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カテゴリ:感染症
2011年5月26日のNew England Journal of Medicine Onlineに興味深い
論文が上梓された。 Mortality after Fluid Bolus in African Children with Severe Infection. Maitland K, et al. N Engl J Med 2011. DOI: 10.1056/NEJMoa1101549. 外来で発熱を伴う小児で、脱水が疑われたり、血圧が低下し循環血液量が低いと 思われる患者には生理的食塩水もしくはアルブミン製剤を急速に静注し 循環血液量の維持に努める治療法が、経験的に正しいものと考えられている。 しかし、急速静注は肺の浮腫や間質への漏れ、脳浮腫、頭蓋内圧亢進などの 副作用もあり、頭部外傷患者へのアルブミン製剤投与が死亡率を上昇させること、 高分子輸液製剤が腎機能を悪化させる、などの報告もあり、急速静注による 補液が果たして正しいのかどうかはわからない。 (1)Fluid Expansion as Supportive Therapy (FEAST) trial 本研究はアフリカの6つの病院で、発熱を伴う疾患を有する生後2ヶ月から12歳の 小児を対象に行われたランダム化比較試験である。総数3141人を対象とし、 生理的食塩水もしくは5%アルブミンを20 mL/kg/hrまたは40ml/kg/hrで急速静注し、 これと急速静注を行わない群とで比較を行った。ただし、全例維持輸液、抗生剤の 投与は行っている。また、急性胃腸炎、著しい栄養失調、外傷、熱傷、急速輸液禁忌の 患者は除外している。 エンドポイントとしては、48時間後と4週後の死亡率および4週後と24週後の神経 系異常について検討した。 結果は、驚くべきことに、生理的食塩水でもアルブミン製剤でも急速輸液を施行した群は 急速輸液を行わない群に比べて死亡率が悪化するというものであった。 (2)急速静注の欠点 この研究から類推できる急速静注が病態を悪化させる機序としては、 1. 静注により血漿成分が増えたため、生体防御反応として分泌された内因性のカテコラミ ンが薄められ、生体防御反応が破綻し、再還流障害が引き起こされた 2.一過性の循環血液量過多もしくは滲透圧上昇により、毛細血管から水が漏出し、 肺鬱血や頭蓋内圧亢進が引き起こされた などの可能性が考えられる。 今回は、十分な治療が行き届かないアフリカの病院での報告であったが、研究自体は 非常に注意深く行われており、これまでの「常識」と思われていた輸液療法に警鐘を 与える、非常に重要な研究だと思われる。 また、今回は12歳以下の小児が対象であったが、成人症例、とくに高齢者の輸液療法 にも注意が必要であることが示唆される。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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興味深く読ませていただきました。有難うございます。
善玉・悪玉コレステロール、数値について、最近のエビデンス違ってきているのでしょうか?いつか、機会があれば知見を教えてください。 (June 17, 2011 01:57:25 PM) |