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釈迦楽

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October 19, 2020
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カテゴリ:教授の読書日記
ウィリアム・バロウズの『ジャンキー』(原題:Junkie, 1953)という小説、学生の頃に一度読んだことがあるのですが、内容を大分忘れていたので、ちょいと再読してみました。

 まあ・・・最初に読んだ時も、今回改めて読み直してみても思うことは一緒で・・・つまんないなと(爆!)。

 なんだろう、こういう堕ちていく人間の姿を読んでいいと思える文学者って、それなりに居るのだろうと思いますけど、私は全然ダメなのね。救いようのない人間の話にまるで興味が持てない。私は人間ってのは、基本的に上昇志向(偉くなりたいという意味ではなく、出来る限り良い人間になりたいという願望)があるものだと思っているし、自分自身がそうなので、そういう人間に対してはリアリティを感じるんだけど、その逆のタイプの人間って、私にはまったくリアリティがないのね。分からないから。で、分からない人間の話を読んでもつまらないんだよね。

 で、バロウズの『ジャンキー』は、バロウズ自身(作中では「ウィリアム・リー」となっていて、この作品自体もウィリアム・リー名義で発表された)の麻薬中毒時代のドキュメンタリーみたいな感じで、何一つ不自由のない裕福な中産階級に生まれて、大学とかも行ってみたけど、なんかつまらないし、周りにも面白い人間がいない。それで、興味本位で麻薬に手を出してみたら、どんどん深みにはまってジャンキー(薬中)になり、やがてクスリを手に入れるために自ら売人になってみたり、検挙された後は保釈中であるにも関わらずメキシコに逃亡してメキシコで同じような生活をしてみたり・・・っていうようなことがダラダラ、ダラダラ書いてある。

 だから、なるほどクスリ漬けになるってのはこういうことか、というのはよく分かるのだけど、それはつまり愚行に継ぐ愚行を延々読まされるわけだから、辟易するばかりで何の面白みもない。クスリ漬けのどん底から立ち直っていい人間になりましたでもいいし、逆に麻薬の世界でのし上がってマフィアの大ボスになりました、でもいいんだけど、そういう上昇志向の要素が入る展開になるならともかく、ただただ麻薬をやっては治療をしようと試み、治療が成功した途端また麻薬漬けの生活に舞い戻るという、その単調な繰り返しだけだから飽き飽きしちゃう。ラジオ体操でも乾布摩擦でも水垢離でもスムージー飲むのでもいいから、さっさと健康になってクスリと縁を切れって話でしょ。それなのにいつまでもいつまでも懲りずに麻薬なんかやって馬鹿みたい。

 じゃ、なんでその面白くないと分かっている小説を再読したかと言いますと、ちょっと確認したいところがあったから。

 それはね、バロウズのような1950年代のビートニクと、その後に来るヒッピーと、同じように麻薬に惑溺するようになる連中の間に世代間の差はあるのかっていう、そこが知りたかったから。

 で、その部分だけに注意して再読したんですけど、やっぱり多少はありますな。違いが。

 一つは、使っている麻薬が違う。ビートニクは、〇リファナあたりから始まって、〇ルヒネに行くのが正道(何が正道だよ!)で、〇ルヒネが手に入らない時に〇デインに行ったりするけれども、基本は〇ルヒネ。〇カインは一瞬で終わってしまうので、あまり習慣性がなく、その分、面白味もないらしい。(ちなみに、〇ロインの話は、この作品の中にはあまり出てこない)。

 で、こういう麻薬は、要するに、うっとりとさせる作用があるんですな。で、そのうっとりを求めて中毒になってしまう。

 ところがヒッピーは、そういうのではなく、ペイヨーテのような「認識の変化を楽しむ系」の麻薬を嗜好する。実際、『ジャンキー』でも、そうした若いヒッピーたちの間の流行を聞きつけた主人公が、ペイヨーテを試す話も出てくるのですが、それによると、このサボテンから取れる麻薬を摂取すると、見るものすべて、それが人間であろうと銀行の建物であろうと、すべてがサボテンに見えてくるらしい。とはいえ、主人公はどうもペイヨーテが自分の嗜好・体質には合わないような感じを受けたらしく、〇ルヒネからそっちに乗り換えようというアクションは起こさない。もっとも、噂でペイヨーテよりもさらに精神感応力を高め、テレパシーを操れるようになると言われている「ヤーヘ」なるものの存在を知り、ひょっとしてそれが答えなんじゃないかと、メキシコからコロンビアを目指すところで、この小説は終わるんですけどね。

 あとちょっと面白いのは、ペイヨーテやヤーヘを求めてメキシコにやってくる若いヒッピーの連中から、『ジャンキー』の主人公が「ヒッピー用語」を教えてもらうというクダリ。「〇リファナ」は最近では「ポット」って言うんだとか、「ダメになること」は「ツイステッド」、いいことはすべて「クール」で、良くないことは「アンクール」っていうんだ、なんてことを主人公は、ヒッピーの若者たちから聞かされる。そういう言葉遣いの違いも、ビートニクとヒッピーのジェネレーション・ギャップなわけですな。

 ま、この小説を再読してみて、私に役立つ情報って、そんな感じかな。でも、こういう些末なことも、集めていってこそ意味があるからね。


 ということで、私のような特別なケースは別にして、果たして今時の人があらためてこの麻薬小説を読んで何か得るところがあるかどうか分かりませんが、自堕落小説のお好きな方には面白いのかも知れません。そういうものとして、一つ。


これこれ!
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 ところで、こんな小説を書くほど麻薬に惑溺したバロウズって、1914年生まれの1997年没だから、83歳まで長生きしているのね。対するにそれを訳した鮎川信夫は1920年生まれの1986年没と、こちらは68歳で亡くなっている。

 ふうむ。さてはバロウズ、この小説書き終わってからスムージー飲んで乾布摩擦とラジオ体操でもやったのかな?





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Last updated  October 19, 2020 01:10:05 PM
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