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Ryu-chan6708

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2006.06.20
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カテゴリ:読書感想
「シートン動物記」集中逆読み4冊目

  これはニューメキシコ州クレイトンにいた黒いマスタング(野生ウマ)の壮烈な物語である。

カローンと黒いムスタングのペイサー:あるとき、カウボーイのカローンは、きれいな黒いマスタングを平原の泉(アンティロープの泉)近くでみかける。調教してみたいと思う。しかし、黒いムスタングは調教が難しいタイプであった。
  しかし、通常の牧場主がムスタングを嫌うのは、放牧している自分のメスウマを連れ去ってしまうことであった。
  カローンが目をつけた黒いムスタングはペイサーと呼ばれた。ペイサーはついに、メスウマ九匹をつれて群れを作ってしまった。
  シートンは、ニューメキシコに来たとき「ペイサーを見たらライフルで撃ってください」と言われる。そして、ペイさーを目撃するが、その美しさと気高さにみせられ、わざと逃がしてしまう。

カローンの追跡:あるとき、有名な牧場主が「ペイサーが本当にいるのか知りたい。そこで生け捕りにした者に千ドルの懸賞金を出す。」と言った。
  カローンは二十頭の乗馬用の優秀なウマ、幌付きの炊事馬車、そして二週間一緒に働く三人の仲間を作った。捕まえる方法は、ゆっくりと追い、次第に相手を疲れさすという持久戦であった。ペイサーの群れをウマを乗り換えて、騎手を交代させ、追いかけた。
  こうして1週間追い回して、ペイサーの群れのメスウマは疲れ果てていた。しかし、ペイサーは元気であった。カローンは、一気に勝負に出た。しかし、失敗する。ペイサーは悠々と走り去った。  カローンはますます、ペイサーにほれこんでしまった。

ターキィの捕獲作戦:別のカーボーイのターキィとホースシューは、アンティロープの泉に落とし穴をつくり、これでペイサーを捕まえようとした。しかし、ギリギリのところでペイサーは穴を飛び越えて逃げてしまった。

カローンの二度目の挑戦:そのうちに、カローンは二度目の挑戦に乗り出した。今度は、二十頭のウマと五人のカウボーイを集めた。こうして、静かに追いかけ、ペイサーの疲れるのを待った。
  しかし、結果は、今回も惨敗であった。八頭のウマが死に、五人のカウボーイは疲れ果てて落伍した。ペイサーは、無傷で自由であった。
  カローンは二度とペイサーを追うことがなかった。


ターキィのワナ:ターキィは、このカローンの追跡に参加していた。彼はあきらめなかった。彼は、アンティロープの泉にペイサーがよく水を飲みにくることを利用して、メスウマをおとりに使うことを考えた。そして、以前、掘った穴に隠れた。
  ペイサーはこのワナにかかってしまった。ターキィのロープが飛び、足を捕らえてしまった。必死に暴れるペイサーをメスウマをあやつり、ターキィは牧場のほうに、一メートルずつひいていった。

自由のために死を:そして、ついに、レオン川の谷の上に来た。下に小さな牧場とランチハウスが見えた。ターキィは「ついにやった」と喜んだ。
  しかし、次の瞬間、俊足の黒いマスタング、ペイサーは、残ったあらゆる力を呼びさまし、足輪をつけたまま、谷にジャンプした。落ちて、落ちて六十メートルのがけ下に落下した。
  死をとして、野生の自由を守るためにーーー。

  新渡戸稲造の英文の「武士道」は1900年の出版である。シートンは、この頃の人だが残念ながら読んでいないであろう。

  「武士道」のように、自由のために死を選ぶいさぎよい「品格」ある野生動物もいる。一方では、先週末の国会のように、カネのために、高い地位にしがみつくいさぎよくない「品格」のない日本人もいる。百年たって「武士道」は日本では地に落ちたというべきか。

  なお、この物語には後日談がある。訳者あとがきによると、あるカウボーイがこのシートンの物語を読んで、ペイサーの最後は事実と違うと言った。そこでシートンがそのカウボーイに聞いて描いた絵がある。
  それは、ペイサーが自分を捕らえたターキィを背に乗せたまま、がけから飛び降りていく絵である。まさに「武士道」の極致である。

ペーシング・マスタング





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Last updated  2006.06.20 07:43:17
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