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釈迦楽

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August 19, 2017
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カテゴリ:教授の読書日記
今日は8月19日、明日は父が亡くなって2ヶ月目の命日だなあ・・・。

 しかし、それにしても亡き父の後始末、延々と続いておりまして。昨日は国民年金をストップさせる手続きを税務署に出向いて行い、今日は今日で、共済年金の遺族年金を受け取るための手続き。しかし、これがまたやたらに書類だの証書だのを集めなくてはならず、整理の悪い我が家はもうパニック状態よ。人が亡くなった後の手続きってのは、こんなにも煩雑なのかと。

 で、手続きのためにコピーをとることも多く、父の書斎にあるプリンターを使うのですが、そうするとね、父にパソコンだのプリンターだのの使い方を伝授した時のことなんかが思い出されてね。70歳台後半になってパソコンを覚え始めた父は、やはり一度教えればすんなり理解するという感じではなく、同じことを何度も教えなくてはならなかったのですが、そんな風にいじらしく苦労していた父のことが、パソコンやプリンターに触れる度に思い出されて。やっぱり、生きていてくれたら楽しいのにと。


 さて、先日、東急東横店の夏の大古書市で買って来た本もぼちぼち読んでいるのですが、生江有二さんという人が書いた『竜二 映画に賭けた33歳の生涯』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 1983年に『竜二』という映画が封切られ、脚本と主演を勤めた金子正次さんが、映画公開直後、33歳の若さで亡くなった時のことは、私も何となく覚えていたのですが、この本はその若くして世を去った金子正次さんをめぐるルポでございます。

 金子さんというのは、愛媛県の津和地島というところで生まれ、そういう島出身の若者にありがちな、いずれ世間に出て何か一発でかいことでもやってやろうと機会を狙いつつ、無軌道な悪ガキ時代を過ごすんですな。

 で、彼の夢はスターになること。で、その下準備としてアングラ演劇なんかにも関わるのですが、彼の本心としてはアンダーグラウンドなんかじゃなくて、もっと脚光を浴びるところ、すなわち映画界に進出したいと。

 しかし、ならばとりあえずはどこか劇団に所属してこつこつと、なんていう風には、金子さんは思わないんだなあ。で、もっと手っ取り早くスターになるにはどうすればいいかと考えて、じゃあ自分を主演にした映画を自前で作っちまえと。

 で、ちゃっちゃと脚本を書いてみた。そしたら、すぐに書けたと。多分ね、金子正次という人は天才的な脚本家なのね。脚本なんかすぐに書けちゃうというのだから。

 だけど、脚本書くことも、実はあんまり興味ない。要は、映画で主演できさえすればいいんですな、彼にとっては。無名の新人を主演に据えた脚本なんか、誰も書いてくれないから自分で書くだけで。

 で、アングラ時代からのつてをたよって監督やプロデューサーを自前で用意し、お金も実家をだまくらかしてこしらえて、とにかく『竜二』を撮ってみた。

 金子さんというのは、ヤクザ映画ファンにしてヤクザ気質な人なので、『竜二』も当然ヤクザ映画。ヤクザの若手のホープだった竜二が、稼業に嫌気がさして一旦は堅気になるのだけど、堅気の生活にも結局はなじめなくて、元のヤクザ稼業に逆戻りするまでを描いたもの。組同士の抗争とかじゃなくて、一人のヤクザ者の日常を描いている点で、異色のヤクザ映画と言えましょう。

 だけど、もちろん、素人同然の連中が劇場映画撮ろうっていうのだから、大変なわけ。資金もすぐに底を突くし。監督は自信なくして敵前逃亡するし。だけど、それでもどうにかこうにか最後まで撮影する。それはもう、金子正次の「絶対映画を撮る」という強い意志に全員が突き動かされるようにして。

 で、映画は完成し、試写は意外なまでの好評、そしてついに東映のマーク付きの、本格ロードショーにまでこぎ着ける・・・のですが、その時は既に金子さんの全身にガンが蔓延していて、ついに掴んだスターへの道の半ばで、彼は亡くなってしまう。ま、そういった紆余曲折を、ノンフィクション・ライターの生江さんが描いたのが本書でございます。

 ま、とにかくすごいのは「スターになりたい」っていう金子さんのシンプルで強い思いね。特にいい俳優でもない、特に実績もない、だけどこの強い思いだけで一つのことを成し遂げてしまうという。

 で、映画の中では斜に構えたようなところもあるみたいですが、素顔の金子さんはすごく素直な人で、映画が好評と分かったときの、嬉しさを隠せない様がなんとも魅力的なわけ。そんな可愛い人が、しかし、成功した途端に死ななくてはならなかったなんて、なんとまあ、運命の過酷なことかと。

 ま、そんな本。

 私は『竜二』という映画を見たことがないのですけど、この本を読んだ上は、やはり見たくなりますね。今度名古屋の自宅に戻ったら、レンタルDVDで見てみようかな。



竜二 デジタルリマスター版【Blu-ray】 [ 金子正次 ]


 それにしてもこの本、角川の『野生時代』に連載され、後に単行本になったものらしいですが、『野生時代』の当時の編集長が見城徹氏で、彼が生江氏に金子正次のこと書かないかと誘ったらしいんですな。だからそれが後に「幻冬社アウトロー文庫」になったと。金子正次の事書けば話題になると、見城さんはすぐに見切ったんでしょう。その辺のえげつないまでの嗅覚。それが見城徹なんだろうね。





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Last updated  August 19, 2017 09:32:26 PM
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