|
カテゴリ:びしびし本格推理
中学生の少女が夏休みに体験する冒険を描いた若竹七海の〈葉崎シリーズ〉の中編を読んだ。
○ストーリー 杉原渚の中学2年生の夏休みは散々だった。兄嫁,そして兄が事件に巻き込まれ,彼女の一家は葉崎中から注目されるようになってしまった。あらぬ中傷を晴らすために,渚は海水浴と古書店のアルバイトを合間をぬって,自分で事件の調査を始める。だが渚も狙われてしまい・・・ ------------ この作品は若竹七海の傑作として有名なのだが,納得だ。ミステリーとしてのさまざまなポイントを的確に押さえている。 ジュブナイル仕立てだが,年令に関係なくおススメ出来る。 ------------ 主人公は,鎌倉近くの海辺の町・葉崎市に住む中学生の活発な少女・渚だ。2学期の終わりに,兄嫁が事件に巻き込まれ,そのまま彼女の周りでは次々と事件が起きる。散々な気分で,夏休みに入り,午前中は海で泳ぎ,午後は古書店〈鬼頭堂〉でアルバイトをする。 彼女には数名の仲の良い同級生がいるが,事件の関係で仲たがいをしたり,疎遠になってしまったり,そして仲直りをしたり,と中学生らしい日常も描かれる。 渚は,兄夫婦が巻き込まれた事件の警察の調査には納得せず,自分から聞き込みを行う。兄のアリバイは成立するのか?夜,近所の人に目撃された長い髪の女性の謎とは? 少しうまく行き過ぎる感もあるが,懸命に調査する主人公の前に,次々と新しい事実が明らかになる。そして,友人たちの助けもあり,事件は解決へと進むのだが・・・??? ------------ とにかく若竹七海の魅力にあふれた作品だ。シニカルな人間描写で,にやりとさせるテクニックは見事。まるでフランス映画のようなキャラクターが織り成す人間模様はいつもながら楽しくて,ちょっとブラックだ。 けれども主人公が若い少女なので,あっという間に気分の切り替えが出来て,前向きな気分があふれている。最後の1行までミステリーの楽しみに満ちた作品だ。 ------------ この作品は〈葉崎市シリーズ〉の第3弾だが,これまでシリーズキャラクターであった駒持警部は登場しない。主人公が夏休みにアルバイトをする古書店〈鬼頭堂〉に,鬼頭典子と中里講師という「ヴィラ・マグノリア」に登場したキャラがカメオ出演している程度だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.03.19 21:55:54
コメント(0) | コメントを書く
[びしびし本格推理] カテゴリの最新記事
|