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2017.08.31
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近藤史恵の歌舞伎ミステリー〈探偵今泉シリーズ〉の第3作を読んだ。

〇ストーリー

歌舞伎の女形俳優・瀬川小菊は師匠・瀬川菊花からある調査を命じられる。師匠が演じる八重垣姫の場面で,降らないはずの花びらが毎日落ちて来るというのだ。小菊は,探偵・今泉に相談をするが,彼は早々にこの事件から身を引くべきだとアドバイスをする。事件は魅力と人気が急上昇中の俳優・市川伊織へとつながるのだが,今泉の反応は何を意味しているのか?ついに歌舞伎座周辺では,さらなる悲劇が発生し,小菊たちは・・・

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〈探偵今泉シリーズ〉と呼ばれているが,第1作「ねむりねずみ」は歌舞伎ネタだったものの,第2作「ガーデン」はハードボイルド風という,方向性の見えない展開だった。

今回の第3作で歌舞伎界に戻り,良くも悪くも〈探偵今泉シリーズ〉は,梨園こと歌舞伎界で発生する事件を語るシリーズとなった。

第2作と異なり語り手が,歌舞伎の女形で,それでも”その他大勢”という役どころの瀬川小菊に戻り,一気に安心が得られた。少なくともシリーズ第2作の「ガーデン」のような,誰が主人公で,誰が語り手なのか,という混乱は避けられるようだ。

第1作に戻ったかのように,師匠から小菊へと指示があり,小菊は今泉へ調査を依頼するという,構図が出来上がる。

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この作品が不思議なのは,探偵・今泉が,早々に事件調査からのリタイアを希望する,ということだ。今泉の入院もあり,語り手・小菊は,今泉のヘルプなしで探偵役も兼ねるようになる。

終盤で復活した今泉の協力もあり真犯人が捕まるのだが,小菊を通じて読者が得られていた情報は限られていたので,読者はかなり置いてけぼり状態だ。

読者への情報の出し方も少ないし,今泉が気付いた点について,小菊を含め歌舞伎界内部の者が気付かなかったというのも不自然だ。

本格派ミステリーと呼ぶには,情報の出し方や,整合性に問題があると思う。この作品はむしろ,歌舞伎を観に行った時に感じる,別世界,別時代に紛れ込んだような酩酊感を楽しむことに近い気がする。

ミステリーではなく,歌舞伎ミステリーというのが,この作品なのだろう。

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ネタバレを避けるために表現があいまいになるが,上に書いたように,かなり唐突に訪れた謎解きについても,どこかで読んだような印象を受けてしまって,さらに評価が厳しくなった。

歌舞伎ミステリーとなると,この手のパターンが事件の真相って,他の作品でもあった。やや発想が安易ではないかと思う。

せっかく内部側から梨園を描くという貴重な作品なのだから,もっと驚かせてもらいたかった。














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Last updated  2017.09.01 20:43:03
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