|
カテゴリ:教授の読書日記
斎藤美奈子さんが書いた『日本の同時代小説』という本を読みました。
この本、斎藤さんご自身が書いた「はじめに」によると、明治以来の日本の近代小説の流れを簡単に知ろうと思ったら、中村光夫の『日本の近代小説』と『日本の現代小説』(共に岩波新書)を読むのが簡便でよろしいのだが、いかんせん、この二著は1960年代の話で終ってしまう。しかし、今やそこから50年も経ったわけだから、この50年間の日本の小説の流れを、そろそろ誰かが概観しないといけないのではないか・・・ってな意図で書かれたと。 まあ、そうなりますと、私自身が生まれた頃から今日までの日本の小説を概観するということになりますわなあ。そういう本を読んだら、私も何か勉強になるかも。 と、思ったものだから、つい、読んでしまったわけよ。 で、読んだ感想なんですけど、うーん、驚いたね。 つまりね、私が生まれてこの方、日ノ本の国で書かれた数々の小説の中で、私が「読みたいな~」って思うものは、ほぼ一冊もないんだ、ということが判明した、という意味で。 特に2000年代から先がひどいよ。ケータイ小説とか全然読みたくないし、架空戦争小説とか、テロ小説とか、ディストピア小説とか、まったく読みたくない。このあたりになると、変な設定の小説、人がイカと結婚する、といったような小説、やたらに人が殺されたりする小説しかないのか、って感じ。 普通の小説ってないの? 日本には? 私の日本の小説観って、谷崎とか芥川あたりで止まっているんだけど、それで正解なんだ、ってのがよく分かった。 そう言えば最近、グラミー賞の授賞式を見ていて、もう、私が知っているのは、おばあちゃんになったダイアナ・ロスくらいしかいないじゃないかと思いましたけど、アメリカのロック・ポップ史に関しても、私はほぼ1980年代までで止まっている。で、そこから先のものにはあまり興味が持てず、一生、1950年代半ばから1980年代までを無限ループする懐メロだけでいいなと思っていますけど、小説の世界に関しても、「懐メロ」ならぬ「懐小説」だけでいいのかな。 思うんだけど、「懐メロ」番組ってのがあって、年寄りには人気があるんだから、小説の世界でも、「懐小説」だけを掲載する文学雑誌とかあったら、案外、じいさんたちに売れたりするんじゃない? 最新号に載っていた露伴の『五重塔』はやっぱりいいなあ、みたいな。 それはともかく、『日本の同時代小説』という本を書くに当たって、斎藤美奈子さんは一体、何冊の同時代小説を読破したのか。50年分の通史を一人で書くのだから、大変だよね! それとも、日本文学の専門家なら、そんなこと当たり前なのかしら。 で、私も自己啓発本の研究をしている以上、同じような本を書けなくてはいかんのかな。そうなると、こちらは150年くらいの歴史があるから、もっと大変だよな・・・。ま、ワタクシの場合、ずるいからもっと省エネで行くと思いますが。 とまあ、そっちの方が読んでいて気になっちゃった。 とにかく、日本の現代小説って、ほとんど訳が分からない、そら恐ろしい世界なんだなというのは実感できる本でございます。興味のある方は是非。 日本の同時代小説 (岩波新書) [ 斎藤美奈子 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 14, 2019 12:04:10 AM
コメント(0) | コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事
|
|