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釈迦楽

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June 15, 2016
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カテゴリ:教授の読書日記
 ブライアン・L・ワイス博士が書いた『前世療法』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 ワイス博士は華々しい学歴を持った歴とした精神医学科の先生で、ですから当然、根っからの科学者であるわけなんですが、その博士がある時、キャサリンという名の妙齢の女性の治療を受け持ったことをきっかけに、どうも前世というのは本当にあるらしい、ということに気づき始める。その一部始終を語ったノンフィクションがこの本。

 で、キャサリンという若い女性は、水に対する恐怖、喉が詰まるという恐怖など、いくつかの非合理的な恐怖心を抱えていて、心を病んでいたんですな。で、たまたま病院に勤務していたこともあり、色々なお医者さんと顔見知りだったのですが、そんな顔見知りのお医者さんからことあるごとに「ワイス博士の診察を受けてみ」とアドバイスされ、それで博士の治療を受ける覚悟をする。

 で、ワイス博士は、お医者さんとして、どういう治療法で行くか、時代の流行に従って薬物療法で行くか、可能性のある様々な治療法を模索するのですが、とりあえず催眠をかけて、過去のトラウマを探りだそうとするわけ。

 そしたら、3歳くらいの時に、父親からちょっと性的ないたずらのようなことをされたことが分かり、それが今日の彼女の様々な症状につながっているところがあるらしいということも分かってくる。

 ところが。

 催眠状態のキャサリンは、自分が幼かった頃のことだけでなく、もっと昔のことを語りだすんです。昔も昔、大昔。紀元前の時代のこととかを滔々としゃべりだす。

 そう、キャサリンは自分の前世のことを語っていたわけ。

 で、覚醒しているときのキャサリンの人格や教養から考えて、催眠状態にあるときの彼女の語ることは、とても芝居とは思えないし、前もって仕入れた知識とも思えない。ところがその語ることは非常に具体的かつ正確だったと。

 で、ワイス博士は科学者としてビックリするわけ。確かに、そういうことを語ったり本に書いたりする人はたくさんいるし、科学者の中にもいるけれど、それまでワイス博士はそういう言説については敬して遠ざけるというか、自分にはあまり関係ないこととして興味を持っていなかったんですな。ところが、目の前に、自分の患者として、どう考えても前世の記憶を語る人がいる。これをどう考えるべきか。

 で、その後も治療のためのセッションが続くにつれ、キャサリンには86回の前世があり、その中で特に12、3回の前世は彼女にとって非常に重要なものだったということが分かってくる。そして、実はワイス博士自身も前世でキャサリンと何度か会っていて、その時もキャサリンにとって非常に信頼のできるいい相談役だった。だから、キャサリンは現世でもワイス博士を信頼して、その治療を受ける決意をしていたんですな。そんなことも分かってくる。

 で、キャサリンによると、人はその人生で死ぬと、ふわっと空中に浮かび、光に導かれて中間生に行く。そこは多幸感に満ち溢れた素晴らしいところらしいのですが、やがて次の人生を歩むために下界に降りていくと。で、人間はカルマを、つまり宿題みたいなものをそれぞれ抱えていて、そのカルマを全部支払った時に、輪廻転生を脱して次の次元に行くらしい。で、ある人生でカルマを支払いそこなうと、次の人生は負担が重くなるので、辛い人生になってしまうらしい。

 さらに、中間生にいる時には、マスターと呼ばれる人たちがいて、その人たちから知恵を授かることもある。ワイス博士も、キャサリンを媒介として、マスターたちの深淵な教えに何度か触れている。

 そして、そうした前世への退行催眠による前世療法により、キャサリンは完全に健康を回復すると同時に、彼女の本来持っていた魅力が輝き出し、誰もが皆、キャサリンの近くに居たがるようになってくる。一方、ワイス博士の方も、どんどん人から信頼されるようになり、特に末期の患者がワイス博士の言葉に慰めを得るようになって、その方面の権威のようになってしまうわけ。

 で、博士は、自分は科学者だから、自分が経験したキャサリンとの治療体験に、一点の疑念を抱かないこともないのだけれど、しかし、こういうことが実際にある以上、それはむしろ科学的に追及すべきなのではないかと考え、こんなことを書いたら人に何と言われるか、若干の不安はあったけれど、思い切って本に書いてみました、と。

 とまあ、この本はそんな感じの本でございます。まあね、言ってみれば、科学者が書いた『アウト・オン・ア・リム』ですな。ちなみにこの本は『アウト』を翻訳した山川紘矢・亜希子夫妻の翻訳ですが。


 で、博士もこの本の中で書いているのですが、やっぱり人間の最大の恐怖というのは、自分が死ぬことであって、それを避けるために人は一生あがき続ける。だけど、人間というのは死ぬんじゃなくて、次の人生に生まれ変わるだけだということが確固として分かれば、その恐怖とあがきは不必要なものになり、その分、今の人生を十全に生きることができるのではないかと。しかも、現世のカルマを持ち越したら次の人生が辛くなるということが分かっていれば、それを持ち越さないような生き方、つまりは「良い人間」として生きようというモチベーションにもなる。

 だから、輪廻転生は本当にあるのかを、科学的に実証することは重要なんだと。ま、そういう主張ですな。

 で、本書によれば、実際、輪廻転生の記憶がある人と言うのは、この世に多いんですってね。ただ、それを口にすると、キ印だと思われるので言わないだけで。また、癌などの病気で瀕死の状態にある人ほど、本当に素直に輪廻転生の概念を受け入れ、それを受け入れたことで安らかな最期を迎えることができるらしい。

 ま、それはなんとなくわかるよね。

 とまあ、信じるか信じないかはあなた次第です、的な本ではありますが、著者本人が科学者として、こんなこと信じていいんだろうかと悩みながら本書を書いているという点が、ちょっと類書と違うところかなと。


前世療法 [ ブライアン・L.ワイス ]
価格:606円(税込、送料無料)







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Last updated  June 15, 2016 05:43:46 PM
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nwo69@ Re:野崎訳 vs 村上訳 さて軍配はどちらに?!(12/30) 非常に激しく同意、しかも美味しい翻訳を…
釈迦楽@ Re[1]:母を喪う(10/21) ゆりさんへ  ありがとうございます。今…
ゆりんいたりあ@ Re:母を喪う(10/21) 季節の変わり目はなんだか亡くなる方が 多…
がいと@ Re[2]:山田稔著『もういいか』を読みつつ、日本の郵便システムを憂える(10/10) 釈迦楽さんへ 収支上の都合があるにして…
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