カテゴリ:指導者として
コンクールの善し悪しについて考えてみました。 あくまで自分の経験がベースの考察です。 私のスタジオではシミュレーションバレエコンペティションや プレコンクールから足慣らしとしてトライしてもらっています。 ここにあげたものは順位のつかないもので、 コメントシートをいただくことができます。 そこで場慣れをしてゆき、 さらに力試しをしていきたい生徒には 順位のつくコンクールへと段階を踏んでいってます。 こうしたコンクールは古典のヴァリエーションを 踊ることが規定となっています。 昨今では多くの子供達がコンクールにトライしています。 コンクールによっては小学2年生から出場ができるものがあり、 どんどん低年齢化の傾向があります。 *--*--*--*--* コンクールに出場するということは、 生徒のモチベーションを上げることになりますし、 当然多くの稽古を積むことになるので力がつきます。 また、同世代のバレエに賭けている子に出会うことになるので、 意識が高まることになったり、自分はどうしたいのかということを 見つめ直すよいきっかけになったりもします。 シミュレーションバレエコンペティションに 毎年参加する生徒によると、 書いてもらったアドバイスを レッスンで気をつけるようにして、 次に参加するときはそれを書かれないようにするとか。 採点もされるので、点数をあげることも目標の一つとなるとか。 まぁ、このように コンクールは生徒の励みとなり、 バレエを続ける上での動機付けともなっています。 *--*--*--*--* 私はかつて小学4年生から こうしたものに生徒を出場させてきたのですが、 小学生の間はこのリハーサル期間(半年~1年前からスタート)に 足のトラブル(成長痛、外反母趾、脚全体のラインが悪くなるなど)が 出やすいことに気づきました。 今から思えば怖いことなのですが、 恥をしのんで言いますと、 当時は解剖学や子供の成長との関係を考慮に入れずに 指導してきた時期でした。 その時期に生徒に現れた様々なことを通して 早期のヴァリエーション指導はメリットよりも デメリットが多いことを学んでゆきました。 *--*--*--*--* また、大人、子供にかかわらず、よく言われることですが、 ヴァリエーションでは同じ脚ばかりを軸にしたり、 同じ側のアラベスクばかりとか、回転も右回りのみとか 左右対称に踊ることはほとんどないために 回数を重ねた方だけが上達し、反対との落差が出てしまうという 困ったリスクが隠れています。 これは身体の使い方のアンバランスを強化し、 ゆがみを作ってしまうことになります。 ゆがみは故障の第一歩。 放っておくと怪我につながりやすい身体を作っていまいます。 そして、一旦アンバランスな身体を習慣化させてしまうと、 それを戻すのは容易なことではありません。 それらの経緯から、今現在私のスタジオでは 出場条件がヴァリエーションのコンクールの場合、 中学生からと改めました。 (実質小学6年生の時期にリハーサルはスタートします。) また、稽古量の少ない生徒には出場許可は出しません。 (ここでいう稽古とは基礎レッスンのことです。) ポアントとのからみがあるので、 なかなか難しいものがあるのですが、 そこは状況に応じて対応しています。 *--*--*--*--* 今、バレエの雑誌では毎月のように コンクールの結果情報が掲載されています。 そうしたものを目にしたバレリーナの卵には コンクールに対してあこがれの気持ちが芽生えてくるのは ごく当然のことと思います。 でも、コンクールはいいことばかりを運んでくれる物ではないのです。 特に小さな子供はまだ考えが定まっておらず、 価値判断は周囲の大人が植え付けていくといっても過言ではありません。 コンクールは競う場なので、 やはり勝つことに焦点が当たりがち。 勝てば嬉しいでしょう。 『もっとがんばろう』につながることになるでしょう。 でも、一歩間違えば傲慢に。 負ければ悔しい。 よい方に転べばお稽古をうんとがんばる動機へと。 でも、悪い方に転べば、無気力に。 勝ち負けだけの価値判断は 人間形成の上で偏りを創り出してしまいます。 人生は勝ち負けばかりではありません。 また、コンクールに向けてのレッスンは 毎日のようにバレエ漬け。 場合によっては燃え尽きてしまうことも。 *--*--*--*--* こんなケースもあります。 親御さんによっては、 お子さんに高い目標を持たせようと働きかける人もいます。 このこと自体は状況さえ整っていれば、 悪いことではないと思います。 でも・・・・・・ それが大きなプレッシャーとなり、 お子さんをつぶしてしまうことも大いに起こりえるのです。 *--*--*--*--* 私はけしてコンクールを否定してはいないのですが、 メリットと共にこっそりと隠れているデメリット。 メリットだけを望むのは誰にでもある思いですが、 なかなかそうはいきません。 コンクールはメリットとデメリットの境界線を渡る綱渡りのようなもの。 そうしたことを知ってなお挑戦するならば、 たとえデメリットが出てきたとしても、 それを新しい試練として受け止め、 さらに前進してゆくことができると申し上げることはできますが、 デメリットから立ち直るには相応の時間が必要となることを 覚悟しておいたほうがいいかもしれません。 *--*--*--*--* 指導する側としては、 リスクを考慮しながら、それを回避する手だてを準備しつつ、 メリットを享受できるようにと願いながら、 指導をしていくしか無いと思っています。 いよいよ夏のコンクールシーズンが始まります。 生徒の望んだ結果、望まない結果にかかわらず、 そこからさらに前に進んでいけることが何よりも大切。 そうあるように祈っています。(^人^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 22, 2007 12:51:06 PM
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