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2020.02.19
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学者・原武史と作家・重松清が対談形式で論じる団地についての考察本を読んだ。

〇内容

〈東京の団地っ子と「非・東京」の社宅の子〉:名古屋から東京に移った際にひばりが丘団地に住むことになった原少年。そこは近代化の先端の憧れの町だった。鉄筋コンクリート造,都市ガス,水洗トイレ,鉄の扉。・・・原武史と重松清という同学年の2人の対談は,年令だけでなく,学生時代の思い出も噛み合っていて,ひじょうに心地よい。どれだけ脚色されているのかは分からないが,ポンポンと話題が尽きることなく進む。団地に住み始めた原,大学までは地方の実家暮らしだった重松の対比となっている。


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〈団地の西武,一戸建ての東急〉:大団地が形成されて行った西武線沿線と対をなすように,東急沿線には丘を背景とした建売住宅が開発された。・・・2人の学生時代の話と,原武史の鉄道や西武と東急グループの関するうんちくが楽しい。確かに西武と東急って差が大きい。


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〈左翼と団地妻〉:団地の歴史をひも解くと,自治会が市に対して何を要求して勝ち取った,ということが歴史的成果として語られている。どうして団地は共産党や創価学会にオルグられてしまったのか?それに対してニュータウンは?そして話題となった団地妻は実在したのか?・・・オルグと団地妻という両極端でタッチ―な話題を嬉々として語る2人が面白い。そうかホテル野猿は地元の人が利用していたのか?自治会が『子供たちのために』とクリーンさを主張すると,否定は出来ないけれど,そこから閉塞感は始まっていたのだろうなあ。


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〈団地と西武が甦る時〉:高度成長期が終わり,景気が低迷し,バブル経済が間違った方向へと進んだ。その後,日本の社会は少子化へと進み,団地も時代と合わなくなっている。旧来の団地から高層化へと進むのが正しいのか?それとも低層化でリフォームが正しいのか?・・・もう対談のテーマが団地を超えて,日本の今後の社会論になっている。ここに来て,重松清が理想論を述べ,原武史が現実の選択肢を語っているのが明確になる。芝園団地の書籍でも読んだ国際化の問題もあるが,とにかく高齢化が団地の,そして日本の問題だ。


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とても刺激的な本だった。

ごく一時期に時代の最先端として輝き,すぐに失敗のように語られるようになった団地,もう一度陽が当たることはあるのだろうか?





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Last updated  2020.02.19 10:00:12
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