5957163 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
July 28, 2018
XML
カテゴリ:教授の読書日記
ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマンの愛弟子、バーバラ・フレドリクソンの書いた『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(原題:Positivity, 2009)を読みましたので、心覚えをつけておきましょう。

 「女性向け自己啓発本」の現在地を知るべく、女性著者の手になる自己啓発本を読み漁っているのですけれども、この本もそんな一冊。ポジティブ心理学の本を読むと、大概、バーバラ・フレドリクソンの名前が出てくるので、どんなもんかなと思って読んでみたわけ。

 で、その内容ですが、なにせ「ポジティブ心理学」自体が20世紀ももうすぐ終わるという時期に打ち出された概念ですから、2009年に本書が書かれた頃には、まだ出発してから10年程しか経っていないという状況なわけですよ。だから本書でも、「なぜポジティブ心理学なのか」的な前置きから入るんですな。つまり、「ポジティブな感情は何の役に立つのか?」という辺りから話が始まる。

 「ネガティブな感情は何の役に立つのか?」という問いには、簡単に答えられます。例えば、原始時代、人間がライオンみたいな野生動物に襲われたとお考えください。もちろん、「やばいっ!」と思うわけですよね。で、とたんに「怖れ」という感情に火がつき、逃走に備える。あるいは「こんなところで死んでたまるか」という感情に火が付き、闘争に備える。あるいはライオンに対する「憎悪」が、そもそもライオンを避ける行動を引き起こす。

 かくして「怖れ」「怒り」「憎悪」といったネガティブな感情は、人間が生き延びることを助け、そうやって助かった人間が増え、その感情を次世代につないでいくことで、今日の人間が存在していると。

 だから、ネガティブな感情が有意義だ、というのは、すごく分かりやすいわけね。それに、このことは、「感情」というものが自然淘汰によって継承され、感情(精神的なもの)が身体的変化(例えばアドレナリンの分泌など)に影響を及ぼす理由を明らかにしたという点で、価値のあることだった。

 で、この調子なら、「ポジティブな感情」のメリットだって簡単に見つかるだろうと思ったのですが・・・案外そうでもなかったんですな。原始人の子供が楽しそうに遊んでいたとして、その楽しい感情が一体彼の何に役立っているのか全然分からないわけ。「怖れ→逃走→生存」といったような直接的な因果関係が思いつかなかったんですな。

 で、バーバラさんが色々考えたり、実験したりした揚句、この疑問に対する答えとして打ち出したのが「拡張=形成理論」という奴。

 ネガティブな感情が引き起こす行動、例えば危ない状況に陥ったから逃げる、ということを考えてみると良く分かるのだけど、この場合の行動は「逃げる」の一択、あるいは「反撃する」を含めた二択ですよね。つまり、選択肢は極端に狭いわけだ。というか、選択肢を狭めることで、生存の可能性をアップさせているわけね。

 だけど、ポジティブな感情は、これとは逆に、選択肢の幅を広げる(拡張する)方向に働くのではないかと、バーバラさんは考えたわけ。

 例えば、サルとか地リスの社会を観察すると分かるのですが、それらの動物が子供の時に一緒に遊んだりするわけですな。で、「楽しい」という感情を共有する。すると、大人になって敵に襲われたりしたときに、互いに助け合うらしいんですよ。つまり、DNA的には何のつながりもないのに、相手の危機を救う方向の行動に出たりする。これは「楽しかった子供時代の思い出」が、血縁のない他の個体を救うという、本人にとってはあまりメリットのない行動に駆り立て、そのことによって集団として生存率を高めることに成功していると。

 だから、ポジティブな感情の影響の視野は広く、またスパンは長いわけね。そして、本能にはなかった行動様式を形成している。これがバーバラさんの「形成=拡張理論」ね。

 で、ポジティブな感情が人の役に立つことは分かったとして、じゃあ、実際にはどういう風に機能しているのか。

 ま、人間の生活ですから、日々、いいこともあれば、悪いこともある。ポジティブな感情を抱けるような出来事もあれば、ネガティブな感情を抱かざるを得ないこともある。これはもう、避けられないわけですな。

 問題は、むしろ両者の比率なんです。一日のうち、ポジティブな感情を抱いたケースと、ネガティブな感情を抱いたケース、どちらが多かったか、というその比率。

 で、もちろん、ネガティブなことが多ければ落ち込み、ポイティブなことが多ければルンルンなわけですけれども、落ち込むかルンルンになるかには、境目(ティッピング・ポイント)があることがバーバラさん(正確には、バーバラさんとマルシャル・ロサダという数学者との共同研究)により明らかになったと。

 その比率が、「3対1」だったのね。

 つまり、ネガティブなこと1個につき、ポジティブなことが3個もしくはそれ以上あった場合、人間の感情は上昇気流に乗り、どんどん積極的になれる。対して、ネガティブなこと1個につき、ポジティブなことが3個以下、たとえば1個だったりすると、人間は下降気流に巻き込まれ、どんどん落ち込んで行って何をやるにもやる気が出なくなる。それどころか、さらに落ちて鬱になると。

 重要なのは、ネガティブな感情は非常に強いので、1個のネガティブに対してポジティブ3個以上じゃないと太刀打ちできないということ。これがいわゆる「ネガティブ・バイアス」という奴。

 だけど、毎日毎日、ネガティブなことの3倍のポジティブなことなんて起こる訳ないじゃん! と思ったあなた! あなたは正しいけれども、正しくない。

 つまりね、何をネガティブと考え、何をポジティブと考えるかは、あなた次第なの。あなたがポジティブに捉えようと心に決め、それを選択すれば、それはポジティブなものに成り得る。上司に叱られたことは、そのままではネガティブな経験だけど、それを「自分を成長させる機会が来たーーーーっ!」と捉えればポジティブになるわけよ。

 あとね、ネガティブな感情をすべてなくせばいいというものでもなくて、例えば不当なことに対する真っ当な怒り、なんてのは、無くしたらいかんものなわけですよ。また、失敗して悔しいと思わなかったら、次は頑張ろうというファイトも出てこない。

 だから、ネガティブな感情の中でも悪い性質のもの、例えば「ひがみ」とか「ねたみ」とか「萎縮」とか「嫌悪」とか「侮蔑」とか、そういうのをなるべく減らすよう心掛け、一方、ポジティブに物事を捉えることを心がければ、3対1の比率に近づけることは可能だと。まあ、バーバラさんはそう主張しております。

 実際、バーバラさんは、例の「9.11」のテロの時、知人の葬式に出るために家族と離れたところにいたんですな。それで、もちろん飛行機は止まってますから、飛行機で帰るわけにはいかない。そこで、苦労して鉄道を使って、17時間かけて帰路につくのですけれども、その鉄道の中で、見ず知らずの人たちとテロについて語り合い、それぞれの不安を吐露し合い、慰めあったと。その乗客間の一体感というのは、ものすごくポジティブなものだった、というのですな。あの空前の悲しい出来事のさ中ですら、ポジティブな側面はあったと。そしてそのポイティブな感情が、立ち直り(レジリエンス)の原動力になると。

 で、そのネガティブな感情の抑え方ですが、本書の中でバーバラさんが提唱しておられる方法が幾つかあって、例えば「ネガティブな感情に反論する」というやり方。これは「認知行動療法」と呼ばれるものだそうですが、例えば「もうダメだ! 身の破滅だ!」というネガティブな感情が起こったら、即、冷静に反論する。「本当に、これができなかったことが、身の破滅を引き起こすのか? そもそも身の破滅って、何?」 すると、確かに身の破滅ほどの大事にはならないだろうな、ということが分かり、必要以上にネガティブに反応していたことが分かると。

 あと、「マインドフルネス」も、ネガティブ感情に対処するための有効な方策でありまして。西欧の学者で、最初に仏教的修業の中からマインドフルネスという心理学上の手法を編み出したのは、ジョン・カバット・ジンという人だそうで、1980年代のことだそうですが、とにかく、今自分がやっていることに精神を集中させる(もしくは、良い悪いという価値判断をせず、自分が今何を考え何を感じているかを観察し、それを丸ごと受け容れる)というマインドフルネスのやり方も、相当、いいらしい。例えば、明日の会議でのプレゼンのことを気に病み、失敗したところを想像して苦しむよりも、「今は明日のことを考えず、寝ることに集中しよう」と考えてぐっすり寝ちまった方が、色々上手く行きそうですよね。

 その他、自分の一日の行動を記録して、どういう時にネガティブな感情が起ったか、それは繰り返すものかを調べ、例えば通勤時間にしばしばネガティブな思いにとらわれるのであれば、その時間を心地よく過ごす方策を考える、なんてのもいい。

 あと、自分の周囲の友人・知人・同僚などに、自分の良い点をアンケートして回って、自分の得意なことは何かを知り、その得意なことを活かすようなことを考えるとか。

 あるいは、これはソニア・リュボミスキーの提案していることだそうですが、定期的に「親切デー」を作り、その日には他人に親切にすることを心掛けるとか(他人から親切にされることもポジティブな感情を生み出すが、他人に親切にすることもまた、それ以上にポジティブな感情を生み出す)。
 
 あと、もちろん瞑想ね。瞑想っていうのは、万能ですな。

 とまあ、色々手法はあるわけですけれども、そういうノウハウを駆使し、ネガティブな感情をなるべく抑え、ポジティブな感情をなるべく増やし、その比率をティッピング・ポイントである「3:1」以上になるように心がければ、上昇気流に乗れますよと。ま、それが本書の謂わんとしているところでございます。

 ま、学者さんの書いたものですから、華やかさはないんですけれども、その分、科学的データに裏付けられた知識が得られますので、悪い本じゃないですよ。特に、「3:1」というリアルな比率を打ち出したところは、評価できるのではないでしょうか。これはすなわち、「悪いことはどうしたって起こるよ」という前提の上で、それでもポジティブの比率を挙げて、幸せになれるという可能性を提示したわけですから、リアリティがあります。

 だけど、まあ、ポジティブ心理学ものも大分読んだので、この辺りで打ち止めにしようかな。どれ読んでも、大体同じこと書いてあるしね(爆!)。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  July 28, 2018 01:00:16 PM
コメント(0) | コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事


Calendar

Headline News

Favorite Blog

京都大学グループの… AZURE702さん

冬に少し逆戻り ゆりんいたりあさん

YAMAKOのアサ… YAMAKO(NAOKO)さん
まるとるっちのマル… まるとるっちさん
Professor Rokku の… Rokkuさん

Comments

釈迦楽@ Re[3]:クタクタの誕生日(04/09) がいとさんへ  いやいや、あの頃が僕に…
がいと@ Re[2]:クタクタの誕生日(04/09) せんせい おぉ、そんなこともありました…
釈迦楽@ Re[1]:クタクタの誕生日(04/09) がいとさんへ  昔、君が正門前のアパー…
がいと@ Re:クタクタの誕生日(04/09) せんせい その近くです! 魚沼から半分近…
釈迦楽@ Re[1]:クタクタの誕生日(04/09) よびなみさんへ  ありがとうございまー…

Archives


© Rakuten Group, Inc.