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カテゴリ:教授の読書日記
今日は教授会があったのですが、今や教授会は政府の意向で大学の意思決定の場ではなくなり、単に学長(執行部)が一方的に報告をする場になってしまいまして。何か発言したって、「ご意見として承っておきます」とあしらわれるだけなので、もう、誰も何も発言すらしなくなってしまった。以前の教授会では、数時間にわたって激しい討論が繰り返されたこともありましたが、今は1時間もしないで終わってしまう。
というわけで、今や有名無実化した教授会に参加する実質的な意味はなくなったので、私はテキトーに本を持ち込んで1時間弱の読書時間にすることにしております。 で、今日、教授会に行く前に研究室の書棚を見渡して、何を読もうかと思っていた時、目についたのが坪内祐三氏の『ストリートワイズ』という文庫本。よし、これなら1時間、暇をつぶすにはもってこいだ。 ま、そんな気楽な読書だったので、1ページ目から読まず、適当に開いた頁から読み始めたのですが、そうやって適当に開いた頁に、こんなことが書いてありました。 「ところで私は、都内のある女子短大で週二コマ、出版文化史についての授業を受け持っている。ジャーナリズム専攻の学生たちであるから、(中略)ベストセラーには関心が強い。しかし関心が強いといっても、今時の学生たちのほとんどがそうであるように、非常に無知である。この場合の無知とは、知識や教養がないというのではなく(それは、もちろん、そうなのだが)、「雑学」的に無知だということだ。自分が生まれる前のことは何も知らない。生まれてから十年ぐらいのことも何も知らない。いや物心ついたあとも、自分の身のまわり半径五十センチぐらいの関心事しか覚えていない。」(242-243頁) どうよ。昨日、このブログに書いたことと、まーーーったくおんなじことが書いてある。ほんと、その通りなのよね~。 で、そういう無知・無関心な世代が台頭するにつれ、ベストセラーというものから日本社会の今を占うことが難しくなってきた、という話になり、それでも強いてそこから世相を読み取るとすると・・・という話になっていくんですが、なかなか面白い考察でした。 ま、その他、あちこち拾い読みしていたんですけど、この本全体を通じての基調音として、ベストセラーから世相を斬るという側面があるんですな。で、そんな話の流れの中で、この時代にベストセラーとなった野口悠紀雄氏の『「超」勉強法』のことに触れ、こういう本が売れるということは、今、新たな教養の在り方を求める人々がいるのだろうと分析しつつ、しかし、自分としてはこの手のマニュアル本など、読まなくても内容が分かるし、自分が本当の教養と思うものはこういう本の中にはない、というような趣旨のことを書いている。 で、その後日談として、上のようなことを書いたら、「読まなくても内容が分かるとは失礼な!」という趣旨の野口悠紀雄氏からの「公開抗議」が来た、という話が続いて、そんなの相手にするつもりはなかったけど、野口氏があまりしつこいので敢えて答えるが・・・という話になる。このあたりの話も面白かったんですけど、実はこの辺りのことを書いていた時に、坪内さんは自分が「評論家」になったという自覚を持ったというあとがきを読んで、なるほどなあと。 というわけで、まだごく一部しか読んでいないんですけど、内容的に私には興味のあることばかりで、これはGWを前にして、我ながら、なかなかいい本を本棚から掘り出したなと。 そう、真の読書家にとって、自分の本棚とは、読んだ本を置いておく場所ではなく、読んでない本を掘り出す場なのよ。これぞ、積読のメリットでありましてね。 ま、とにかく、坪内さんの本、おすすめです。 これこれ! ↓ 送料無料【中古】ストリートワイズ ええっ?! 『ストリートワイズ』って、坪内さんの代表作の一つじゃないかと思うのだけど、もう絶版になっているの??? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 29, 2021 01:25:09 AM
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