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カテゴリ:びしびし本格推理
美術館を舞台にした連作短編ミステリーを読んだ。
〇ストーリー 会社近くのペンシルビルの2階に小さな美術館があった。そこの雰囲気を気に入ったサラリーマンの海老野は常連となるが,せっかく仲良くなった老人の館長は引退してしまう。いろいろあり新しい館長となったのは,黒髪の美人・薫子だった。彼女に一目惚れする海老野だが,彼女には影があった。彼女はある事件に巻き込まれていて・・・ ーーーーーーーーー 可愛らしい連作短編ミステリーだ。2015年刊行とは思えないほどのんびりしていて優しい。主人公の性格も,2000年代の主人公のように優柔不断だ。 主人公が憧れるヒロインは,美術館館長の麗人・薫子だ。この人がまた煮え切らない。 ひょっとしてこのシリーズは,2000年代ミステリーのパロディなのかな? ーーーーーーーーー 再び述べてしまうが,このヒロイン・薫子はずるい女だろう。主人公・海老野に好意を寄せられているのは明らかで,彼に事件解決でさんざん世話になりながら,カッコよくて資産家の南田のアプローチも否定しないし,自分を裏切った元婚約者・尾形のことも気にする。 イライラする。 ーーーーーーーーー 各編について簡単に感想を述べる。 「ペンシル」:会社近くの小さな美術館の雰囲気を気に入った海老野は,そこの常連になる。だが老人の館長は引退し,その代替わりとして体重多めの女性・あかねが赴任する。そしてほどなくさらに代替わりした館長は,あかねの姉の美人・薫子だった。彼女に一目惚れする海老野だが,彼女が事件に巻き込まれていると知り・・・第1話で物語進み過ぎだろう?財布の中身から犯人(?)の行動を予測する,という流れはとても面白かった。一番予測できないのは薫子の行動だったな。 「ホワイトボード」:美術館に来た母娘だったが,娘はある時から怯えはじめた。しばらく前に,娘は不幸な事件に巻き込まれていて,犯人は”ペンギン”だと言うのだった・・・ほのぼの系から考えられない残酷な事件だ。一方で,母親たちの行動が危うくて,それが娘たちの危機を招いているのは誰も指摘しないのは?? 「マーカー」:娘が隠したリストから見えた文字は「フーカー」のようにも見えた。それが示していたのは?・・・意外と昭和っぽい物語だった。 「ブックエンド」:美術館の常連の女性に,生き別れの双子の妹がみつかった。対照的な2人だったが,仲良くしているようだった。だがある事件が起き・・・さすがにいろいろ設定が小説っぽ過ぎてすんなりと入って行かない。で,何がしたかったの? 「パレット」:美術館で発見された鉱石のコレクション。パーティを通じて新しい企画展示を発表したところ,一部の石が行方不明となり・・・がちゃがちゃしていてミステリーとしては読みづらい。犯人も最初から分かっているし。 「スケール」:美術館の上階にある薫子の家の前で窃盗があり,尾形はその男ともみ合いになり,男は死んでしまった。果たしてこの事件の真相は?・・・「ホワイトボード」と言い,突然シリーズとは合わないカラーの短編が紛れ込む。今回も後味が悪い。これで閉められてもなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.03.22 22:30:49
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