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2005.10.05
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カテゴリ:連載小説
黒沢さんは菫が家に来た時の事を思い出していた。それは五年程前の春浅い頃の事だった。早くに目が覚めた。外で物音がしたような気がした。それで外に出てみた。外はまだ冷たい空気が支配していた。東の空が微かに明らんできていた。夜明けがちかい。口から白い息が出る。空の明るさが段々に広がってきた。足元にも微かに白い光が指してきた。足元に黒い固まりが落ちていた。初めは石だと思った。次にぼろ布かゴミの固まりだと思った。そうしているうち牛乳配達の自転車がゴトゴトと荷台の木箱を鳴らしながらやってきた。
「おはようございます。」と牛乳配達の学生が,冷たい露のついた牛乳瓶を黒沢さんに私ながら言った。
「おはようございます。まだ寒くて大変ね。ご苦労さま。」と牛乳瓶を受け取った。
「あ、猫が死んでる。」
「ええ、どこに。」
「そ、そこです。真っ黒い猫です。」
牛乳配達の学生は黒沢さんの足元にころがっているボロ布を指さした。よく見れば猫のようにも見える。
「お宅の猫ですか。」
「いや、知らないわ。猫なんて飼っていないから。」
「車に轢かれたのかな。片付けを手伝いたいけど、僕、まだ配達があるから。」
「ああ、いいのよ。どうにかするから。」
ほっとしたように、学生は自転車に乗りなおし、きーきー、ゴトゴトと音をたてて、さっていった。物音がしたので、だれか、配達の人かとも思っていたが、この猫の捨てられた音かもしれない。車に轢かれるといってもここは狭い路地で車は殆ど入ってこない。表通りで轢かれて、ここまで歩いて倒れたのか、誰かが路地に捨てたのかもしれない。よく見ると真っ黒な子猫であった。朝日が指してきた。東西に伸びる細い路地は朝と夕にほんの少しの間日が当たる。その朝日に倒れている猫の姿形がはっきりしてきた。小さな黒猫は体半分がかさぶたに覆われていた。そっとさわるとまだ体に温もりが残り、柔らかかった。『あら』と思うと子猫の体がピクンと動いた。ほんの少し、口が開き、かすかに鳴いた。猫はまだ生きていた。最後の力を振り絞って助けてと言っているように聞こえた。実は黒沢さんは猫が嫌いだった。餌を欲しがってミャーと鳴きながらまとわりついてくるとぞっとする程嫌だった。母屋に住んでいる黒沢さんの姉さんは猫が好きで間を置かず飼っていたが、黒沢さんは姉の気がしれないといつも思っていた。都合のいい時だけまとわりついて、後は知らん顔の猫なんて、そういえば姉さんに似てるよといつも思っていた。しかし、今は姉さんの事を考えてはいられない。生きているならほっておく事はできない。母屋の姉さんを呼ぼうかとも思ったが、姉さんは汚いボロ布の死にそうな子猫などほっときなさいよといいそうだった。あの人は自分勝手で、そんな人ですよ。と黒沢さんは姉の嫌な所を又思い出してしまった。そうそうこうしてはいられない。と、とうとう瘡だらけの猫を素手で抱え上げた。獣医さんに連れていきたくても朝早いし、どこにあるかもしらない。とにかく家の中に入った。座布団に横たえさせた。タオルを濡らして体を拭いた。汚れがとれると、瘡の部分が減り、きれいな黒い毛艶が出てきた。体を拭いて気持ちがいいのか、子猫は目を開けた。瞳の色が菫色に見えた。菫色の真ん中は片目が銀色で片目は金色に輝いていた。きれいな目だと思った。黒沢さんは菫色が一番好きな色だ。普段は黒っぽい色の服ばかり着ているが、本当は菫色の服を着てみたいといつも思っていた。庭にも菫や菫色の花ばかり咲かせていた。日当たりが悪いのでよく育たないが、桔梗や都忘れ、杜若、紫陽花。
「菫ちゃん、頑張って。今、ミルクをあげますからね。」
小さな入れ物に今配達されたばかりの牛乳を入れ、顔の横に置いた。だが、呑まない。思いついて、救急箱からガーゼを取り出し牛乳をしませて、弱々しく開けている口の中に絞り込んでみた。
「菫ちゃん。少しでもいいから呑みなさい。力がつくから。」
黒沢さんは知らず知らず、猫の名前を菫とつけていた。





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Last updated  2005.10.05 21:07:41
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