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私:たまたま、日本の格差問題にふれた2冊の本の書評があったのでとりあげた。
橋本健二氏〈著〉『新・日本の階級社会』は、「階層」ではなく、「階級」という一寸、日本社会にはショッキングな言葉を用いているね。
それは、(1)資本家(経営者、役員)、(2)新中間階級(被雇用者 管理職、専門職、上級事務職)、(3)労働者、(4)旧中間階級(自営業)という4つの社会学的な階級分類に基づいて、議論を進めるからだと評者は指摘する。
A氏:しかし本書は、こう階級4分類を紹介しておきながら、実はいま階級は5つあるという。
5つ目は、近年、労働者階級の中で正規労働者と非正規労働者の格差が大きくなっており、非正規労働者層を一つの階級(「アンダークラス」と呼ばれる)とみなす必要が出てきているからだという。
「アンダークラス」は就業人口の約15%を占め、平均個人年収は186万円と、他の階級に比べて極端に低く、貧困率は逆に極端に高く、経済的困窮だけでなく、心身の健康、人とのつながり、という点でも「アンダークラス」とそれ以外で明らかな格差があるという。
私:そして、「階層」ではなく、「階級」という言葉を使うように、データからは、「階級」間での人々の移動性が低下し、「階級」の固定性が強まっていることが読み取れるという。
戦後日本の活力の一つは、社会的な流動性が高い点にあったが、労働者から新中間階級へ、さらに資本家へといった上昇のチャンスは、閉じられようとしている。
A氏:評者は、気になるのは、「アンダークラス」で平等化への要求が、排外主義と強く結びつくようになっていることで、日本でも、イギリスのEU離脱やトランプ米大統領誕生の要因となったポピュリズムと同様の芽が現れ始めているのだろうかという。
私:評者は、日本の格差を論じる上での、基本書となるだろうという。
もう、一冊の、岩田正美氏〈著〉『貧困の戦後史』は、副題が「貧困の「かたち」はどう変わったのか」とあるように、戦後、案外、われわれの近くで、目に見えるかたちで存在していた貧困を多数の資料とともに本書は、そうした貧困の「かたち」をたどる。
敗戦直後、最底辺にいたのは焼け跡の「壕舎」で暮らす人々、復員兵を含む身寄りも住まいもない「引揚者」、地下道などで寝起きする戦災孤児などの「浮浪児・浮浪者」だった。
敗戦直後の時代を思い出す言葉だね。
A氏;1950年代の復興期には失業者が急増し、職安が斡旋する日雇い労働者(ニコヨン)が増え、また仮小屋(バラック)が集まった地区は廃品回収業を意味する「バタヤ部落」と呼ばれた。
60年代の高度成長期には臨時雇いの労働者が集まる「寄せ場」と「ドヤ街」が発展するが、「バタヤ部落」や「寄せ場」はやがてスラムと見なされ「改良」の対象にされていく。
これらもよく聞いた言葉で、世相を反映しているね。
私:行政の貧困対策を俯瞰すると、彼らを貧困に追いやった原因は、戦争だったり経済の変動だったり政策の転換だったりしたにもかかわらず「貧困はつねに自らの個人的な努力で対処すべきもの」とされ、「衛生や治安の観点からのみ問題にされ」たという。
自己責任論だね。
A氏:貧困の今日的な「かたち」は中高年の「ホームレス」や若年層の「ネットカフェ難民」。
現在の「ホームレス自立支援法」にも著者は異議を唱え、「『自立』支援という政策目標は、個人の怠惰が貧困を生むという、きわめて古典的な理解に基づいている。だが問題は、怠惰ではないのだ」という。
私:東京五輪を前に、またもや進む排除の論理、現実から目をそむける政治家やお役人に読ませたいと評者は指摘する。
ところで、東京都の「ホームレス」の現状の「かたち」はどうなっているんだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.02.25 20:34:55
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