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2017年08月22日
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カテゴリ:気楽な日記

いつが最後だったか覚えていない。最後に母校へ行ったのはそれほど前の事だった。
渋谷は毎月行っているので目新しくなんかは無い。駅舎は相変わらず大規模な工事が続いている。臨時の通路を歩き歩道橋の上へ上がりR246を見下ろすと、うろ覚えだが昔見た光景が思い出された。駅前にあった映画館の代わりにヒカリエがそびえ立っている。

渋谷警察署の脇から斜めに入ると長蛇の列。レストランの順番待ちだった。飲食店があったなと懐かしく思い出すが、当時この辺りで食事をしたことが無い。いつも学食でモヤシが浮いているだけの味噌汁が印象的な安い定食か、「梅もと」という校内にあった立ち食い蕎麦の店だけだった。

順番待ちの行列を通り過ぎるとすぐ左手に神社がある。ここは見覚えがある。大きさの割に小さい鳥居に礼をし端をくぐるとすぐ左に拝殿と本殿が見えた。くぐってきた鳥居は表ではなかったのだ。神社は金王八幡宮。拝殿の前を宮司が通り過ぎる。ひとり静かに参拝した。
学生時代、この神社に参拝などしたことはなかった。名前すら知らなかった。とても驚いた。毎日通っていたのに関心が無かったのだ。神仏への敬意はあっても頼る心がほとんど無かったのだろう。生きていればレールの上を滑って行くだけで、自分の力で人生を切り開きその行き先を案じる必要なんか無かったのだ。

30年分の非礼を心の中で詫びた後、住宅街の中を通って母校へ向かう。
高級な住宅が立ち並んでいる。こんな通りを歩きながら、当時の私の目には何が映っていたんだろう。考えれば考えるほど、自分の事とは思えない。脳細胞には掠った程の思考の痕すら残っていない。正に自分の脚で歩いていなかったのだ。その記憶の薄さに自分が存在していなかったのではとすら考えさせられる。

実践女子大の前。女子大生、言葉は眩しかった。しかしお付き合いはおろか、合コンもしたことのない私には絵に描いた等身大の看板のようなものだったことを思い出す。こんなことは覚えているのだな。実に卑屈である。

遠くから校舎が見えていた。何階あるのかわからないが、高いビルに生まれ変わっていた。何もなかった中庭に、これまたそびえ立つオブジェがある。渋谷らしいおしゃれなキャンパスに生まれ変わっていた。しかし構内には神社がある。この学校はそうでなくてはね。
完全に不審者である。いい歳の男がきょろきょろ見渡しながら変な笑顔で歩いている。通報されても不思議はない。ただその日は多くの社会人が校内にいたせいで埋もれていただけである。ひとりであったら確実に渋谷署で事情を聴かれていたに違いない。

30年(正確には33年ほどか)、母校は跡形なく見かけが変わった。しかし神社はちゃんとあった。私はどうだろう。見かけはともかく自分の脚で歩き始めてはいる。自分で歩く先に待ち受ける未来を神仏にどうぞ見守ってくださいと深く祈ることで、今は自分の存在を確認している。


金王八幡宮



拝殿。後ろにそびえるビルが渋谷の駅近くにある神社らしい風景だ。



通学路からみた校舎ビル。いつの間に建ったのだろう。




中庭に建つオブジェ。



校舎はすべて建て替えられてモダンになっていた。
でも日本的精神は生き生きとしているように思える。






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最終更新日  2018年08月28日 23時12分19秒
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