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2016.05.16
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カテゴリ:びしびし本格推理
〈御手洗潔シリーズ〉の島田荘司が書いたシャーロック・ホームズ作品を読んだ。

○ストーリー
元従軍医師のジョン・ワトソンは,稀代の名探偵,シャーロック・ホームズと暮らし始め,いくつもの冒険をくぐり抜けた。だがホームズには事件の依頼が途絶えると,コカインで無聊を慰めるという悪癖があり,その影響で幻覚を見て暴れだしたため,強制入院措置を取らざるを得なかった。そんな折,解決したはずの『赤毛組合』の犯人たちが脱獄をして,警察はホームズの出動を要求する。真実を明かすことのできないワトソンは,自分で事件捜査に乗り出すのだが,それは予想もしなかった大冒険へとつながるのだった。

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ハードカバーで500ページの大作で,表紙は由緒正しきシドニー・パジェットのイラストと英語のタイトルが配置してある。まるでシャーロック・ホームズの〈正典〉のような装丁だが,日本の作家の書いた作品だ。

とは言え,その作家が日本の新本格ミステリーの屋台骨たる島田荘司となると話は変わってくる。日本にも名探偵は多くいるが,その行動力,知性,孤独などで,群を抜いているのが〈御手洗潔シリーズ〉の主人公だ。

名探偵・御手洗潔と作家・石岡和己のコンビを35年間にわたって書き続けてきた島田荘司が,ホームズとワトソンのコンビを初めて描くことになる。

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シャーロック・ホームズ作品を書いたのはコナン・ドイルで,その作品群は〈正典〉とまで呼ばれている。一方で大量に他の作者によるホームズ作品も存在し,これも延々と途切れることのなく発表され続けている。

ホームズ作品以外にも,他の作者による続編や番外編というものは存在する。けれどもオリジナルの独自性,ファンの層の厚さ,途絶えない人気という意味では,ホームズシリーズを超えるものはないだろう。

他の作者の手による続編は,なるべくオリジナルに寄せたものをパスティーシュ,異なる視点からアレンジを加えたものをパロディと呼ぶことが多い。

今回の島田荘司の作品は,これまでのホームズ研究の上に立脚したパスティーシュで,ホームズ作品の矛盾や欠点を認め,”それはワトソン側の事情でそのように執筆した”という視点で構築されている。

ひじょうにマニアックな部分もあるのだが,シンプルに冒険活劇としても楽しめるので,いろいろな人がいろいろな楽しみ方をできる作品だと思う。

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この作品で一番危険なことは,パスティーシュでありながら名探偵ホームズの偶像破壊を行っていることだ。「最後の事件」でのモリアーティ教授との死闘の代わりに,ホームズは麻薬中毒で強制入院となっている。

また「赤毛組合」の事件でも,まんまと犯罪者の誘導に沿って間違った解決を提示してしまったという不名誉な状況が描かれている。

面白いのは,こうした不利な状況を利用して,〈正典〉の矛盾や間違いと言われている部分を修正する,という試みが行われていることだ。

ワトソンの軍医時代の怪我は元々は肩だが,今回の事件で足にも負傷した。〈犯罪のナポレオン〉モリアーティ教授も,口笛で調教された「まだらの紐」も存在しない。多くの矛盾は,ワトソンが断片的な情報から,不完全なホームズ作品を執筆したことによる。

この作品は,こうした切り口で〈正典〉を修正しつつ,〈正典〉にごく近いテイストの物語を提供するという綱渡りを見せている。この辺りはさすが島田荘司だ。

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500ページの大作だけあって,多くの読者にとっては既知の物語を語り続けた後に,巻の半ばから初めて新しい冒険物語が始まる。負傷もして,鬱々としていた石岡君みたいなワトソンが,突然やる気にあふれて馬を駆り,ピストルを撃ち,壁を上りと,別人のような大車輪の活躍を見せるのには,正直呆れてしまった。

このまま脱獄事件の謎まで解いてしまうと思いきや,さすがにそこに現れたのは・・・となる。

とは言え,馬に乗ることもおぼつかないのでは?と思わせていた主人公が,奇跡の大活躍を見せてくれると,現代の我々としては,怪我が精神的なものだったのか?こうしたノリが〈正典〉に近いとする高等テクニックなのか?と,いろいろ考えてしまう。

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最後には当然だが〈新しい十五匹のネズミのフライ〉も解決し,ミステリーとしてもきちんと決着がつく。だが,500ページを読み進んでの謎解きがこれ?というガッカリ感があるのは否めない。

パスティーシュである,という制約があるので,謎解きも”当時風”というのが条件となる。そういう意味では正しいのだろう。

だがガッカリ感は,謎解き以外でもある。〈正典〉をなぞっているだけの冒頭部分が多く,結局「シャーロック・ホームズの帰還」までしか語られていないので,全体の”語り直し”とはなっていないのが残念だ。

また実直と思えていたワトソンが,あることがきっかけで結婚依存症みたいになっていることも残念だ。この作品,そして〈正典〉を含めて,もっと幸せになっていい。

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ホームズのパスティーシュでありながら,〈御手洗潔〉のパスティーシュのような結末近くの展開に,ファンはいろいろ考えてしまうだろう。

よく出来たパスティーシュだと思う。ハードカバーで堂々と刊行されているのも面白くて仕方がない。












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Last updated  2016.05.17 21:51:53
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