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2017.10.29
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カテゴリ:映画を観たよ
SF映画の大傑作『ブレードランナー』の正統な続編を観た。

〇ストーリー

地球は荒廃し,人々は生活のために地面に貼り付くように生きていた。植民地〈オフワールド〉には成功者,あるいは開拓者が住み,人造人間・レプリカントを奴隷とすることで成り立っていた。レプリカントの中には逃亡し,地球へと密航し,人間になりすまして生きる者もいた。彼らを狩り,消去をする専門の警官はブレードランナーと呼ばれていた。そうして30年,新世代レプリカントの制御は進化し,LA警察のブレードランナー,ケイはレプリカントだった。彼は,農夫として生きていた旧式レプリカントのネクサス8型を消去する命令をこなすが,農場の地中にはあるものが埋まっていた。その謎はケイを,30年前にレプリカントと共に行方不明となったブレードランナー・デッカードの捜索へと導く。やがてケイは,人類とレプリカントの争いの焦点に立っていることに気付く。その果てでケイは・・・

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『ブレードランナー』は一番好きな映画だ。

酸性雨が降りしきる都会,繁華街にあふれる電飾看板とアジアの言葉,遺伝子操作で製造された人造人間,植え付けられた記憶・・・こうした今ではSFの定番となっているモチーフを35年前に映像化してみせたのがこの作品だ。

僕は幸いにしてこの作品を封切で観た。そのしばらく前に,雨の繁華街の上に浮かぶスピナーの写真を雑誌で観て,その写真一枚にハッとさせられていたが,作品は期待を何倍も上回る出来だった。

この作品を何回も観たくて,レーザーディスク,VHS,DVD,Blue-Rayと,次々にソフトを買い,数え切れないほど観た。

そしてここに来て,初代監督が製作に回った正統な続編の登場だ。これは初日から観に行かなければならない。

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映画が始まり,瞳が大写しになったカットに,ぐっと来た。これはオリジナル『ブレードランナー』にあったカットであり,『2049』がオリジナルの世界観をレスペクトする,というメッセージだと感じた。

それから展開されるのは,ロス郊外の農場を舞台とした主人公・ブレードランナー,ケイの仕事ぶりが描かれる。ケイが使用する車両,レプリカントとの勝負,レプリカントであるかを確認する眼球走査,このどれをとってもオリジナルとのつながりが強く感じられて安心した。

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次に描かれるのは,ケイの日常だ。ある理由で同僚からも差別を受けており,また帰宅をしてもAI彼女とヴァーチャルな会話をして時間を過ごしている。この情けない男を,主演のライアン・ゴズリングは淡々と演じていて見事だ。

ケイは1人でレトルトフードを食べているのだが,VRあるいはAR技術を利用してその上に映像が投影され,AI彼女が作ってくれた手料理と模して食べる。そしてベランダに出て,AI彼女と雨の中で抱擁をする。

彼の日常のすべてが情けなく,乱暴に言えば痛い。演じているのがゴズリングだからいいけれど,他の普通の人が演じているのを見せられたらとてつもなく恥ずかしい映像だ。

格好いい部分もあるけれど,どこか自信なさげな空気を持っている。見事なキャスティングだと思った。

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ケイが農場で見つけてしまったのは,レプリカントの運命を変える可能性を秘めた遺物だった。それを追う中で彼が訪ねるのは,サン・ディエゴの廃棄物処理地帯の中にある孤児院だ。これはどうやら倒壊した巨大パラボナアンテナ群を施設として再利用している。

電子製品を解体して,一定の部品と素材を回収して働く何百人もの孤児の姿は恐ろしい。もっともこれがインドや中国の一部では現実となっていることを記憶しておくべきだろう。


農場で見つけたある印と,孤児院を訪ねたことで,ケイは自分の植え付けられた記憶にある秘密が隠されている可能性を考え始める。

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捜査の結果,次にケイが向かうのはラス・ベガスだ。

サン・ディエゴのシーンもインパクトがあったが,朽ちた巨像が並ぶ先にあるベガスはもう異世界だ。結局,その後にホテルの巨大な廃墟が舞台となるのだから,直接そこに乗り付けても良かったとも思うが,この巨像がケイを覆う世界の象徴なのだろう。

ベガスでケイの運命は,大きな転換ポイントを迎える。ベガスのシーンでは,ある人物の登場,アクション,1950年代のスターのAR映像など,ファンサービス的な一瞬の息抜きがある。

オリジナルから受け継がれたレトロなサイバーパンク趣味が,ここでも全開だ。

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ここからラストまで一気,だったらシンプルなのだが,ある事実の発覚がある。それを踏まえて,主人公・ケイが選択した「本当に人間らしい行為」については涙を抑えることが出来なかった。

「私たちはどこから来たのか,私たちは何者なのか,私たちはどこに行くのか」という普遍的なテーマを突き付けたのが,原作者・フィリップ・K・ディックであり,オリジナルの『ブレードランナー』だった。

続編の主人公・ケイ(K)は,再び同じテーマを真正面から扱っている。

製作者,登場人物,俳優,映像,音楽,そして作品世界,全てにおいて正当な続編が提示されるとは!ありがとう!

これはオススメだ。観よう!



















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Last updated  2017.10.29 18:33:05
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