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釈迦楽

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August 27, 2018
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カテゴリ:教授の読書日記
先日、母と箱根にドライブに行った時、玉村豊男ライフアート・ミュージアムで玉村さんの『絵を描く日常』という本を買ったのですが、それを読了したので、心覚えをつけておきましょう。

 玉村さんは、基本、エッセイストですが、その傍ら絵も描かれる。玉村さんのお父さんは日本画家の玉村方久斗ですから、素質という点ではもちろん、絵を画いたとしても何の不思議もないわけですが、それにしても一体どういうわけで二足の草鞋を履くようになったのか、私としても興味津々でありまして、そんなわけでこの本を購入に至った次第。

 で、この本に拠りますと、そもそも玉村さんは子供の時から絵を描くのがお好きで、特に高校時代などは油絵に熱中され、芸大に行こうかと思っていた時期もあったらしい。しかし、結局、東大に進まれ、その後フランスに留学、そこからツアコンの走りみたいなことをし出して、やがてエッセイストになってしまわれたと。

 で、絵のことはずっと忘れていたのだけれども、41歳の時に、それこそ漱石の修善寺の大患じゃないですけど、それまでの不摂生が祟ってか大量吐血をされ、その時の大量輸血が災いして肝炎に罹患されたんですな。で、体力もすっかり落ちて、それまでの生活慣習を大幅に見直さなければならなくなった。

 で、その療養中の無聊を慰めるために、ふと、そう言えば昔、絵をやたら描いていた時期があったことなども思い出して、もう一度絵筆を執ってみようと考えた。

 そして昔取った杵柄とばかり、久しぶりに油絵を描いてみたところ、どうもうまく行かない。あれ、こんなはずでは、と焦りながら、とにかく絵を描くことに熱中したんですな。

 そしたら、病気のことが頭から追い出されてしまって、返って健康になってきたと。

 しかも試行錯誤しながらキャンバスと格闘しているうちに大分勘が戻ってきて、それなりに自分の思うような絵を描くことが出来るようになり、また油絵の他にも色々試している内に、水彩画の魅力にもはまってきた。

 で、そんなことをしているうちに段々、自分のスタイルも定まってきたわけですが、そんな感じでガンガン描きまくっているうちにどんどん絵がたまり、また彼が絵を描いていることが少しずつ世間に認知されるようになって、ついに画廊から声が掛かるようになる。そして、ついには某プロデューサーと契約を結んで、自分の描いた絵を売るというところまできた。つまり、図らずもプロの絵描きになってしまったんですな。

 でも最初のうちは絵を売るということに相当、抵抗があったようです。というのも、絵を売るというのは、要するに絵を手放すということであって、自分でもよく描けたと思っている絵と離ればなれになってしまうのは相当辛いことなんですと。ま、そりゃそうでしょうなあ。

 だけど、それがプロだ、ということに玉村さんは気付いていくわけ。自分の絵をずっと手元にとっておきたいなどと甘いことを考えるのはアマチュアだと。

 その一方、原画を残しておいて、それを版画に直し、版画の方を売るという知恵もついてくる。何せ今は「ジクレー」という方法があって、原画をスキャンしてインクジェットで紙に転写する、なんてことが簡単に出来るようになったので、複製としての版画を作るのは簡単なんですって。というわけで、現代の技術の進歩の恩恵を受けながら、版画を売るということも始められるんですな。そしてその延長で、例えば玉村さんが描いた野菜などの絵をお皿に転写した、玉村さんブランドの食器類なども販売することも始められた。

 一方、一応はプロの画家として画廊で絵を売るようになると、絵を見に来る、あるいは絵を買いに来るお客さんとのやりとりとかも発生するわけで、これがまたなかなか複雑らしいんですな。

 たとえば玉村さんの画業を、軽く見る人というのが必ずいる。だから、画廊などでお客さんの相手をしていると、お客さんから「私も絵を描くのですが、玉村さんはどこのメーカーの絵の具を使われているんですか?」などとしばしば尋ねられるというのです。玉村さん曰く、これがもし本当に有名な画家だったら、お客さんはそういうことは尋ねないだろうと。

 あと、画廊の人であっても「私も一応、芸大を出ているので、いつか玉村さんみたいに時間にゆとりができたら、私も絵を描いてみたいです」などと言ってくるのがいる。玉村さんとしては、「冗談じゃない、俺は暇つぶしに絵を描いているんじゃないぞ!」と言いたくもなる。

 ま、そんなストレスもあると。

 だけど、玉村さんの絵を見て、「このくらいの絵なら、私にも描けそうだ」と思ってくれる人たちが居るのであれば、それはそれでいいのかな、と思うようにもなったとのこと。

 ま、そんなこんなはありますけれども、とにかっくこのような次第で、41歳にして絵を描くことを再開してから20年、エッセイストにして画家、ワイナリー経営者にして自分がデザインしたキッチンウェアなども販売する個人多角経営の玉村さんのスタイルが完成するまでの来し方を綴ったのが、本書『絵を描く日常』というわけ。

 で、本書にはところどころに玉村さんの描かれた絵が掲載されていて、それを眺めるのも楽しいし、私はかなり楽しみながら読了することができました。絵のことを語ったエッセイとしては初めてのものだそうですけど、エッセイストとしての玉村さんと画家としての玉村さん、両方に興味のあるムキにはおすすめの本でございます。

これこれ!
 ↓

絵を描く日常 [ 玉村豊男 ]





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Last updated  August 27, 2018 02:40:21 PM
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ケンケン@ Re:想像ふくらむ、理想のアメリカ短編小説集(06/26) 先生と同業の末席にいるものですが、 その…
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