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カテゴリ:教授の読書日記
ジェラルド・G・ジャンポルスキーという人の書いた『愛とは、怖れを手ばなすこと』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。
これ、1979年に出版され、世界で400万部が売れたと言われる自己啓発本でありまして、著者のジャンポルスキーさんは医者・・・というか、心理療法士というのかな。学生時代は失読症に悩み、学生時代には作文の授業で苦労し、先生から「君が将来、どういう仕事に就くか知らんが、本だけは書くな」と言われたそうですが、それが400万部売れる本を書いちゃったというところが面白いところで。 で、内容はと言いますと、一言で言えば、「許しなさい」ということですね。 ジャンポルスキーさんに言わせると、「愛」の対立概念は「憎しみ」ではなく「怖れ」であると。で、世界ってのは「愛」か「怖れ」しかないので、そのどっちを選ぶかによって変わってくる。で、そのどちらを選ぶかは、あなた次第。選択は、つねにあなたに掛かっているわけ。 で、当然のことながら「愛」を選ぶと、とってもいいよと。 じゃあ、「愛」を選択するってどういうことか、と言いますと、それはね、「許す」ってことだと、ジャンポルさんは言います。ただし、ジャンポルさんの言う「許す」というのは、犯罪者を放置する、という意味ではありません。そうじゃなくて、「過去の辛い思いを手ばなす」ってこと。 他人にひどいことをされた、あるいは自分がひどいことをしてしまった。普通、人はそういう過去のことを引きずって悩むわけですけれども、そういうものを全部手ばなしちゃう。で、手ばなすことによって過去から解放され、今を充足して生きることが出来るようになる。それが、愛によって救われるということなわけね。 逆に、それを手ばなさなければ、人は常に自分に敵対する外側世界と対立して生きなければならなくなる。「あの野郎、俺にひどいことしやがって。絶対ゆるさんぞ」という苦しみの中で生き続けることになる。これは苦しい。 だから、自分の自由意志で「愛」を選択し、過去のことを手ばなして、すべて許しなさいと。 愛を選ぶということは、それは自分の選択によるのであって、内側からの改革ですな。で、そうやって内側を改革すると、世界が自分にとって敵対するものではなくなる。つまり、外側の世界が愛の世界になるか、怖れの世界になるかは、自分の選択ひとつだと。その意味で、外側の世界ってのは、自分とは無関係に客観的に存在しているのではなく、自分自身の心のスクリーンとして存在しているのであって、それを変えるのは自分自身なんだよと。 私たちの心が「原因」で、世界はその「結果」。決して、その逆ではないんだよと。 その上、この世界には「欠乏」というものはなく、何もかも有り余るほどあるのだから、人と競って何かを奪いあう必要なんかないし、また世界は一つのものであり、自分も他人もすべてつながっているので、他人を傷つけること=自分を傷つけることになるのだから、そんなことをするメリットなんて一つもない。 だから、「愛」を選びなさい、そして過去をすべて手放し、許し、今を生きなさいと。 ま、ジャンポルスキーさんの本書におけるメッセージというのは、そんな感じ。 まあ、そういう風にまとめると、「世界は一つのものから成る」「欠乏はない」「自分が変われば世界は変わる」「すべては自分の選択にかかっている」というような言説から構成されているのであって、自己啓発思想の基本はここにすべて揃っているかなと。 だ・け・ど。 難しいよね、許すっていうのは。誰にとっても難しいだろうし、私には超難しい。私は、本当にめったに本気で怒らない人ではあるのですけど、本当に怒った場合は「絶対許さじ」の構えで怒るからね。 だけど、確かに怒り続ける方が苦しいのは苦しい。いっそ許しちまって、過去のことから自分を解放しちまった方がよっぽど自分のためになるんでしょう。 それはそうなんだけれども、ですよ。 だけどまあ、自分が菩薩様みたいになって、自分の中から「愛」とやらがこんこんと溢れ出ているようなところを想像して、他人も自分も許し、過去から解放されて、そこに愛の世界を現出させたら、きっと素晴らしいんだろうなと、思うことは思う。 その思うことを実行に移せるか。そこがね。 ま、とにかく、少しでもそういうことを私に考えさせたのだから、この本は良い本だということになるのでしょう。 これこれ! ↓ 愛とは、怖れを手ばなすこと 今をよりよく生きるために [ ジェラルド・G.ジャンポルスキ ] ところで、この本は、自己啓発文学史の観点から言いますと、「ACIM」の系譜の中から出てきたものでございます。「ACIM」というのは、「A Course in Miracles」の略で、「奇跡のコース」と訳されます。ま、自己啓発セミナーですわな。 で、その「奇跡のコース」というのは、どういうのかと申しますと、要するにフロイト心理学系のアレで、ヘレン・シャックマン、ウィリアム・セットフォード、ケネス・ワプニックの三名が協力して作り上げた「エゴから解放されるための心理学アプローチ」なんだとか。ま、確かに言われてみれば「自分を苦しめている過去から解放される」ってんだから、フロイトっぽいよね。 で、このACIMの流れの中から出てきたのが本書『愛とは、怖れを手ばなすこと』であり、マリアン・ウィリアムソンの『愛への帰還』であり、その他、ディーパック・チョプラとか、エリザベス・キューブラー・ロスとか、エックハルト・トールとか、『神との対話』で名高いニール・ドナルド・ウォルシュとか、『神の使者』で知られるゲイリー・レナードとか、そういう連中の言説につながっていくと。 その辺まで行くと大分神がかっちゃうんだけど、そもそもACIMを作った連中からして、「許し」という概念をイエス・キリストからもらってきた、とか言っているわけだし。フロイト+神さま+セミナー、イコール・・・みたいな感じでしょうか。 ま、とにかく、そっち系の自己啓発本として、ジャンポル君の本、覚えておきましょうかね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 6, 2017 05:45:38 PM
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