて、この人が「KJ法」という情報整理術を編み出したんですな。それは『発想法』っていう本に書いてあるんですけど、要するに、何でもかんでも情報をカードに書きだしていって、それがある程度たまった段階で、そのカードを分類し、まとめるのですが、その分類の仕方を変えることによって、情報のまとめ方も変わってくる。そうやって、色々な分類の仕方を試すうちに、最初は思っても見なかった情報のまとめ方を思いついたりしたらしめたもの。新しい発想が、そこから生れると。

 ま、川喜田さんは文化人類学者だから、沢山の人を使ってフィールドワークをすることがある。そうして集めてきた情報をいかにまとめるか、という必要性から生れたカードの活用法なわけですけれども、情報を頭の中に置いておかないで、カードに書きだす形で可視化し、それを物理的に操作する(カードの組合せ法を変えたりする)ことで、ブレーンストーミングも出来るというところが、他の学問分野でもこの「KJ法」が有効なんじゃないかと考えられたんですな。

 で、同じくカードで情報を整理することを唱導したこの時期のベストセラーが、梅棹忠夫氏の『知的生産の技術』という本。この本で梅棹さんが提唱したB6版のカードが、後に「京大式カード」として名を馳せるわけですな。


発想法 [ 川喜田二郎 ]
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知的生産の技術 [ 梅棹忠夫 ]
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 梅棹忠夫さんも川喜田さんと同じく文化人類学者だけど、この時代、学問の世界に文化人類学者が与えたインパクトって、凄かったわけですな。

 ま、とにかく、従来は「知識」とか「智恵」と呼んでいたものを「情報」と捉え直し、さらにそれをカードに書きだすことによって個人の人格とか個性から切り離して、モノとして扱うという感覚。これこそが、この時代にもてはやされた文化人類学者たちの新しい「やり方」だったわけですな。無論、それは、やがて来るコンピュータ時代には、当たり前のことなのですが、コンピュータではなく、紙のカードがベースだったというところが大時代なところでございまして。

 で、そういう時代に学生やってたものですから、私もね、恥ずかしながら、カードを作ったり、それを分類したり、なんて真似事をしたものでございますよ。まあ、恥しい! でも、実際にやってみると、カード式情報分類法って、とてつもなく時間が掛かるもので、そのあまりの効率の悪さに辟易して、すぐにやめてしまったのは、私が賢かったからか、それとも辛抱が足りなかったせいなのか。


 ところで、梅棹さんの『知的生産の技術』と、タイトルが似ているのですけど、もう一つ、この時代のベストセラーとされたのが、渡部昇一さんの『知的生活の方法』という本。


知的生活の方法 [ 渡部昇一 ]
価格:777円(税込、送料無料)





 渡部昇一さんというと、今はもう右翼の論客みたいになっていますけど、元々は英文学畑の人。それだけに、川喜田さんや梅棹さん以上に私の専門に近い人ですが、この本は、そんな渡部さんが田舎から出てきて、上智大学に入学して、ビタミンCを取るために大根を生で齧りながら一生懸命勉強して、成果も出して、本も沢山買えるようになって、自宅を図書館みたいにしちゃいました、それで今はすごく快適です、だから皆さんも私を見習いなさい、みたいなことが書いてある本。そういう意味では、勉強の仕方についての本というよりは、自己啓発の本ですな。

 ま、そういう本ですから、結構、外連味もある本なんですけど、何せ当時の私は、それこそ渡部さんみたいに英(米)文学の研究者になりたいと思っていたのですから、この本、結構、楽しみながら、折ある毎に読み返したりしたのでした。これの「続」まで買って読んじゃったよ。 
 
 それで、これは蛇足の話なんですけど、後に私も人並みに研究書なんかを出版するようになった時、出版社が私には断らずに、私の本を渡部昇一さんに寄贈したらしいんですな。それで、ある時、渡部さんから私に礼状が届いたことがある。若い時にご著書を読ませていただいた渡部さんからいただいたその礼状、記念に今でもとってあります。
 

 というわけで、ノートと鉛筆、レポート用紙に水性ボールペン、そして図書館の検索カードと、情報整理のための京大式カードを操り、文化人類学者の先人たちの情報革命に影響されながら、私の学生時代は進んでいったのでございます。





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Last updated  April 19, 2016 11:38:31 PM
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ケンケン@ Re:想像ふくらむ、理想のアメリカ短編小説集(06/26) 先生と同業の末席にいるものですが、 その…
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