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カテゴリ:教授の読書日記
エーリッヒ・フォン・デニケンが書いた『未来の記憶』(原題:Erinnerungen An Die Zukunft, 1968)を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。
先日、グラハム・ハンコックの『神々の指紋』という本のことを本ブログに書きましたが、フォン・デ二ケンのこの本は、『神々の指紋』のネタ本というか、先行作品とも言うべき、科学的偽史本と言いますか、オカルト的トンデモ本でございます。 まあ、書いていることはハンコックのそれと似ていて、人類の古代遺跡などから伺われる古代文明は、ある意味、現代の科学技術すら超えているところがあると。しかも、いくつかの遺跡に描かれた図像や、聖書を含む神話的文書に、明らかに宇宙船や宇宙人来訪の記録と思えるものが残っていると。 実際、そういう古代遺跡には、アポロ宇宙船の飛行士たちが身に付けた宇宙服そっくりに描かれた「神」の絵や、ロケットそっくりの乗り物の絵などが描かれているのに、現代の考古学者や科学者は、それが実際に地球に来訪した宇宙人を描いたものだ、という風に仮定してみようとすら思っていない。 だけど、もしこれらの遺跡の絵が本当に宇宙船であり宇宙人であると仮定し、彼らが地球人に高度な文明を伝えた(あるいは、類人猿/未開人に彼らのDNAを植え付け、ホモ・サピエンスを作り出した)と考えれば、古代に高度な文明が突然現れたことなどの説明がすべてつくのではないか? ま、これがフォン・デニケンの主張ですな。 なにしろこの本が出版されたのは1968年ですから、アポロ11号の月面着陸の前年です。宇宙旅行というものが現実味を帯びてくると同時に、宇宙に関する科学者たちの、そして一般人の興味・関心がマックスになっていた頃ですよ。そういう熱い時期に、「宇宙には、地球人以外にも知的生命体が存在するんじゃないのか?」ということを、一般人にも分かりやすい形で言い出したわけですから、この本が世界中で売れたのも分からないではない。フォン・デニケンに言わせると、この本(及びその続編)は32か国語に翻訳され、全部合わせると6300万部が売れたってんですから、『神々の指紋』以上の超絶ベストセラーだったわけでありまして。 とはいえ、ウィキペディアの情報によりますと、このフォン・デニケンという人は各種詐欺行為で入獄もしたような、かなりいかがわしい人であったらしい。ので、6300万部が売れたとかいうのも「本当か?」というところもあるのですが、就職先のホテルの金を使い込んだ(その金で本書を書くための旅行をしたそうですが)、その借金も本書の印税で弁済したそうですから、ある意味、大したもの。 とまあ、色々インチキ臭いところはあるんですけれども、1968年という出版年も踏まえた上で言えば、確かに当時として(あるいは今読んでも)かなり面白い本であっただろうな、という気はする。 確かに、フォン・デニケンが言うように、もし、人類の文明の黎明期にですよ、高度な文明をもった宇宙人が宇宙船に乗ってやってきて、古代人の前で圧倒的な武力をデモンストレーションして見せたとしたら、その古代人は、その驚きをどう表現するか。壁画に宇宙船と宇宙人を描く、「神」が空から降臨したと神話の中で語る、神としか思えない宇宙人に言われた通りに、自分たちの暮らしを変える、ってなことになるんじゃないでしょうか? で、その宇宙人がその後も定期的に地球を来訪し、自分たちが伝えた文明の進展を観察し、それが意に添わぬものであったとしたら、その民族をまるごと抹殺するかして一度チャラにし、あらためて実験をする、などということもあったのではないか? そしてその大殺戮が、生き残った古代人の手で、終末的な神話としてさらに伝えられたのではないか? そんなことも絶対になかったとは言えないし、少なくとも現代の考古学では説明のつかないことの上手い説明にはなっているわけで、ならばこれを一つの仮説と考えて、それを追求するというのも、科学や学問のあるべき形なのではないかと。アホな空想として一顧だにせず無視するのではなしに・・・。 ま、ワタクシとしては、別にフォン・デニケンの肩を持つつもりはなくて、ただ、この時代にこういう宇宙人言説が現われたということ(それは歴史上の事実なわけだから)、またそういう言説の人気が高まったということの背景に、現実世界への飽きたらなさと、現実世界に対するオルタナティブへの希求という機運があったのではないか、そしてそれは、いわゆるニューエイジ思想の一端なのではないか、ということに興味があるだけなんですけどね。 で、そういう観点からすると、フォン・デニケンのこの本、結構面白い。しかも、1935年生まれの彼はまだ存命で、しかも、リドリー・スコットの2012年の映画『プロメテウス』は、フォン・デニケンの言説の影響を受けていると、スコット自身が認めているというのですから、なおのこと面白い。その意味で、この本、教授のおすすめ!と言っておきましょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 20, 2021 03:55:32 PM
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