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カテゴリ:どきどきミステリー
近藤史恵の〈清掃人探偵キリコシリーズ〉の第4巻かつ唯一の長編を読んだ。 ○ストーリー 日比谷のオフィスビルに勤める〈ぼく〉梶本大介の妻は,同じビルのポップな清掃人の女性・キリコだ。ちょっとしたきっかけでキリコは同じビルの別会社のイケメン・越野友也の浮気調査を,彼の妻・真琴から依頼される。だが越野友也は〈ぼく〉の目の前で交通事故に遭い,〈ぼく〉は彼の友人として救急車を呼ぶことになる。そして友也が記憶喪失となってしまったことで,状況は複雑に交錯する。さらに・・・ ------------ オフィスを舞台にした日常ミステリー,というのが〈清掃人探偵キリコ〉の設定だったと思う。これまでの作品は全て短編集で,その中で完結するミステリーと,”そこにいても認知されない”清掃人の探偵,という設定を活かして小規模なシリーズとして続いてきた。 初の長編ということで,〈ぼく〉・大介とキリコの関係も改めて問い直す,という作品らしい。 果たしてその試みは? ------------ えーと,なんで近藤史恵は自分から読者の期待値,つまり作品レベルのハードルを上げようとするのかが分からない。 この作品で言えば,”夫婦のすれ違いの危機”をうたいつつ,肝心の大介・キリコの夫婦は不自然なベタベタ状態だし,事件の当事者である友也・真琴夫妻についてもだいたい予想がついてしまう。 もうこれは日本の本格ミステリーの伝統のあれでしょ,あれ。・・・と思っていたら,新しい設定が導入されて予想とは異なる流れとなってしまった。 けれども個人的には,勝手だけど,今でも真相はあれ,だと思っている。江戸川乱歩からの脈々と流れる異形への憧れからすれば,”こっち”が正解だろう。 ------------ 個人の感想で言えば,温田さんなんてレッドへリングキャラは不要で,友也の秘密が単独で暴かれる,という流れで良かったと思う。 ひじょうに残念ながら,この作品は短編レベルの内容を無理やり長編に引き伸ばした,という印象が強く,それを補うためにあちこちに不必要なエピソードが加えられていると感じられた。 友也は「XXXXXXだ」と明かされても,ぽかーんだ。だからそれが何?そこからまた踏み出せばいいじゃない? 短編でも作者の独り相撲というものもあったので,長編でそれをやられてもそれほどは驚かないけれど,昨今の編集者って,ホントに仕事をしていないなあ。
中身がないのにそれを薄めて長編に仕立て上げる。リーダビリティは高かったけれど,読み終えた瞬間に内容が思い出せなかった。 次は元通りのシリーズ品質を期待したい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.04.03 22:03:46
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