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2017.06.01
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カテゴリ:びしびし本格推理
東野圭吾の初期作品の特徴が顕著に表れた長編を読んだ。

〇ストーリー

大学を卒業したまま就職せず,それを両親には大学院に進学したと偽って,近くの繁華街の店でアルバイトをして暮らす光平。だが彼の周りで,謎の連続殺人事件が起き,彼の恋人まで刺殺されてしまう。全てを断ち切るために,光平はこの事件を解決しようとする。そして・・・

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東野圭吾は言うまでもなく,発表する作品のすべてがヒットし,さらに映像化される大人気のミステリー作家だ。

気付いた段階ではあまりにも人気作家だったので,逆に避けてしまった僕だが,その波がだいぶ落ち着いた今になって,初期作品から順番に読もうとしている。

そうしたプロセスで驚いたのが,初期の東野圭吾と,いわゆるベストセラー作家の東野圭吾の差だ。今では,どの時点から売れっ子に成長したのか?という点も興味で読んでいる。

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この作品を読んで感じたのは,これまでの作品以上に1980年代後半という時代性を表現しているということだ。他のあ作品も,全体的には80年代のモラトリアムを反映していたが,この作品の主人公は両親に大学院進学を偽ってアルバイト生活を続けている。

たぶん今の時代から見れば不自然だろう,というポイントが同じ時代を体験している僕からすると,いちいち痛々しく刺さりつつ,迫ってくる。

もちろん基本のミステリーとしては,実に親切に物語が展開される。その流れでストーリーが語られ,そして意外な展開も語られる。

ただ,登場人物の考えていることが,あまりにも1980年代のふわふわしている時代をベースにしているので,そこから生まれる怒り,虚無感,嫉妬なども,もう一つ東野圭吾が表現しようとしているコアとのギャップが否めない。

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主人公は,大学を卒業したのに,通常の就職では自分のアイデンティティが認められないという懸念から,アルバイト生活をする。

この主人公のメンタリティが80年代ではカッコ良い,でも現代では共感を得られないので,そこが既にマイナスだ。

それをなんとかクリアしたとしても,年上の美女と恋人関係にあり,その人が死ぬと同僚の女性と関係を持ち,さらに死んだ女性の妹と恋人になる,という女性関係の積極性は,ミステリーでは見たことのないレベルで,呆れてしまった。

これは80年代へのオマージュなのだろうか?

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最後まで読むと,物語の重層的なエピソードに圧倒されるが,他方,それで片付けられたくない気持ちが残る。

過去の事件は,そこまで登場人物たちを縛るのか?

事件と現代の事件はどうしてそこまでシンクロしたのか?

佳作であることは間違いない作品なのだが,意外と外連味もあり,大きな世界へとつながる可能性を持っている。

まだまだ東野圭吾の作家性の秘密は見えないけれども,どんどん読んでみようと思う。














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Last updated  2017.06.01 22:49:41
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