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2017.06.26
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カテゴリ:びしびし本格推理
東野圭吾が自ら転機となったと語っている作品を読んだ。

〇ストーリー

日本でも代表的な企業・UR電産で新社長となったばかりの須貝正清がボウガンの矢で殺害される。ボウガンは,先代社長・瓜生直明のコレクションの一部で,事件は瓜生家・須貝家の親族たちが遺産の美術コレクションを譲り受けようと集まっていた日に起きた。事件の捜査に呼び出された刑事・和倉勇作は,瓜生家の人々と因縁があった。先代社長の長男・瓜生晃彦とは幼馴染で小学校から高校までライバルだった。また晃彦の妻・美佐子は,勇作の元恋人だった。さらに勇作は幼い頃に知人の女性が不審死をするという事件を経験しており,その裏には瓜生家が動いていた。この事件により明らかになる宿命とは?

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初期作品から東野圭吾を読んでいると,最近のずっしりとした人間模様を描く東野圭吾との作風の違いに驚く,ということは何回も書いてきた。

最近読んだ加賀恭一郎シリーズの「眠りの森」も美しい作品だったが,今回の作品が一番それ以降の”僕らが認識している東野圭吾”が生まれた転機だというのは,読んでいてもひしひしと感じた。

ミステリーの謎解きが作品の要素であるのはもちろんなのだが,それよりも瓜生家の運命に捕らわれていく勇作,晃彦,美佐子,そして多くの人々の生き様が中心になっていて見事なドラマが出来上がっている。

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事件の裏には戦後の動乱期に行われた医療実験があり,それが人々の運命を変えていく,という辺りは,ちょっと作り込み過ぎという気もした。

和倉勇作と瓜生晃彦が小学校から高校までずっとライバルであり続ける,という状況もリアリティが薄い。瓜生家・須貝家の一族の愚かな言動はテレビドラマのパロディのようだ。

ほんの一歩間違えれば安っぽいサスペンスになるところを回避して,見事に重厚にまとめあげているのに感心した。抑制された淡々とした表現と物語の流れのおかげだろう。

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”あの東野圭吾”が完成された瞬間の作品と言っても良いだろう。もっとも初期作品から読んでくると感慨があるけれど,期待いっぱいでこの作品を読むと,さすがにアラが目立つかも知れない。

悪くない佳作だ。











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Last updated  2017.06.26 22:00:38
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