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カテゴリ:びしびし本格推理
石持浅海の長編ミステリーを読んだ。
〇ストーリー 赤垣真穂は結婚式の二次会に出席する。今回結ばれた2人は,彼女の学生時代のサークル仲間だったのだ。彼らは,二次会のサプライズゲスト・熊木夏蓮の登場に衝撃を受ける。夏蓮は彼らの前に,”あの事件”以来3年ぶりに姿を現したのだった。再会を喜び,徐々に打ち解ける彼らは,翌日に集合して遊ぶ約束をする。だが彼らを待ち受けていたのは,憎しみの連鎖の始まりだった・・・ ーーーーーーーーーー 石持浅海の良さは,コンスタントに新作を発表する生真面目さと,批判を受け続けてもぶれない気の強さだと思う。 ミステリーとしての面白さも,・・・まあ無くは無いかな。 ーーーーーーーーーー 1ヶ月前に読んだ石持浅海の「賛美せよ、と成功は言った」と,基本的な部分でかなり似ているのが気になった。 両方とも学生時代のグループが,社会人となって再集合するが,そのグループ内部で殺人が起き,犯人の動機を皆で懸命に議論をする。 そして両方とも,語り手は優秀なワトソン役として,ホームズ役と連携して,事件に隠れていた暗い気持ちをあぶり出し,本当の解決へと導こうとする。 ーーーーーーーーーー 石持浅海と言えば「〇〇と言ったから××で間違いない」「△△な表情を見せたから,絶対□□である」と,とにかく断定が多い。ちょっとした”てにをは”の違いで,事件の真相が左右されるのがザラなので,僕みたいに口下手な人間は,あっという間に犯人に断定されそうだ。 最近の作品は,優秀なワトソン役を配置することで,ホームズ役の断定に対して検証をする,というスタイルだ。かつての強引さが少なくなり,一方的にホームズ役のお面をかぶった作者の演説を聞かされているような不快感は薄れている。 ーーーーーーーーーー この作品も終盤直前までは,丁寧な展開と推理に,なかなか評価できると思った。それほど強引なホームズ役も登場せず,常識人だけで物語が進む。 なのに終盤で事件が動き,その場に〈鎮憎師〉が現れた時,なんだか一気に萎えた。この〈鎮憎師〉の設定や,本人のキャラクターは悪くないと思うのだけれど,あの場に登場するのはあまりにもリアリティがないだろう。どれだけヒマなんだろう。 ーーーーーーーーーー 残念ながら最後にはいつもの石持浅海に戻ってしまったが,終盤近くまでは楽しめた。 気になったのは ‐ LGBTの比率, ‐ やたらと地名,駅名,路線を語る, ‐ 必要以上にゴージャスで,これからも登場しそうな〈鎮憎師〉の設定, ‐ スプラッターの序章, だと思う。 いつも思うが,相手の顔の表情というアナログな情報だけから,その人物が考えていることが分かるのだるか? 僕は自分の気持ちさえ,しょっちゅう見失っているけれどなあ・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.05.23 22:07:29
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