A氏:この「穀物マネー食卓を襲う」というタイトルで、先日の朝日の朝刊は一面トップだね。
私:莫大な国際マネーの動きが早くなって、俺たちの生活と直結し出したね。
それと同じように、文藝春秋の今月の4月号で「『妖怪ファンド』が世界を支配する」という記事がある。
サブタイトルは「莫大な資金力を誇る『政府系ファンド』は天使か、それとも悪魔か」とあるね。
A氏:アメリカのサブプライムローン問題は、全世界に飛び火し、ついに、日本では円高、株安だけでなく、庶民の食卓まで襲うようになったわけだね。
私:欧米の主要金融機関が莫大な損失を出して、大恐慌の危機となりそうになったが、これらの金融機関に資本注入をして、危機を救ったのがいわゆる「政府系ファンド」だね。
1年もたたないうちに、アメリカ金融資本が独占支配してきた「地球帝国」が崩壊してきたね。
アメリカ金融資本の天下は当分継続するだろうという「新帝国主義論」の著者の予測は、見事に外れたね。
A氏:「政府系ファンド」を英語でSovereign-Wealth Fund・ソヴリン・ウェルス・ファンドといい、略してSWFというんだね。
ソヴリンというのは「主権」という意味で、主権を持つ王家、一族、政党指導者の意志を反映したファンドという意味らしい。
専門家もSWFの定義には苦慮しているらしい。
私:イギリスのエコノミストは、SWFを評して「ある年にはヴァイキングのような侵略者、しかし、ある年には、白馬の騎士にもなる」と言っているという。
今、SWFという名の「妖怪」がグローバル資本主義の世界を大手を振って徘徊し始めた。
A氏:今回は、世界大恐慌を救った白馬の騎士だったんだが、食卓を襲うマネーとしてはヴァイキングだね。
私:ところで、実は、「政府系ファンド」の「政府系」というのは正確ではないんだね。
例えば、シンガポールの2つのSWFの「主権」者はシンガポール政府や国家というより、初代首相のリー・クァンユー一族なんだね。
同様に、アラブ諸国の4つのSWFも王族支配だね。
国家予算内に計上されているものでなく、その国の王家や一族、為政者が自由に運用できる金融資産なんだね。
だから透明性が低い。
SWFの日本訳の「政府系ファンド」は誤解を招く言葉だね。
そして、そのカネのもとは、石油や天然ガスの売却益をもとにした「天然資源型」と、貿易黒字拡大による為替レート高騰を防ぐための「非資源型(外貨準備金原資型)」に大きく2つに分かれるという。
ここ数年の間に膨大に膨れ上がった資産だね。
A氏:この記事では世界の主なSWFを12あげているが、9つが中東系だね。
世界のSWF資産総額の3分の2が中東を中心とした「資源型SWF」だね。
私:この中で異質な感じがするのが、ノルウエーのSWFだね。
実は、ノルウエーは世界第5位の石油輸出国であり、世界第3位の天然ガス輸出国だという。
その輸出収入を年金ファンドとして運用しているという。
このファンドは、透明性が高く、国王の意志は介在していないという特殊なSWFだという。
A氏:これらのSWFがその存在価値を増したのは、ドルの弱体化だね。
今度のサブプライムローン問題でますます加速される。
私:一方で、SWFは、国内的な事情がある。
「資源型」の場合、石油などの資源はもいつまでも出るわけではない。
枯渇した場合に備えなくてはならない。
一方、「非資源型」は国内の「高齢化」だね。
これは「老いゆくアジア」で1,2,3,4,5,6と6回に分けてふれたね。
中国では老齢化が進むことは明らかだが、年金制度は現状でも深刻な状態にある。
日本も貿易黒字大国だが、年金問題を抱えている。
竹村健一氏が何故、SWFのように日本は膨大な黒字のカネを投資運用しないのか、とよくテレビで言っていたが、その点で日本は遅れているようだね。
今年の2月に自民党がプロジェクトチームを発足させたというが、本来、投資ファンドはリスキイな仕事だから、投機文化がない日本になじむかだね。
日本版SWFはどうなるだろうか。
また、世界のSWFは強大な帝国主義的なヴァイキングとなるのか。
新しい「新帝国主義論」が必要だね。