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私:今年は「明治維新」150年ということで、NHKの大河ドラマも「西郷どん」。 このブログではすでに「明治維新150年 三谷博氏、色川大吉氏に聞く・でとりあげたが、今月の「異論のススメ」では、「明治維新」150年を保守の論客の立場からとして佐伯氏はとりあげている。
A氏:佐伯氏は、この日本の近代化150年という長い時間を真っ二つに分けている。 ちょうど、昭和の太平洋戦争の4年間がその中間に位置し、その真ん中の4年をはさんで、前半の73年は、明治に始まった近代化があの大戦争へ行き着き、後半の73年は、戦後のいわば第二の近代化が今日のグローバル競争へと行き着く時間であるとしている。
私:佐伯氏にとって、「明治維新」のもっとも基底にあるものはといえば、「壮大な矛盾をはらんだ苦渋の試み」といいたいという。
「維新」は英語でいえば「リストレーション」つまり「復古」であり、「復古」とは、天皇親政や神道の国家化など、日本独自の「伝統」を強く意識した国家形成を行うことを意味し、「刷新」の方は、徳川の封建体制を全面的に打ち壊して西洋型の近代国家へ造り替えることを意味する。
すなわち、「明治の近代化」は、日本独自の「国のかたち」や日本的な倫理や精神の覚醒を促すと同時に、西洋型の近代社会の建設という目標を掲げたるという二面性を持つものであった。
A氏:黒船に象徴される西洋列強の来襲で、圧倒的な文明に日本は適応するほかはなく、「富国強兵」の明治政府の積極政策から始まり、大多数の民衆はこの「文明開化」に飛びつき、一気に「欧化」が始まった。
私:福沢諭吉は「文明論之概略」(明治8年)のなかで、西洋文明は明らかに日本を先んじており、日本は早急にそれを取り入れなければならないが、それは、あくまで日本の独立を守るためである。
国の独立こそが目的であり、西洋文明の導入はその手段で、西洋が力で世界を支配しつつある時代に、列強と対峙しつつ独立を保つには、西洋文明によるほかない、という。
しかし、その先にあるのは何かといえば、知識であれ、制度であれ、生活様式であれ、西洋流を先進文明とみなしてひたすら模倣し、しかもそれを日本の先端で誇るという奴隷根性。
これでは福沢が文明の礎石と考えた不羈独立の精神、つまり「一身独立、一国独立」などどこかへ霧散しかねない。
A氏:福沢もそうだが、政治にせよ言論にせよ、明治の指導者たちは、もともと武士であり、強い倫理観と武士的精神の持ち主であったから、本来は、明治の欧化政策と、士道の延長上にある強い自立心の間に矛盾を抱えていたはずであると佐伯氏は指摘する。
私:ところが、「明治憲法」が制定され、議会が開設され、富国強兵もそれなりに功を奏して、日本が西洋列強に伍するにつれ、日本人の内面生活の方が何とも希薄化してゆく。
ともかく西洋列強を追いかけ、彼らに認められることに意を注ぎ、何のための文明化か、など問おうともしない、ということになり、夏目漱石は、それを、うわすべりの「外発的開化」と呼んで批判したと佐伯氏はいう。
A氏:日本の近代化は、同時に日本の西洋化であるほかなく、それに成功すればするほど、「日本」は溶解しかねないという日本の近代化のはらむ大きな矛盾があったと佐伯氏は指摘する。
私:戦後の日本の第二の近代化は、西洋化というよりアメリカ化であり、今日、アメリカ型の文明がグローバリズムという名で世界を覆いつつあるものだ。 佐伯氏にとっては、明治の近代化において日本が直面した矛盾が解決されたとは思えないという。
残念なことに、第二の近代化で福沢を後継する「新・文明論之概略」はでてこず、彼の危惧した「独立の気風」の喪失も問題とされないという。
とはいえ、「西郷どん」がいまだに人気があるのは、日本の近代化の宿命的な矛盾をわれわれもどこかで気にかけているからではなかろうかと佐伯氏は最後に多少の期待を抱く。
ただ、150年の近代化で「日本が失ったもの」の具体的な例示が、佐伯氏の寄稿の中になかったのは残念だね。 家族制度であろうか。
A氏:このブログの文頭にあげた「明治維新150年 三谷博氏、色川大吉氏に聞く・では東大名誉教授の三谷博氏は、別な視点で「明治維新」を見ているね。
三谷博氏は、「明治維新」の大きな特徴は、これまであまり目が向けられていない二つとして、武士という支配身分が消滅したことと、外国の革命に比べ犠牲者が非常に少なかったことだという。
私:支配身分の武士と被差別身分がともに廃止され、社会の大幅な再編成が短期間に行われた点で、「明治維新」は「革命」といえると三谷氏はいう。
NHKの大河ドラマ「西郷どん」では、「明治維新」をどう評価するのか興味があるが、奥の深い問題だね。
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Last updated
2018.01.12 23:29:06
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