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カテゴリ:教授の読書日記
アメリカ出張の時は、いつも何か1、2冊、日本語の本を持って行って、ちょうどアメリカの食事に飽きた時に持参した日本食を涙しながら食べるように、味わいながら読むのを常とするのですが、そんな用途のために今回、持参したうちの1冊が玉村豊男さんの『パンとワインとおしゃべりと』という本。
気軽に読めるごく短い本なので、こちらに到着後に読み始めて、もう読み終わってしまったのですが、やっぱり面白かったです。 書き下ろしもありますが、基本、様々な媒体に提供した食べ物関係のエッセイなので、1話1話は2〜3頁程度のもの。でも、話題の中心は、玉村さんが海外で食した珍しい食べ物の話題なので、食べ物自体のことがいかにも美味しそうに描かれているばかりでなく、その旅先のシチュエーションが面白くて、ついつい読んじゃうんですよね。 で、そんな気軽で面白い話の中にも、時折、「おっ!」と思うような文化的考察も混ざっていたりする。 例えばドイツの豚肉文化の話とか。 ドイツには森がある。広葉樹林ね。で、ドイツ人はこの森の中で豚を飼うと。するってーと豚さんたちは森の豊富な恵みたるドングリをモリモリ食べて太るので、これをクリスマスの頃にとっつかまえてソーセージにしちゃう。これが、ドイツの厳しい冬を乗り越えるための必要不可欠な食料品となるわけ。 で、ヨーロッパはどこでもそういう風習があったのだけれども、フランスやイギリスにはドイツにはない草原があったと。 で、草原があると牛が飼える。そこでフランスやイギリスでは豚を飼う代わりに牛を飼うようになって、牛肉文化が豚肉文化に取って代わってしまったと。 ま、そういう説明を玉村さんはされているのですが、うーん、なるほど!って思いません? そうか、森では豚は飼えるけれども牛は飼えないのか、それでドイツはソーセージか!って。 あとね、魚を直火で焼く文化ってのは、日本を除くと他にはほとんど見当たらない、とかね。 ふーむ、そうか。あの何でも食べる中国人ですら、魚は蒸すか揚げるものであって、直火で焼くものではないし、西洋で魚を焼くと言えばオーブンで間接的に焼くしかないか・・・。そういえば、そうだなあ・・・。 とまあ、そんな感じで、世界の味を現地で味わいながら、その味を作り上げた文化について考えると、色々なことが見えてくる。この本は、その意味で、味と文化を両方味わえるお得な本ということが出来ましょう。 ということで、この本、教授のおすすめ!です。 これこれ! ↓ パンとワインとおしゃべりと (中公文庫) [ 玉村豊男 ] しかし、イギリスの食文化を考察して・・・と言うより、「まずい」と悪評高いイギリス料理を弁護してベストセラーとなった林望さんの『イギリスはおいしい』にしても、またフランスを中心とし、東欧や中東あたりまで視野に入れつつ、そっち系の食べ物文化を縦横に語れる玉村豊男さんにしても、語る素材が豊富でうらやましいなと。 例えば、じゃあ私にアメリカ料理が語れるかというと・・・どうなんだろう? っていうか、アメリカ料理って何? ハンバーガーとかホットドッグとか? それじゃ月並み過ぎる。まあ、カリフォルニアだとメキシカン料理が色々あるけれど、あれはアメリカ料理なのか? 鮨が変化したカリフォルニア・ロール・・・そんなもん語ってもつまらなそうだし。 ひょっとして、南部はミシシッピ河系のケイジャン料理とかだと、ちょっとはアメリカ固有の料理になるのかしら? だけど、あれは南部料理であって、アメリカ料理と言えるのか? どうもアメリカという国は広大すぎて、また歴史が浅すぎて、これがアメリカ料理というのが確立していないような・・・いや、そう決めつけることが月並みなのかなあ。こういう決めつけを裏返して、「アメリカはおいしい」的な本を書けばいいのか? しかし「アメリカで食べるコーンフレークは旨い!」とか「アメリカのハイウェイ沿いのダイナーで飲む薄いコーヒーは旨い!」とか書いても、はあ?ってな感じになっちゃうよなあ・・・。 林望さんや玉村豊男さんのアメリカ・バージョンを私が狙ったとしても、不発に終わりそうな気配でございます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 26, 2017 03:31:54 PM
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