もう10年以上も前、高齢者福祉施設の現場で働いていた知人が定年退職を迎え、一線を退いた。その後は5年ほど週に何回かは同じ職場で働いていたが、だんだんと仕事を減らしていき、フェイドアウトするように家庭に戻った。「後は孫の世話をするのが私の仕事」と言っていたが、私より年上で、結婚をして子供ができてからもずっと働き続けてきた人だったので、どうなることかと興味があった。まずは絵手紙教室へ通い、びっくりするくらい上手なハガキが届くようになった。共通の知人の告別式などで会うこともあり、私も田舎暮らしになったので、共通の知人や、ご夫婦そろって我が家へ来することもあった。
「仕事を辞めたばかりの時はどうして一日を過ごそうかと思ったこともあったけど、慣れてしまえばどうということもないわ。夫とちょっとした旅行をしたり、歳をとった兄妹や姉妹と昔話をしたり、孫の面倒をみたり、友達と食事をしたり、結構楽しいことがある。長期大旅行をするとか、親類縁者の法事などとは別に、誰かに会っておしゃべりをしながらランチをする約束など、何気なくても小さな目標があることがとても大切に思える」と言っていた。その時は「ふ~ん」と思っただけだったが、今になって思い出してみるとこの小さな目標がいかに大切なことかがよくわかる。年が明けてすぐに、孫たちと一緒に渋谷の鎌倉シャツへ行ってシャツを買い、ツバメグリルでハンバーグを食べようというを約束も果たせないまま、12月の半ばになってしまった。
今年に入ってからのコロナ禍中で、そんな小さな目標を果たすことさえもままならない状況が続いている。お正月を目前に、離れて住む年老いた親に会いに行くことすら難しい。時は待ってくれない。特に年寄りは待ったがきかない。新大阪のマンションで独り暮らしをしている従妹が心配である。
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Last updated
2020.12.16 14:42:59